黒後家蜘蛛の会3
8件の記録
- @sotaono2026年9月6日p29 「「わたしも思わず笑いました。その言い方がよかったのです。不平をこぼすでもなし、くどくど愚痴るわけでもなく、世の中を呪うような態度は少しも見せないのです。ありのままの事実を、およそ屈託なげにさらりと言ってのけたまでなのですが、それを聞いてわたしはすっかり嬉しくなりました。」」 p35 「「ところが、八歳の賢い子供となるとわけが違います。頭のいい子の前ではめったな手品はできません。必ず見破られますからね。」」 p43 「「ただ頭が単純なだけでございます。」ヘンリーは言った。「もっとも、馬鹿というわけではございませんけれども。」」 p48 「「人間一人の知識というのは、要するにそれまでの見聞だろう。限られたいくつかの生物学的本能を別とすれば、先天性なんていうものはありゃあしない。特に、知識教養ということになればなおさらだよ。経験を積んでいれば……いいか、ここが大事なんだ、マリオ。経験を積んでいれば、人は自分が今目の前にしているものに、即座に解釈を与えることができる。あるいは推論を下すこともできるし、その場の観察と過去の体験とから演繹ないしは帰納することによってある結論を引き出すんだ。ところが、これがまさに一瞬の作業でね。論理の段階をひとつずつ追うようなことはしない。というより、段階を追うという意識がないんだよ。それを勘という。勘のいい人間を傍から見て才能がある、というんだ。ああ、ヘンリー。」」 p68 「「アレグザンダーさん、理屈で割り切るのは簡単なことですがね、現実には、しょせん人間は複雑怪奇な矛盾だらけの生きものですよ。なるほど、その容疑者の性格はおっしゃるとおりちぐはぐなところがあるようですが、それは何も、その男に限ったことではないでしょう。人間誰しも、多かれ少なかれ、へえ、あの人がねえ、というようなところがあるものです。まあ、運が悪かったと諦めることですな。」」 p76 「「あなたは、あまりにも家庭人でいらっしゃいます。それが禍いしたのでございます。情というものを、あなたは人と人のこととしかお考えになっていらっしゃいません。かく申すわたくしも、家庭こそ持ってはおりませんが、情というものが、もっと広いものであることを承知いたしております。人間を蛇場の如く忌み嫌う世のすね者にも、情というものはございます。何かに強く心を動かされる、惹かれる、ということはあるものでございます。」」 p125 「「人間、力のおよばぬことで自分を責めるものじゃあありませんよ。」」 p131 「「特定の数字ひとつを判断の根拠とするのは大きな間違いというものだよ。」」 p149 「「とはいえ。」サッチャーはゴンザロの言葉などまるで意に介すふうもなく先を続けた。「わたしはこうして毎日自分が暮らしている世の中を眺めています。近頃では、およそどんなことでも人は信じますね。"現実に即していない"ことなどありはしないのです。どんな馬鹿げた話でも、これは真実である、と自信をもって大声で言えば、たちまち大勢の人間がそこへ集まってくるんですから。」」 p162 「「サッチャーさん、ここは現実を直視なさったほうがいいように思いますよ。わたし自身の経験から言いましても、仮にあなたがトライ-レシフェリアンの教義に瑕瑾を見出されたとしてもですね、おそらくそれは何の役にも立たないでしょう。感情的な理由から信に走る人というのは、自分のしていることの非論理性を指摘されたところで決して後戻りはしませんからね。」 p199 「「あなたにとっては些細なことかもしれない。しかし、それはあなたが相手の立場でものを見ていないからです。たとえほんのわずかな、取るに足りない点だとしても自分の作品に手を入れるということは、彼にとっては許しがたかったのです。それで、彼はあなたをとことんまで追いつめる気なんですよ。」」 p211 「「しかし、それだけではないよ、マリオ。ヘンリーはわたしらの目に入らないものをちゃんと見ている。それは、ヘンリーが澄んだ目で、はっきりと世の中をとらえているからだ。わたしらにはそれができない。彼のようにこだわりのない、直截的な物の見方をしないから、ヘンリーの目に映るものも、わたしらの目には見えないのだよ。仮に目に映っていたとしても、ヘンリーのようにそこから答を引き出すことができないのだね。」」 p215 「「人間に限らず、次の世代の教育というのはまず躾からはじまりますな。」「そう信じている人々は。」バリーは言った。「往々にして、教育の最終的な目的もまた躾だと信じ込んでいます。そして、学校と刑務所の目的を混同してしまうのです。」」 p277 「「短編を書くときはね。」彼は言った。「結末を決めておくことだよ。話の結末というのは、読者にとっては要するにそこで終わりさ。ところが、作者にとってはそこから話がはじまるんだ。書いている途中、最後にはどこへ行き着くか、それがわかっていなかったら結局そこへは行かれない……それどころか、話は支離滅裂になってしまうからね。」」 p279 「「そりゃあまあ、書きたければ書いてもいいがね。ぼくはそんなことはしない。どの道を行くか、それを細かく知る必要はないんだ。どこへ行くか、目地さえわかっていればいいんだよ。それさえはっきりしていれば、道はおのずとわかってくる。書いている間、作者は絶えずそのあらかじめわかっている結末からふり返って話を進めることになるからね。かえりみすれば、それがすなわち道しるべというわけだよ。」」 p305 「「もし.....ああ......彼女の気に入らなくても、彼女にふられても、ほくは平気だよ。作品のほうがよっぽど大事なんだ。」ヘンリーは穏やかな笑みを浮かべて言った。「よくぞおっしゃってくださいました。ものをお書きなさいます方は、何が最も大切か、その順序をおわきまえになることが肝腎でございます。」」 p343 「「わたしはね、偽善というのは罪に罪を重ねるものだと思うんだ。」」 p365 「「それは違うね、トム。それじゃあ鍵にならないよ。問題は、知るべくして、かつ知らないんじゃあない。知っていながら、しかも知らずにいる、というんだから、これは違うよ。」」
noirlog@noirlog2026年3月27日読み終わった何をもってあなたの存在を正当としますか?って、どういう意味なんだ?ってわからなかった。 「生きてるだけで偉い!」って言葉を見慣れすぎてて…。 登場人物みんな仕事のこと言うよね。 仕事って何をして生きてるかだし、質問の答えとして仕事のことになるんだろうな ただ何となく会社員でなんとなくその仕事をしてる人はこの作品に出てこないのかな。



