胡花
@scyxmcy7423
- 2025年10月1日しゃぼん玉乃南アサ読書日記読み終わったオーディブルで聞いた乃南アサ作品、2作目。聴き始めると止まらなくなり2日で聴き終えた。プロローグからラストまで、残酷なまでに明瞭な筆致で描き出される主人公の心情に惹きつけられ続ける、プロの手腕に唸らされる作品。物語は、荒み切った日々のリアルさに戦慄する導入部分から、田舎の無骨で温かな日常生活へと滑らかに移行していくものの、どこかに見えない緊張感を孕んだ描写がたまらなく上手く、いつ破綻へと転落していくのか分からない主人公の危うさにハラハラする。堕落し歪みきった、救いようのない若者であるというのに、なぜかこの主人公を憎みきれない。この主人公の再生が、自分自身の救いであるかのように、破綻しそうな場面が訪れるたびに汗をかいた拳をギュッと握りしめながら「駄目、駄目だ、頑張れ!」と叫びたくなる。ラストは涙を堪えられなかった。人は救われていい。どんな人も、救われていいのだと思える。ナレーションもまたプロの手腕だった。歯切れいい啖呵から朴訥とした方言まで実に魅力的だった。大満足の一作。
- 2025年9月29日凍りのくじら辻村深月読書日記読み終わったオーディブルで聞いた※辛口※ 初めて辻村深月さんの作品を選んだが、まーしんどかった。最後まで聴き終わるのがここまで苦痛な作品はもしかしたら初めてかも。全体的に「冗長」。なんでそこを長々語る?と思わされる事が頻繁にあった。いつこの描写終わるんだろう、早くストーリーを進めて欲しいのに…と終始フラストレーションに苛まれた。全体の7割が主人公目線で語る他の登場人物像の描写で、しかもそれが全然興味が湧かない。例えるなら、何の料理を作ろうとしているのか分からない料理動画内で料理人がひとつひとつの材料を「これは◯◯で〜◯◯という栄養があって〜」と長々と説明しているのを見せられているだけ、の状態で、「いや、ほんで?これらを使って何を作ってくれるん?はよそれ言うてや」と内心終始ツッコミながらの視聴体験はなかなかしんどかった。美人で頭が良くて読書家ででもワルい遊びも知ってて…みたいな主人公のキャラも、作者が考えた「理想の文学少女」をただ見せられてるだけの印象で、息遣いのある人間像が全く伝わってこなかった。ほんで、まがりなりにも仕上がった料理は長々と材料を語り倒した割にはフツー、すんごいフツー。短編でもいけたやろ、これ。
- 2025年4月5日ピエタ大島真寿美読み終わった芸能人の方の朗読は苦手意識があったのですが、見事にくつがえされました。小泉今日子さん、素晴らしかった。この小説の昔風の上品な言葉遣いを読み上げるのにまるで違和感のない情感豊かな朗読で、何度も胸がグッとなりました。小説そのものも素晴らしかった。ベネチアに生きた女性それぞれの人生の困難と喜び、それらが交錯して寄り添うさまを優しく温かく描き出しており、ラストの合奏は、まさに音楽のクライマックスで心を美しい旋律で満たされ陶酔するようなエモーショナルなラストだった。
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