いくつもの砂漠、いくつもの夜

4件の記録
中根龍一郎@ryo_nakane2025年3月13日読み終わった2024年1月3日に購入した記録があるので、1年以上かけて読み終えたことになる。読みが止まったり読み返したりしながら、ゆっくり進んだ。発表時期がちがう複数のテクストが収録されている本は、よくそういうふうに読む。そういうふうに読んでいると、本の最後に収録されているテクストについてひととおり目を通す経験をした、ということを指して、本を読み終わったと言っていいものかどうか、ちょっと不思議なためらいが生まれる。読んでいる「最中」でも、読み「終わった」あとにも、本はおおむね近くにあって、ときどき手にとるものであることに変わりはない。そして、読み「終わった」あとにも、全然読めていなかったことがわかる経験はたくさんある。 不案内だった金石範、金時鐘を読んでみようと思った。少し距離のある世代の韓国にルーツを持つ文学をよく知らない。 ベケットの「Brief Dream」についてのテクストがきわめてよかった。ネルソン・マンデラの釈放運動のために世界の作家が文章を寄せた『For Nelson Mandela』の、フランス語版には収録されず、ゆえにフランス語から訳が起こされた日本語版にも収録されていない「Brief Dream」という、六行の英語の詩(?)を、どのように読み解いていくことができるのか、どのようにその意味内容に接近していけるのかを追った挑戦的な痕跡で、とても面白い。 ——ところがベケットだけが「アフリカ」とも言わないし「マンデラ」とも言わない。デリダは「うーん、ベケットのだけは、どこがどうアパルトヘイトに関係あるのか見当がつかない」と(笑)。要するに、このコンテクストでも「ベケットはベケットしている」わけです。これは凄いことだと思います。ただ、この短文をしばらく眺めていると、デリダがそう言ったのは半ば冗談だと、だんだん思うようになりました。 (ベケットの「短い夢」/『いくつもの砂漠、いくつもの夜』248ページ) ベケットは『見ちがい言いちがい』が好きで、何度か読み直している。Readsにはまだ出てこない。いつか出てきたら登録したいと思っている。


