新装版 クレィドゥ・ザ・スカイ
5件の記録
- @sotaono2026年8月15日「どこまでもはてしなく、 リズムとともに続くブルー。 見ろ、これが僕たちの場所。 どこまでも細く、 蛇のようにうねるスモーク。 そう、あれが僕たちの墓。 太陽に彩られたエッジ、 切り込んでいくウィング。 落ち着かない空気がシルバを踊る。 光り、震え、揺れ、鳴り、叫ぶ。 すべてが纏いつき、 すべてが剥がれていき。 美しさもに醜さも、 眩しさに色を失い、 区別できない、なにものも。 それでも、 目を閉じるな。 真っ白な光の中に、 お前が撃ち込むものがいる。 必ずいる。 いつでもいる。 どこかにいる。 目を閉じるな。 眠ってはいけない。 今までに見たことがない美しい 翼がきっと一瞬だけ現れる。 これまでに思ったこともない美しい ループを描くだろう。 その一番美しいものこそ、 お前の敵だ。」 p14 「言葉だって砂だ。染み込んで、たちまち消えてしまう。無数に積もり積もって、平坦になって。そう、どんな言葉だって、煙より早く消えてなくなってしまう。なにもなかったみたいに知らん顔の砂丘になる。ただ、それでも、言葉はまだ少しだけ優しい。躰に触れられたときの冷たさに比べれば、ずっと優しい。言葉を聞いているうちは、それが耳に残っているうちは、機銃だって黙っていられるだろう。」 p17 「僕が誰なのかなんて、そんなことどうだって良いじゃないか。そう、どのみち、僕は僕なのだ。僕が誰かなんて、それは、僕以外に誰が存在するのか、ということと同じくらい馬鹿馬鹿しい。周囲に誰もいなければ、僕は誰であるかなんて、無意味だ。」 p20 「これが愛することの理由だと、そのとき僕は思った。綺麗だから、愛するのか。それとも……、愛するから、綺麗なのかな。」 p20 「それはわからない。でもとにかく、そこへ向かって突き進みたくなるんだ。いつかそれが消えてしまうこともわかっていて、それだからこそ、そのまえに、なくなってしまうまえに、それに少しでも触れたい、と思う。そっと手を伸ばし、僕の手に、それを掴んでみたい、と思う。それが愛するという意味じゃないかな。ぼんやりと、そんなふうに想像しただけ。」 p61 「理由か。どうして、そんなものに拘るのだろう。」 p64 「言葉だけで、ずっと一緒にいるつもりだ、と言うことは容易いし、そんな嘘の言葉でもいいから、彼女は欲しがっているのかもしれない、ということは想像できた。だけど、残念だけれど、僕は無駄なこと、意味のないこと、確信が持てないことには、手を出さないことにしているんだ。それは、空で学んだこと。命を懸けて相手と戦うときに、これだけはしてはいけない、という自分との約束だった。無駄なことをしないのが、尊敬する相手に対する礼儀だ。その約束を破ったら、墜ちていくときに、自分を祝福できないだろう。」 p71 「たしかに、話をしているうちに、とても幸せな光景に思えてきた。幸せすぎて、悲しくなるくらいだ。」 p94 「「これで、願いが叶うわ。」」 p99 「「あんたって、正直だよね。」彼女は微笑んだ。「好きだなぁ、そういうところ。」「フーコ。」僕はもう一度彼女の名を呼んだ。「何?」「ありがとう。」」 p101 「「それを考えて、ちゃんと考えて、生きていけば、そのうちきっと、できるようになるよ。」」 p104 「「涙が出そう……、駄目だよね、泣くのは明日の朝なんだから。そう、それまでは、楽しいことをしなくちゃ。」」 p113 「「もう充分に生きたな。」草薙水素が言った。」 p114 「「ありがとう。」僕は言った。「さようなら。」草薙が言う。」 p115 「何が幸せって、彼女に撃たれたことだ。願ってもないこと。夢にまでみたこと。そして……、そこで、もう一度だけ、僕は目を開けた。もしかして、これは夢か?」 p118 「人生だって、距離ではなく、時間だ。」 p119 「そうだ、彼女がまた現れそうな予感がした。僕を撃ちにくる。いつか来るだろう。彼女に撃たれるまでは、生きていなくては……。」 p125 「でも、いずれにしても、写真をそうして飾り続ける仲だった、ということが重要なのであって、関係の名称に意味があるわけじゃない。」 p129 「「変化することが、つまり、生きることなんですね。」」 p136 「たった今こうして、彼女と抱き合っていることと、まったく同じなのだ。温かさを確かめるために、操縦桿で優しく相手を抱き、接吻けるよつに機銃を向ける。」 p149 「「明日があれば。」「明日はあるわ。」」 p152 「「私たちが、科学という空で戦うのはね。」彼女は振り返って微笑んだ。「人間が乗った飛行機じゃないの。」「誰が乗っているんですか?」「いえ、飛行機でもないわ。私たちが撃ち落とす相手は、天使よ。」「天使?」「そう、悪魔かもしれないけれど。でも、どちらも同じものね。」」 p155 「「私の名前は?」「サガラ。」「ありがとう。」彼女は微笑んだ。「下の名前は、覚えている?」「アオイ。」「嬉しいわ。私は、あなたにとって、少しは特別だったのかしら?」「そうかもしれません。」」 p174 「「人間の一部がキルドレです。また、人間の一部が綺麗な心を持っているでしょう。あるいは、人間の大半が綺麗な心を持っているかもしれません。でも、それが外からは見えないようになっているだけなのでは?」」 p194 「彼女の顔が近づく。彼女の指が僕の額の髪を払い、彼女の唇が僕の額に触れる。それから、僕の目の近くにも、彼女は接吻した。「可愛い人。」」 p197 「「スポーツと戦争は、どこが違いますか?」」 p205 「「カンナミ。」」 p216 「草薙水素だった。」 p217 「「カンナミね?」」 p217 「「銃?」「持っているなら、今、私を撃って逃げろ。」「どうして?」「それで、君は本当に自由になれる。」」 p219 「しかし、そもそも現実なんて、こんなものかもしれないな。きっと。そんな、感じだ。今までの人生がすべて幻だったとしても、僕は全然驚かない。それくらい希薄なのだ。」 p229 「「もっと待ってほしい。もっと普通の時間を長く過ごして、記憶をしっかりと築く。自分を築くのよ。時間をかけてね。それまでは我慢してほしい。人間というのは、こういうものだって、きっとわかるわ。あなたが、あなたたちが思い描いているほど、綺麗ではないかもしれないけれど、それが人間なの。あなたも人間なのよ。それを忘れないで。大丈夫、きっと人間として生きていけます。」」 p240 「「OK。イグニッション・オン。」」 p250 「素晴らしい。人の人生なんて、そんなものだ。すべてが一瞬の幻想。」 p252 「「凄かったね、さすが!」彼女は僕に顔を近づけて、頬にキスをする。」 p259 「彼女は、無駄な戦いをやめさせるために戦っている。それは、無駄な戦いではないのか。無駄な戦いと、無駄でない戦いがあるのか。無駄だと思う側と、無駄でないと思う側は、敵と味方?しかし、戦っているのは、無駄ではないと思っているどうし。わからない。ただ、僕には、戦いが無駄かどうかなど、関係がない。無駄でも、無駄でなくても、戦いの価値は変わらない。」 p261 「「散香。」」 p262 「「ササクラ。」」 p263 「「クサナギ。」」 p267 「何故、自分でない者にまで、自分の愛を押しつける?それが愛だと信じさせるためにか?本当の愛ならば、信じさせる必要などない。違うか?ああ、人間たちはみんな馬鹿だ。この飛行機の、この美しさを見ろ。この翼を見ろ。これに比べたら、すべてが醜い。愛なんて、錆のようなものだ。それが、綺麗な営みだと、錆が思い込んでいるだけ。美しさを知らない。なにも見ていない。美しさとは、この冷たさのことだ。」 p268 「けれど、涙は止まらなかった。ああ……、僕は泣いているのだ。悲しくないのに、泣いている。たぶん、この美しさのせいだ。美しさに涙が出る。こんなに美しい存在が、世界にあるだろうか。」 p282 「「飛びたい。」僕は答えた。「あの散香で、飛びたい。」」 p289 「「生きていれば、また会える可能性もあります。」「覚えているか、どうかですね。」僕は微笑んだ。「覚えていて。」彼女は僕に触れた。「お願い。」」 p306 「僕は、生きている。そうだ、ここが僕が生きる場所だ。」 p312 「「見事だった。」彼女は言った。「さすがだね。」「ありがとう。」僕はとりあえず返事をした。「散香に乗れることを約束する。私と一緒に、戻りなさい。」「本当ですか?」僕はきいた。「約束する。今の飛行で、君の能力が戻っていることは証明された。」「ありがとうございます。」僕は、片手を上げた。その自分の片手に驚いた。そうだ、敬礼をしようとしたのである。」 p315 「「サガラ!」僕は叫んだ。」 p318 「「あなたは、あなたでなくなるかもしれない。それでも、あなたが選択した道だわ。」「僕は、いつでも僕だよ。」」 p319 「「私を撃って。」」 p326 「「ブーメラン、飛んでいるか?」」 p329 「撃て 撃とうと思うまえに」 p335 「「クサナギ・スイトです。」」 p338 「「カンナミさん。」」 p338 「僕はそれを手に取る。それは小さなブーメランだった。」 p340 「待ってろ。また、会おう。また、踊ろう。自由に。美しい空で。」 p340 「ブーメラン、飛んでいるか?」
昆布川@knbwkmmz2025年2月10日読み終わった主人公視点が朦朧としていているところへ、他者の自我がマーブル状に混ざり込んでいて不思議な読み心地だった。それでも相変わらず戦闘機を繰る描写は鋭利で心地よい。『スカイ・クロラ』シリーズに共通した爽快感だがこの巻はその傾向に拍車がかかっていた。

