
jyue
@jyue
2025年5月9日

野の春
宮本輝
読み終わった
読書日記
5月某日(不明)
物語は空間に宿る。隙のない人に物語は無い。熊吾は隙だらけだった。だからこそ、これほどまでに運命劇のような人生だったのではないかと思う。全9部を通して、実に多くの人が亡くなった。1行前まで普通に話していた人が、その次の行では突然体調が悪くなり、あれよあれよという間に入院をしたり、今世から旅立ってしまう。数巻登場しなかった人がいつの間にか歳をとっており、訃報が届く。人生そのものを書いていると思った。夕食まで元気だった人が、お風呂から上がった途端倒れている。今朝まで元気だった人が、夕方には息を吸うのも苦しくなっている。現実で大切な人が亡くなるたび、1秒前まで動いていた心臓が突然止まってしまうことを未だに受け入れられない。
わたしはこの流転の海シリーズを読んで「良いなあ」「おもしろいなあ」と思える人間でよかった。これを読んでも心が微動だにしない、そんな悲しい人間じゃなくてよかった。そう思えるだけで少し心が軽くなる。この盃を受けてくれ。どうぞなみなみつがしておくれ。花に嵐のたとえもあるぞ。「さよなら」だけが人生だ。














jyue
@jyue
たまこさんよ…!PERFECT DAYSをおすすめしたときと同じ熱量で、流転の海もおすすめするよ…!!小説というより、もはや人の人生を、伝記を、読ませてもらってる感覚に近い…。このまま他の作家へいかず、まだ宮本輝で寄り道をしたいから、『草原の椅子』を読もうかなあと思ってる!