男女賃金格差の経済学
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saeko@saekyh2025年12月14日タイトル的に硬派な学術書なのかなという印象を受けており、経済学の門外漢である自分が読めるのか?と思いつつ読み始めたが、とても明晰な文体で驚くほどすいすいと読み進めることができた。 日本における男女の賃金格差の実態とその解決策について、経済学の視点から統計を用いて定量的なデータで解明している。学生の頃、経済学ってモデルを示すだけで実際とは全然違うじゃん!とひねくれていたが、モデル化によって複雑な事象が明確になり理解しやすくなるのだなあと今さらながら実感した。統計ってすごいぜ。 ゲーム理論で考えると、企業が男女を公平に扱い、家庭でも家事を男女平等に分担するともっとも効率的なナッシュ均衡が実現する。にも関わらず、日本の男女賃金格差はOECD諸国の中だとワースト2位である。それを招く原因とはなにか?最たるものはジェンダーバイアスである。「女性はすぐに仕事を辞めるので育成にリソースを割かなくて良い」「女性に大変な仕事をさせるとよくないので手堅い仕事を回そう」などと統計的差別や代表性バイアスからくる意識的・無意識的な女性に対する差別的な扱いにより、女性はキャリアアップをすることが困難な状況になっている。 仮に成長意欲が高い女性がいたとしても、差別的な処遇を受ける状況下では、成長の限界を感じて結果的に辞めてしまう。このときバイアスが自己成就的であるという。 また長時間労働をすることで評価される長時間プライムも、出産や育児を担う女性にとってネガティブに作用する。 差別の解消には、まず組織における格差の実態を明らかにすることが必要だ。単純な平均賃金の男女比較では実態と乖離することがあるので、回帰分析を用いて、経験や子供の有無が同じ属性の男女で比較する必要がある。組織内での格差を可視化できたら、是正するための取り組みを。女性対象の育成研修を行ったり、管理職に引き上げようとする取り組みと同時に、労働スタイルの柔軟性の確保により、育児と両立しやすい働き方を実現することが必要だ。 そして改善されたかどうかの証明のために、KPIに基づく自己点検が必要となる。というのが大筋だった。 非常に冷静かつ建設的な提言だと感じたし、チャイルドペナルティやマミートラックが自分ごとであるいち女性としては、ぜひこの施策の実現に期待したいと感じた。読んでよかった一冊!




