
ヒヨリ
@charonll
2026年8月27日
当事者は嘘をつく
小松原織香
読み終わった
オーラルヒストリーを研究している身として考えさせられることだらけだった…
"この物語は真実だが、私は常に「嘘をついている」と思いながら語っている。あなたが、私の言葉を疑う以上に、私は自分の言葉を疑っている。だからこそ、私はあなたに最後まで聞いてほしい。真実を明らかにするためにではなく、私の生きている世界を共有するために。"
"私にとって性暴力被害者であるということは、 自助グループの仲間たちとともに作り上げたアイデンティティである。そのなかには、他者の記憶も混入し、個別の「私」という存在の輪郭は曖昧になっている。私 が「性暴力被害者として語る」ということは、「内面化した被害者たちの複数の声で語る」ということである。"
"「私は嘘をついている」
相反する私の強迫観念が、私のなかから湧いてくる。ここまで生き延びてくるのと引き換えに、私は自分の記憶を忘れ、他者の記憶を背負い、嘘の物語を生み出し、 夢を描いてきた。だから、もうあのときの「正しい記憶」は壊れてしまっている。だから、どんなに言い繕っても、私の話は真実ではない。
「私は〈本当の性暴力被害者〉ではないかもしれない」
そのことが、私の一番の弱さだ。物証はなく、目撃者もいない。それ以上に、私自身の記憶ももうぐちゃぐちゃに崩れ、原型をとどめていない。"
"私が語ったのは、きっと嘘がたくさん含まれた物語である。都合のいいところだけを書いたし、ここで描かれるのは「こうあってほしい私」の話だ。できるだけ楽しい場面も盛り込んで、ギリギリでハッピーエンドになるようにしておいた。 これは、私が描き出した精一杯の当事者の夢である。私(たち)は生きていける し、研究者になれる。"


