夕陽の河岸(新潮文庫)

3件の記録
DN/HP@DN_HP2025年12月11日午後の散歩をしながら少しずつ収録作の「朝の散歩」を読んでいたら、作中とわりと近いところを歩いていたし、さっきわたしが渡った川は安岡が川原を犬と歩いた川だった。この偶然。少し特別な気持ちになる。そして小説もとても良かった。なんてことのない、とも言える老年の日常と思索。渓谷と河原、犬との散歩。それを綴る文章の素晴らしさ。何に、とははっきりと言葉に出来ないような感動があった。その感動と偶然を噛み締めながら夕陽が沈みかけた川沿いの道を歩いて帰える。それもまた特別な時間だった、ような気がしている。







DN/HP@DN_HP2025年12月11日「ここに収めたのは、六編の短編小説と四編の随筆(小品文)である。しかし、これらの文章の中でも、どれを小説に、どれを随筆に分けていいか、私自身、判断をつけかねている。 小説として読めば読めないこともないが、作者個人の思い出、ないしは雑感として読んで貰っても結構である。 勿論、こういう結果になったのは主として私の物臭のためである。しかし文学を、いちいち小説とか随筆とかに分類することにどれほどの意義があるか、そういう疑念が私の中で年毎に強くなっていることも、またたしかである。」 「結局、私にとって文学とは、小説であれ随筆であれ、いかなる奇想天外の構想よりも、文章のうま味に在るものと思われる。」 「あとがき」より


DN/HP@DN_HP2025年12月7日買った少し読んだ古本@ ゆうらん古書店一緒に買った『歴史への感情旅行』に収録されていた、15年連れ添った紀州犬についてのエッセイ「コンタに学ぶ」を読んだあと、この本に移って「犬」というズバリなタイトルの一編を読む。こちらもとても良かった。 病により犬と暮らすことを諦めた日々で思い出す、戦時中、徴兵を数ヶ月後に控えた日の深夜、渋谷で唐突に出会う真っ黒なシェパード。彼と連れ立って歩いた数十分。改めて湧き上がる犬への思い。ああ。 わたしも幼い頃に一緒に暮らしていた茶色いダックスフントのことを思い出す。ある日の彼と散歩した数十分のことは何故かよく覚えている。今日この本を買うために歩いた道のりも犬と、出来ることなら彼と一緒だったら、と想像している。少し泣いてしまうかもしれない。



