ドン・ジュアン: 石像の宴 (岩波文庫 赤 512-3)

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やん@grilledyangyang2023年7月17日読み終わったかつて読んだ自分の享楽のみを追求する主人公がクズofクズ。 ゲスさに腹が立つ反面、修羅場を口八丁で次々と切り抜けていく姿はいっそ清々しい。 開幕からのクズっぷりで主人公を落として、人助けでちょっと株を上げ、最後には自分が蔑んでいた「偽善者」そのものに成る、カタルシスと虚無が同居するラストだった。 女を征服する野心をゲームのように楽しむドン・ジュアンを見ていると、これは個人の話であると同時に、当時のヨーロッパ社会の縮図なのでは?利のためならゲスいことを何でもやり、上手くいかないとなればちゃぶ台返しの暴力(←マジゴミ) さらに面白いのが、宗教と人道のねじれ。 宗教が担うべき貧者救済は教会によってなされず、無神論者が代わりに施しをする。信心深さと人道を語る従者は、主人におべっかばかり。 最終的に主人公自身が、まるで神の代弁者であるかのように振る舞う姿は、教会と絶対王政への批判とも取れる。 貴族、修道院、教会といった旧体制批判と、神や権力から独立する個人を痛烈に描く本作は、後世から見れば近代的として評価されるだろう。 ただし、そこで解放された「個人」の代表がドン・ジュアンなのが面白い。自由になったからといって、人間が善人になるとは限らないのだから。 これが啓蒙主義の先駆けというなら、フランス革命もああならぁな、という感想。


