
はな
@hana-hitsuji05
2026年6月19日

読み終わった
Kindle Unlimited
Kindle
昨日も読みながら寝落ちしていた。
すごい…すごい読書体験だった。語彙消失。
作中で、語彙のレベルがそれとなく人物の年代や肩書、背景に合わせて表現されていることに気づいて舌を巻いた。
若者言葉も出版社に勤める中年男性の思考も、語彙からもイメージ湧くというか。
そういうこと意識したことなかった!から面白かった。
木戸悠介の息子 恵斗の章が前半と後半の折り返しになっていて、木戸悠介で始まり木戸悠介で終わる。視点がどんどん移り変わっていって戻ってきているように見えるのに、折り返した時に同じ人物ですら全く同じには見えない。
長岡友梨奈の娘、伽耶は性欲がなくて性加害や性被害に対する理解や想像力が希薄な「わからなさ」具合が、性別的には女性なのにいわゆる男性視点感覚を伽耶を通して感じた。
そして特に五松武夫の思考(視点)はVRで有害な男性目線を1日体験したような感覚に陥った。
目の前にいる異性を脳内でも実際にも、彼のように扱うという発想がなかった。
相手のことを理解できない感覚と、理解してもらえない感覚が波状攻撃してくる。
読み始めた頃、これKindleじゃなかったら手に取れんかったなと思って、もうひとつ、Kindleだからこそ心の袖をグッと引っ張られた文章にさくさくライン引きまくっているのを実感した。これ紙の本には出来ない。
私のYABUNONAKAは水色に染まっている。
昨日の私が「みんなマジョリティでマイノリティ。こういう役割を引き受けていることの凄さ」とメモを残している。
どんなに近くにいて親しくて信用していても「こんなこと人に言ったってどうするんだ、何になる」と思う自分だけの領域が必ず密やかに存在していて、多分真実の核はそこにあるから、誰も辿り着けていない。
ページを捲るたびに、鬼に見つかりかけてるハラハラ感はずっと続いていて、別にホラーとか怖い話じゃないのにずっとそれぞれの人物にヒヤヒヤしていた。
やめろ、そこでやめておかないとお前死ぬぞ!と叫びそうになる。(特に五松武夫)もう次のページをめくったら何が起きてしまうのか見当もつかなかった。
『元々クズな俺らがどうして女たちのために変わらなきゃいけないんだという支離滅裂な憤りにも駆られる。』という五松の思考よ。
なぜ自分の冷静な考えと行動の整合性が取れないのか。相手の行動を糾弾し、軽蔑し、レッテルを貼る時、なぜ自分はそれに当てはまらないと思いきれるのか。
長岡友梨奈の過激な思考の中にそれを感じながら自問する。
今、ここで起きたことのように過去の怒りが爆発している。その力の規模に慄くけど、それほどのことだというのもよくわかってる。ただ、まだそのタイミングが来ていない人にとっては、その怒りが脅威や過激さに感じられるだろうな。ビックリするからもうちょっとボリューム下げてくれる?怖いから、的なトーンポリシング。
最後まで読み終えて、やっぱり私の気の迷いなんかではなくどの人物の中にも自分のかけらをみつけた。それは内臓みたいなもので、上手く言葉を駆使して言えなかったところも大きいし、きっと誰にもわかってもらえない領域を開腹手術された気分でもある。
印象的だった言葉
1 木戸悠介
「この人生は私に何も残さなかった。綺麗に何一つ、残さなかった。」
2 長岡友梨奈
「私の言う多様性とは、私が認められる多様の中でのみ機能する多様性のことであり、そこから外れる女性を殺した者であったり女性を搾取する者であったり子供を殺したり搾取する者であったりはどんなに残酷な刑にかけられ殺されても構わないむしろそうしてもらわないと気が済まないという反社会的な怒りがあるのだ。」
「こんな不安なまま、こんな歳になるとは思っていなかった。」
「そういう時、全ての人がすぐにそのエスプリに触れられる環境が整っているということは、人々にとって大きな意義があります。例えば死のうとまで思いつめた時に、助けを求める先が多ければ多いほど良いように、ある本を読みたいと思った時に複数の選択肢があるということは幸せなことです」
3 五松武夫
「申し訳ないという気持ちは皆無だったにも拘らず、ごめんなさい、と繰り返していました。」
4橋山美津
「そして私にとって彼は、社会のようなものでした。我慢と息苦しさと嫌悪を伴い、気がつくとあらゆる部分を搾取されている。狡猾で、自分はいかなるリスクも引き受けない、そんな存在でした。個人と社会が闘うと、こういうことが起きるのだという縮図のような関係でした」
「彼の私にしてきたことは、デリカシーに欠け、人の尊厳やプライドを著しく傷つけるものでしたが、罪ではないからです。でも「そんなのおかしくない?」は残ります。お金をくれと言っているわけでもありません。恐らく、戦っても勝てる見込みはないでしょう。でもそんなのおかしくない? なんです。」
5 横山一哉
「いつの時代も、正しさや現代らしさは、病的なものと捉えられるのかもしれない。SDGs、環境保護、動物愛護、LGBTQ+、あらゆる運動の最先端にいる人たちが病的に見えるという意見も分からなくはない。それでも、気づいてしまった人、見えている人は、もう前に進むしかないのだろう。」
6安住伽耶
「できることなら、旅先で会う地元の人や、観光客同士みたいに、互いにその場限りの関係だけで人生を構成したい。」
7 越山恵斗
「この流れの中で、私はできるだけ誰の意見も干渉も受けたくない。ようやくまっさらになったところに、お母さんの強い思想が入り込んでくるのが怖い。私はお母さんから、多分影響を受けちゃうから」
「どうしてご飯を作ることが意見や干渉になるの? 私の作るご飯には思想が込められてるってこと?」
「正しさって、時々人を苦しめるから」
「私には人に嫌われる要素がないからね。私を嫌う人はたくさんいるけど、それは彼らの個人的な問題、捩れや歪みのせいであって、私の問題じゃない。もちろんそういう人間たちも何かの被害者であって、一人残らず死ねばいいと思うわけではないけどね」
「例えば、道をよく知らない運転手に当たった時、あんた道知らないの? まじかよふざけんなよ、的な田舎の中小企業の偉い人みたいな悪態をついたりはしない。木戸さんは、道知らないんですか? じゃあ結構です降ります。みたいな感じ」
8 安住伽耶
「保守的、排他的な人間を忌み嫌い、常に弱者の側に、マイノリティの側に立ち続けなさいと言い続けていたお母さんが見せた「害悪への強烈な排除願望」に、私は怯んだのだ。」
「まじでこの「で、それすると何が得なの?」は現代の病だと思う。確かにこんな狭量な考え方じゃダメだとも思う。」
「スタート地点は一緒なのに、思いが共有できないこともある、という悲しい人間の性を、私はいま目の当たりにしているのだ。」
「普通に生きるって、全然普通じゃないことだ。」
「私たちは皆この世界を構成する一つの要素なんだよ。どうして分からないの? 自分一人が腐ることによって、多くの人が腐る。私たち一人一人が良心を持って、世界を良くしようと思っていれば、こんなことは起きなかった。皆がそれぞれこの世界への参加意識を持っていなかったことが、全ての害悪の根源だよ。」
「私は一哉みたいな緩やかな容認派の人こそが被害を拡大させてると思ってる。そこで声を上げないことで生じる被害を過小評価してると思う」
9 横山一哉
「誰も世界のことを考えてない。誰も世界を良くしようと思ってない。私はいつまで、一人で戦い続けなければならないの?」
「自分じゃないのに、他人がやった悪事なのに。」
10 橋山美津
「サラリーマンっぽい男の人を見ると怒りが込み上げてくる。あなたたちはどんな抑圧にも性被害にも遭わず、遭う可能性も考えず、満員電車や公衆トイレ、夜道に恐怖を抱いたこともないだろう、と。これまで自分の中に渦巻いていた漠然としたモヤモヤが、形のある怒りに生成変化して、もう私の手には負えないのだ。」
「死に向かうのは、被害者ではなく加害者であるべきです。」
「それに、私は救われる。胸がいっぱいになって、息が止まったようになる。私は誰からも連帯してもらえなかった。女からも男からも、被害者からも加害者からも、好きな人も嫌いな人も、誰一人私に連帯しなかった。連帯がこんなにも心強く、自分の体を温めてくれるものだとは思わなかった。」
「この人生がなぜここまで長引いてしまったのかも、全然分からない。」
11 五松武夫
「どんどん変化していく社会の中で、意識や品性のレベルによって分けられた多数のコロニー内で生きていければいいのですが(私は本気で世界総コロニー化を提唱していきたいと思っています)、そうもいかない現実を現代人は生きています。」
「もちろん、自分に都合の悪いことは忘れてるんだろうけどね。僕も彼女も」
「どんなに慎ましく生きてても、どんなに言動に気をつけて生きてても、変な巡り合わせで恨まれることはあるんだって、思い知らされたよ。」
「男から与えられた怒りは冷たい。女から与えられた怒りはいつも熱く、性欲に結びつくのに、男からのそれは、冷たくてやり場がない。」
12 長岡友梨奈
「誰もいない家に帰宅し、シャワーを浴びながら、私はでもと思う。もしかしたら一哉は、私の悪のような正義感を危惧しているのかもしれない。」
「これまで許せたものが、許せない。二十年前まで嘲笑と共に許せたことが、今では殺意が湧いて徹底的に抹殺しなければ許せない。ウザ、の一言で済ませられたものが、今は土下座されたって許せない。許してた自分にも怒りが湧くし、今更乖離無しの状態に立ち戻って許せないって憤ってる自分にも怒りが湧く。怒りでいっぱい。私のこの体には怒りしか入ってない。指先まで怒りでパンパンになってる」
「でもじゃあ、私とは何なのだろう。時代と呼応しながら恋愛対象が変化していく生き物とは、何なのだろう。」
「偉そうな人、暴力をふるう人、弱者を搾取する人、人を貶めたり欺いたりする人、デリカシーのない人、そういう人のいない世界に生きたい。でもそれは、ある種の選民意識なのだろうか。」
「私たちは個人として閉じた存在である。性器や臍の緒を通じて誰かと繫がったとしても、傷口と傷口を擦り合わせても、私たちは己の持つ思いを一つも交換できない。」
13 木戸悠介
「人生とは、一体なんなのだ」
「でも私も傷ついていたのだ。でも私はそんなことを告発しなかったし、同僚にも話さなかったし、飲み屋でさえも話さなかった。中年男性が傷つくことは、世間的に恥ずかしいことだからだ。」
14 リコ
「しばらく一哉さんに会うのをやめた方がいいんじゃない? 〜ずっと思っていることだ。でも私はそれを口にしない。そんなのは自分で決めることだし、なんか保守的な感じがするし、それで恵斗が壊れたなら、私が直してやんぜと思う。私がいるから大丈夫、あんたはやりたいことなんでもやってきな。そんな気分だ。」











