なかなか刺さるお話でした。 主人公が｢私｣ではなく｢あなた｣表記で統一されているのが、｢自分のない｣ことを証明しているようでした

あなたには、あなたがない…それに対して、それがわかっただけでも良かったんじゃないという古賀さんの言葉。これから少しづつ見つけていけばいい。あなたには味方がいる。そんなことを思った。

38歳、独身、派遣社員。実家暮らしの環は幼い頃から両親の言うことを守り続けてきた。要領の悪い姉と、自由奔放な妹。ある日妹がシングルマザーとなって実家に戻ってきてから、環の生活は徐々に変容していく。読んでいて、息苦しさが纏わりついてくるようだった。のしかかってくるものを全て受けとめるみしみしという音が聞こえる。誰かに従い続けるのは楽だが、静かに確実にその人の心を蝕んでいく。摂食障害になり、体重は落ち、自身が潰れてしまってから初めて家族の異様さに気付く。長かった夜が、ようやく明ける。

毒親話。だが、主人公が中年なので、読んでみた。最後は、少し希望の見える終わり方でよかった。

〈あなた〉が終盤、拒食症状になる描写がなまなましく描かれていた。

テーマ的に気になったので買い。