文庫 寄生生物の果てしなき進化

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- 犬山俊之@inuyamanihongo2025年4月27日おすすめマラリア、シラミ、トコジラミ(南京虫)、蟯虫は先史時代から人間とともにあった! ワクワクする寄生生物の話 * 「へー!」とか「ほー!」とか、読みながら何度も声が出ました。寄生生物についての興味深い事象が次々と手際よく記されていて、ページをめくるのがホントに楽しい。 例えば、「トコジラミ(南京虫)は人間がまだコウモリと同じ洞窟に暮らしていた頃、人間にも寄生するようになったようだ。コウモリと人間のトコジラミはおよそ25万年前、人間が洞窟を出た頃に枝分かれしている……」。最近ニュースで目にする南京虫と我々人類はそんなに長い付き合いだったのですね。 とにかく、文章がうまい。簡潔でリズムを感じる文体で、知的な上に読みやすい(これは翻訳者の方の力でもあるでしょう。本書の翻訳、すばらしいです)。 また、各章、森の中でのフィールドワークの体験等を綴ったエッセイ風の文章が挟まれるのですが、これもユーモアたっぷりでおもしろく、一気にファンになってしまいました。 他にも、印象に残っているのは、コロナ禍初期にフィンランド国会で流行の抑制策を講義する場面。自分なんかは『シン・ゴジラ』のあの場面をイメージしながら、読んだのですが、著者はそういう重大時に呼び出されるような一流の科学者なのですね。そして十数人の国会議員を前に笑顔で冗談から入る、と。最高です。 * これ、日本語読者は幸せです。フィンランド語からの翻訳なので、こんなおもしろい本を読めるのはフィンランド語か日本語を理解する読者のみ(英語版は出ていないよう……)。心から、おすすめです▼