酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす

酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす
酒に溺れた人魚姫、海の仲間を食い散らかす
酒村ゆっけ、
KADOKAWA
2021年8月30日
7件の記録
  • 初読み作家さん。 透明書店でパッと目が合って試し読みした時、これは手に入れないと、と本気で思った。 酒飲みYouTuberの酒村ゆっけ、さんがアルコールに溺れて酩酊した世界で紡いだ不思議な世界の短編集。 無機物視点での話が多いのだけど、どれも完成度が高くてとても良い。 特にお気に入りは、「口紅の弾丸」。 女の子に買われたデパコスの口紅の視点。 不倫されていると気づきながら、 その手を話せないヒロインを幸せにするために自ら弾丸になり相手の男を撃ち抜く姿がかっこいい。 愛を知った猫、 深夜の牛丼目線の繁華街とあの子の一時、 どろどろに混ざり合ったソーダの愛の形、 ルッキズムに囚われた女の子が食べる砂糖の塊。 恋にアルコールに溺れて海の仲間を食い散らかした人形姫。 各章の終わりには、カクテルを添えているところも酒好きで好き。 この本は結構お気に入りですね。
  • 『あの頃のクリームソーダ』 ただ単純に純白で綺麗な青春の話で終わるだけかと思ったらちがった。 ソーダがアイスクリームに向ける強欲が見え隠れしている。 美しい青春なんかを僕で想像するんじゃなくて、ドロドロに混ざりあった生ぬるいソーダの愛の形。
  • 『ショートケーキの空襲』 「甘いものを食べることがぽっかりと空いた孤独の心の穴を満たしてくれる。ありとあらゆるものが欠けて穴ぼこだらけの私のことを砂糖がそらさらと補修してくれるのだ。」 ルッキズムに囚われた女の子。 あの子みたいに可愛かったら、と誰でも1度は思ったことをライトにそして残酷に描写してくる。 抉られ放題よ。
  • 『人間だったら、私は絶対ヘビースモーカーになるだろう。あの娘と同じ銘柄のタバコなんかを吸ってみようか。今みたいに逃げ道が用意されていない人生なんて、来世はごめんよ。』 深夜のOL牛丼。 牛丼目線での繁華街とあの子の様子。
  • 透明書店で見つけて気になってたやつ。 紙の本がないから電子で購入。 既に口紅視点の話がスラスラ入ってきて、やっぱ読みたい時に読むべきなんだなぁと。 『ふみちゃんにとって特別なあの男は、ふみちゃんのことを特別扱いはしてくれない。会いたいと言って会えることはない。』
  • 『僕はこの大好きだよっていう意味も感情もよくわからないかど、もし生まれ変われるなら彼女のことも大好きだよって抱きしめてあげられる存在になりたいな。 ああ、眠いな。おやすみね。』 外の世界を知らない猫。 猫目線の、尽くしてくれる女性との話。 穏やかだけど、最期の最後にほんの少しだけ愛を知った猫。
  • 『私の存在目的は強く美しい女でいるための魔法の武器であること、そして女の思いを踏みにじる悪を貫く銃弾であること。この2つだ。』 『口紅はときに、男を撃ち抜く銃になる。』 口紅を銃弾に見立てるの、とてもいい。
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