ジャッカ・ドフニ
6件の記録
socotsu@shelf_soya2025年11月5日読書メモ『到来する女たち』を読み始めて、『ジャッカ・ドフニ』は小説だけど、チカップ(チカ)からジュリアンへの手紙が代筆なのは、彼女の状況として必然性があり、かつ作品としてこの「聞き書き」を意識している記述方法だと改めて感じた。何らかの事情で書くことが難しい人、書くことから遠ざけられている人が、別の人に聞き書いてもらう、というシチュエーション、そのあり方からひらかれていくこと。


socotsu@shelf_soya2025年11月2日読み終わった「わたし」という一人称の物語の主人公が、過去に遡った時間軸では「あなた」と呼びかけられる存在になって、そのあいだに、17世紀を生きるアイヌと和人のミックスルーツであるチカップの物語が挿入される作品なのだけど、それぞれが濃密に絡み合って伏線が張り巡らされているタイプの物語じゃないのがよかった。それぞれの「周縁」を生きる人たちの人生が入れ替わり立ち替わり姿を表す。巻き込まれる力の強さも感じるけれど、そのような物語の姿勢には風が通っている。
ユウキ@sonidori7772025年7月24日読み終わった借りてきたアイヌと和人のミックスルーツを持つ孤児で、女性で、キリシタンで(かつ、キリシタンの中でもある種の疎外感を持ち)、移民でもあるチカのインターセクショナリティを描きつつ、チカップの喪失と自分への回帰、一人で育てていた子供を失った「わたし」の喪失と回帰の物語を、海と北海道のさすらいを通して描いている。面白かったし、これはすごい物語だな…。 本筋では無いものの、冒頭に描かれた東日本大震災による喪失感が読み手にもリンクして、物語により没入してしまった。 ゲンダーヌさんを通して描かれたウィルタや北方少数民族への日本の仕打ちや、キリシタンへの残虐さ、異質とみなされた人々への日本の眼差しなど、ところどころに滲む差別と抑圧への怒りは出版からほぼ10年経ってもまだまだ現実で解消できてないどころか、リアルタイムに危機感を覚える課題で、悲しい。




