読書日和 "水脈を聴く男" 2025年7月24日

読書日和
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@miou-books
2025年7月24日
水脈を聴く男
水脈を聴く男
マイサラ・アフィーフィー,
ザフラーン・アルカースィミー,
⼭本薫
舞台は、オマーンの近代化が始まる以前の、20世紀前半と思われる乾いた砂漠の村。雨がほとんど降らず、ジン(精霊)の存在が当たり前のように信じられていた時代。読み始める前に、巻末の解説を先に読もうか迷いましたが、今回はあえて先に目を通しました。というのも、オマーンという国の歴史や文化、ましてや「ファラジュ」という灌漑システムについての知識がまったくなかったので、ある程度背景をイメージしてから物語に入りたかったから。 主人公は、井戸で溺死した母の腹から生まれた少年。幼い頃から「溺死した女の息子」と蔑まれ、「水脈を聴く」という不思議な能力を持ちながらも、それゆえに村では魔物扱いされてしまう。父も、育ての親も、彼の存在ゆえに差別や冷たい視線に晒される——“人と違う”ということが、恐れや差別の対象になるという構図は、実は日本にもどこか重なる部分があるように感じます。 15歳でやっとその能力が認められ、「水追い師」として村の外からも求められるようになるものの。結婚して、これからというときに、再び暗転する彼の運命。光と影、自然の恵みと脅威。希望と痛み、そんな対比を何度もする一冊でした。
あんこちゃん
あんこちゃん
@anko
思わずコメント失礼します🙇‍♂️書評が素晴らし過ぎてゾクっとしました…
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