猛スピードで母は

4件の記録
- あんどん書房@andn2025年3月30日読み終わった一作目『サイドカーに犬』。 麦チョコとかパックマンの筐体とか、レトロなものから記憶が広がっていく感じは長嶋さんの今の作品にもつながるところなのかなと思った。薫の洋子への憧れは、子どもが大人に抱きがちな微笑ましいものだけれど、サイドカーの犬みたいに飼われたいという感覚は独特だと思った。(そして洋子は子どもらに与えるおやつを「エサ」と呼んでいた) 最後の場面で薫は「そろそろなんじゃないか」とうろたえていて、いったい何が「そろそろ」なのかという部分に解釈を要する終わり方をしている。 その直前の描写も踏まえると、大人になる、みたいなことなのかなぁと思う。洋子の年齢を追い抜いてしまったが、あの強さとか自由さとかを私はまだ持っていない。サイドカーの犬という、庇護下でじっとしていれば良い存在から、洋子のように自律した存在にならなければならない。 と解釈した。 二作目『猛スピードで母は』 孫に対する態度が次第に変わっていく祖父母だとか、祖母の死や祖父の入院で毎日実家からM市へ通わなくてはならなくなるとか、細部がものすごいリアル。だからこそ、母が壁をよじ登るシーンはものすごく印象に残るのだ。 こんなストレスに晒されてたらつい子どもに当たったりしてしまいそうだが、母は決して不条理にキレたりしない。猛スピードで突き進んでいく。そこがものすごくかっこいい。 解説で井坂洋子さんが「男の子の成長物語」としての読み方について触れられていて、その視点はほとんど抜けちゃってたなぁと思った。 もともと慎はしっかりした子だが、母の姿を見てさらに強くなっていくような予感を感じさせていた。