橙が実るまで

5件の記録
- レモン@remon_31312025年8月2日読み終わった熊本で本屋を営む著者、田尻久子さんの、主に家族との記憶とそれに合った川内倫子さんの写真が感傷的になる。 田尻久子さん、多感な時期に家が大変だったのに、それを冷静に淡々と書いていてそれがまた余計に胸に迫るものがあった。
- 福藻@fuku-fuku2025年5月13日読み終わった幼い頃の自分の声に耳を傾けるように、久子さんは言葉を紡ぐ。文体は淡々としているけれど、ここまで真っ直ぐに書くのは苦しい作業だったんじゃないか。そこに、倫子さんの写真がやさしく寄り添う。淡く、影のある写真。古いアルバムをめくっているような気持ちになる。 彼女たちの言葉と写真にふれて、私自身の記憶がよみがえる。誰にも見せられない、深いところにあるどろっとした記憶。あたらしい土地で暮らしはじめて生まれ変わったような気持ちでいたけれど、まだまだ過去に縛られている。移住して2か月。穏やかな湖を眺めながら、ただただ、心に波風を立てないように過ごしてきた。でも、湖にだって、荒く波打つ灰色の日はある。見たくないことから、目を背け続けることはできない。 久子さんの母親は、久子さんが中学生の頃に蒸発した。そして、何十年も経って、我が子のもとに戻ってきた。認知症の症状が現れはじめた母親に、久子さんはこう尋ねる。 「なんで殴るような人と結婚したと?」 私もいつか、母にそう尋ねる日が来るような気がする。
- ロッタ@rotta_yomu2025年4月24日読み終わったいまはこの世にいない人もいる人も、田尻さんの記憶の中では等しく生きている。現在と過去をさまよう文章が心地よくもすこし寂しい。誠実な人なんだろうなとおもう。 愛があるかどうかはその家族によるだろうけれど、問題のない家族はきっとない。あの頃はわからなかった感情の折り合いがいまならつけることができるのに。言葉にできなかった思いにいまなら言葉を与えることもできるのに。記憶にはせつなさと後悔がともなう。田尻さんの文章がだいすきだーーー。