
カミーノアン
@kaminoan3699
2026年5月3日
YABUNONAKA-ヤブノナカー
金原ひとみ
読み終わった
また読みたい
感想
読書日記
金原ひとみ
章ごとに語り手が変わり、性別や年代、立場も異なる人物たちの視点から、出来事がリレー形式で描かれていく。男性、女性、若者から中高年、さらにはノンバイナリーの視点までが交錯し、それぞれの認識のズレや内面の葛藤が浮かび上がる。
多視点によって「真実」に迫る構造は小説として珍しくないが、本作はむしろ、その真実そのものを揺さぶってくる。ある人にとっての真実が、本当に普遍的なものなのか。それ自体が疑わしくなる。
読み進める中で、時代に適応しようともがく姿や、価値観を更新したつもりで、実は大きな誤りに気づかされる瞬間が描かれる。また描かれるテーマは性被害をメインとしながら、中年男性へのケアや、SNSによる世論形成の危うさといった論点にまで広がっていく。
文体は平易でありながら、地の文と会話、思考がシームレスに混ざり合うため、明確な筋を追う読み方にはやや負荷がかかる。しかし、その語りによる思考の揺らぎこそが、「分かり合えなさ」の本質を体感させる仕掛けとなっている。
皮肉やユーモアもふんだんに織り交ぜられ、読み手に解釈を委ねつつも、その解釈のあり方そのものを問い返してくるような一冊だ。












