虫とけものと家族たち (中公文庫 タ 8-1)

9件の記録
ユメ@yume_bookworm2026年7月30日読み終わった感想再読もう何度目になるか分からない再読。この本を読み返すと、それだけで「今年の夏はいい夏になったな」と思える。それぐらい、『虫とけものと家族たち』という本は魅力的なのだ。燦々と輝くギリシアの夏の陽光をぎゅっと閉じ込めたような、幸福の塊のような、そんな本なのである。 まず、コルフ島の自然の描写が本当に美しい。すぐれた観察眼の持ち主である少年ジェリーの視点から語られるコルフ島の豊かな色彩は、何度読んでも私を虜にする。中でも、夜の海で夜光虫を背中に纏ったイルカとホタルが共演する幻想的な光景は、読んでいてうっとりと夢見心地になる。 そして、ダレル一家と島の住人たち、加えてジェリーが家の中に連れこむ動物や虫たちの巻き起こすドタバタ喜歌劇の愉快なこと!イギリスの陰鬱な天候に滅入ってコルフ島へ移住してきたダレル一家の物語は、例え同じように塞ぎこんだ状態で読み始めたにせよ、たちまち心を晴れやかにしてくれる効果を持っている。 何より素晴らしいのは、本書がフィクションではなく、ジェリーことジェラルド・ダレルの幼少期の体験に基づいて記されているということだ。自分の身に起こったことではなくとも、これほどまでに幸福感に満ちた暮らしが実際にあったということは、私を「この世界は生きるに値する素敵な場所だ」という気持ちにさせてくれるのである。






