イングランド田園風景の文化史

イングランド田園風景の文化史
イングランド田園風景の文化史
丹治愛
岩波書店
2026年8月31日
4件の記録
  • モリスにとって国民国家とは、相互に「軋轢」を抱えている「家族」や「種族」(=民族)を「無理矢理」「国民」なるものに「まとめ」ることによって構成される「人工的で機械的な集団」にすぎない。そしてそのうえで、「愛国心」という「おろかしく妬み深い偏見」を「かきたてる」ことで、他の国家への敵愾心をあおり、そのことによっていっそう「愛国心」を強化することによって、差異のなかからかろうじて同一性(ルビ:アイデンティティ)を創造し維持している「集団」にすぎない。(p.193) モリスが見ていたのは「帝国主義的国家どうしの苛烈な戦争としての第一次世界大戦を準備していた一九世紀末」(同上)だが、こうして歴史は繰り返されている。
  • いぬもり
    @inumori
    2026年9月17日
  • 「イングランド人は〔帝国という〕巨大かつ斬新な事業に没頭していたためか、国民としてのみずからの本質について内省的な考察をおこなう必要性も、その意欲も感じていなかったようである。/こうした事業が失速しはじめ、〔ドイツ、アメリカなど〕新たな商業的ライバルたちが英国の産業的覇権を脅かし、帝国への信頼が揺らぎはじめたときになって、はじめてある程度のイングランド人としての自己意識があらわれはじめた。これこそが〔中略〕「イングリッシュネスのモメント」である。イングランドの知識人や芸術家――歴史家、政治理論家、文学・文化批評家、作曲家、詩人、小説家――は、はじめてイングランドの国民としての特性――すなわち、独自の歴史、伝統、運命にかんする明確な意識をもつ集合体としての特性――への探求をはじめたのである」(p.138)というクリシャン・クマー『イングランドのナショナル・アイデンティティの生成』p.224)からの引用は、ナショナリズム=愛国心の高揚というものが「己の存在価値に対する危機感」から生じることを例証している。クマーの言葉をさらに借りれば、「吠えない犬」(p.136)であることをやめざるを得ないということ、吠えることで己の存在価値や強さを誇示しなくてはならない、たとえそれがまがいものであっても、あるいはまがいものであるからこそ、ということだ。自信を失いはじめた者から吠えはじめる。メイクアメリカグレードアゲイン、日本を舐めるな。文学研究を真剣におこなうこと、そしてそれを真剣に読むことは、歴史が繰り返されていることを体感することでもある。
  • 指導教授の単行本が久しぶりに出た。授業でもよく言及されていたイングリッシュネスという概念についての本で、なんだかとても懐かしい。テーマもニッチだし、高額本だし、たぶんすぐには売れない、いやずっと売れないかもしれんから、少ししたら店から下げて読もうと思ってたけど、献本が届いたのでもう読んじゃう。
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