他人の顔
28件の記録
しがない@ooe2026年5月27日読み終わったおもしろさを形容するなら、三島の金閣寺と同等だろう。どちらも文章が主人公の精神性で覆われている秀逸さがある。ただぼくは安部のほうがすきだ。 人間の泥臭い自家撞着が染みていて、それがこの『他人の顔』の文章表現に表れている。それゆえ中盤は冗長になるのだが、これは主人公の精神性だと理解することができる。 顔の傷以降、彼は神経症になったのだろう。そうして読み進めていくと合点がいく。彼は自分が信じられなくなった。それはつまり、自分の世界の見方に対しても自信がなくなるということだ。これが世界への猜疑心になる。 彼は世界に抵抗するため仮面に固執するのだが、妻は呑気にテレビを見ている。彼を卑小する様子もない。妻は彼と顔だけで接しているわけではなく、彼の存在、そして空気を愛している、彼との日常を愛しているのだ。 最初から彼の勘違いであり、自家撞着の物語である。 妻が仮面の彼と性行為をするのも、彼女が彼のすべてを愛しているからだろう。 というか仮面を被って低い声を出したくらいでバレないと思うのが、そもそもお門違いである。特有のしぐさや空気感は拭いきれない。それを失念するくらい彼は顔に固執してしまった。自信のなさから全ての人間が顔で生きてると勘違いしてしまった。 そんな人間の哀れな自家撞着である。 最後、物語はどうなったのだろうか。 僕が考える最後は、やはり足音は妻であり、妻はいつも通り家に帰ってきたのだろう。彼女は徹頭徹尾日常を生きている。 そして彼は顔ではなく足音で妻と判断する。彼女にすべてを愛されている彼は仮面を殺すのだ。 物語を普通に読むとバッドエンドは想像に難くない。しかし僕は、それでも救いに賭けたいと思う。それは彼の実存が妻に依存しているからでもある。 蛭の顔は最初から彼の仮面であったのだ。 それにて自己超克の物語としよう。


- 1zo@1zo2026年4月25日読み終わったおそらくすべての男が持っている、どうしようもなくみっともなくて恐ろしい性質を、男っぽくてどうしようもない惨めで気色の悪い形で言語化したうえで、さらに妻の視点で客観的に捉えて非難する。非難されることで俺も救われる。安部公房さん、頭のなかどうなってるんすか。
okabe@m_okabe2026年3月24日読み終わった<妻の手紙>に撃ち抜かれた。愛情や怒りや哀しみがごちゃ混ぜになりながらも、主人公の主張をあっさり理路整然と覆してしまう華麗さ。それまでの主人公による長ったらしい内的独白が、全てこの手紙の為の壮大な前振りに思えてくる。手紙を読んだ主人公は果たして「無敵の人」になってしまったのだろうか。



- こよなく@funyoi2025年10月7日読み終わった超おもしれー。 顔の効果とか、拘束と自由、自我と欲望、他者と孤独、主人公の堂々巡りの思考、哲学、が長々と書かれてて、それ読んでるだけで面白いんだけど、妻の手紙がさらに面白い「尻尾をくわえた蛇のような長ったらしい告白を書いただけです」この一刀両断、そんな殺生な。自分も男側だから食らった。思考だけぐるぐるさせて現実に触れてない。 途中挟まった、仮面が大量生産された世界の空想話も、それだけでSF短編として充分面白い。まさに今ってSNSで誰もが覆面を手に入れた世界だ。 みんな人間関係は希薄で一方通行の会話をしてる。 「愛というものは、互いに仮面を剥がしっこすることで、そのためにも、愛する者のために、仮面をかぶる努力をしなければならないのだと。仮面がなければ、それを剥がすたのしみもないわけですからね。お分かりでしょうか、この意味が。」
サリー@BIG_STAR_SALLY1900年1月1日かつて読んだ@ 未来屋書店 旭川駅前店地元の未来屋書店さんでやっていた「本の処方箋」フェアで入手。頭の中で「イリヤ!(レヴィナス)」と唱えながら読んだ。


















