宿借りの星 (創元SF文庫)

5件の記録
- 八玖@rock51042025年7月7日読み終わったXの紹介ポストを見て購入。SFは伊藤計劃しか読んだことがないので不安もあったが、とても面白く読めた。冒頭は少し手間取ったが、最終的には世界観に没入していた。 偶然に見せかけた加害など“人間的に”なるのがいいことなのか?と考えさせられる一方で、寄生の影響もあって盃を交わしたとされているマガンダラとマナーゾの関係には心打たれた。特にマナーゾを喪ったマガンダラが目の前にある風景を見てそこにいないマナーゾを思うという描写は印象的。 終わりは何となく呆気なかったなと感じたが、ではどういうラストなら満足だったか?と聞かれると答えられない。部分的な謎解きと世界観の種明かしがなされる断章を読んでいくうちに、かなり人間にも肩入れしてしまったため、マガンダラたちに寄生を打ち破ってほしかったのか、滅んでほしかったのか、定まらないまま読み切ってしまった感がある。 ただ、読了後に考えてみると、本編を通して描かれた様々な寄生が宇宙規模でも行われていたというのは面白い畳み方だなと思う。 寂しさを残しつつも、マガンダラが、マナーゾの子供たちと共に日々を穏やかに過ごしている描写で結ばれたのは嬉しかった。 関係性萌えの視点で言えば、ガゼイエラの夫婦関係が好きだったので、示唆された彼女(たち)の終わりは少しやるせない。あと終盤ラジュリンワからマガンダラに向けられた台詞によって繰り返し社攻をふっかけていたという過去に違う文脈が乗るのも良かった。 全体的にとても好みだったので、同著者の作品をまた読みたいと思う。『皆勤の徒』にしようかなと考えていたが、あらすじを見て『るん(笑)』の方に興味を惹かれたので、こちらの購入を考えている。