異教のローマ ミトラス教とその時代 (講談社選書メチエ)

6件の記録
arctic@arctic2026年3月23日読み終わった「ミトラス教を語るために非ミトラス教についても語る」という理論展開によって、ローマ帝政期に他にどんな宗教がどんな信仰を持ってどんな儀式をしていたか、網羅的に掴むことができて非常に面白かった。 以下はアッティスの儀式に関する本文中からの引用。 『アッティスの祭儀は、この神の死と再生を祝い、祭儀のクライマックスとなる三月二四日は、アッティスが自ら去勢した際に流した血にちなんで「血の日」とされた。この日には、アッティスの象徴である松の木の周りで、笛やシンバルが鳴らされる中、去勢した神官たちが血を流すまで自らを鞭打ち、その血を祭壇などに塗り付けた。周りの群衆からは、その狂乱の中、自ら去勢する者も出たという。』 怖すぎる。狂乱どころの話じゃ無い。 ミトラス教の信奉者であった軍人や奴隷について、「正式な家族を持つことが許されず、事実上の家族を得たとしても引き裂かれてしまう」という共通点がある、という指摘は特に興味深かった。 『ミトラス教が誕生した一世紀後半は、史上空前の規模で多くの人が自らの故地を離れて移動するいわばグローバル化の時代だったのであり、その分、孤独に苦しむ人は増えていた。』 グローバル化が孤独を引き起こす、かあ。なるほどねえ。


arctic@arctic2026年3月21日読んでるミトラ神が古代メソポタミアの遺物でも確認できる古い神だってことは知っていたから、ミトラス教はその信仰が長いときを経て教義化していったんだろうと思っていたけど、ぜーんぜん違うっぽくて度肝抜かれた。 本書の流れとしては、まず、歴史的にミトラ神がどんな神として各地の各時代に取り扱われてきたかを、ミタンニ王国の遺物から時系列に沿って説明する。 偉大な神の連れだったり、もしくは配下だったり、古インドの神々と並べて語られたり、太陽神や契約神だったり、ミトラ神は様々に語られてきた。 このあたりは、古代宗教がミトラ神中心に雑多に言及されていて非常に楽しい。 が、時代がローマ帝政期まで下ると状況が一変する。帝国各地で同時多発的に、高度に教義化されたミトラ信仰に基づく石碑が一斉に製作されているのである。 このことについて、著者や先行研究は、私が想像もしなかった結論を出している。 つまり、ローマ帝政期の最初期に、交通の便のいい都市部(おそらくイタリア)で、イランとギリシアの宗教を融合させ、階位制度や神殿の構造を備えた高度な宗教として、ミトラス教を確立させた【たったひとりの教祖】がいたはずだと言うのである。 さらにすごいのが、【たったひとりの教祖】を、ミトコンドリア・イブのような仮想の人物としてではなく、具体的な人物名まで出して特定しているのである。 歴史ミステリーのような高揚感を味わった。 ここまで読んでまだ35%である。面白すぎ。
arctic@arctic2026年3月16日読み始めた女と奴隷の宗教だったはずの初期キリスト教が、どうして帝国の国教として受け入れられるに至ったか、同時代のキリスト教でなかったものを知ることで、なんぼか知見を得ていきたいという試み。 ギリシャ神話はエンタメ化しすぎたし、ローマの宗教はもはや国家事業だし、そんなところに「あなたにだけ伝えます」「あなた個人を救済します」って異国情緒たっぷりの密教が入ってきたら、確かに帝国の女たちは飛びつくかも……?というのが、これまでこの手の本を読んできて、なんとなく初期キリスト教に対して抱えてる印象である。 でも、そっからほんとにマジもんの帝国国教にまで成り上がるなんて、置かれてる状況に天と地ほどの差がないか!? いくら女たちに人気があったとは言え、ちょっと前まで帝国属州の超限定的な民族宗教でしかなかったのにー!?!?? ミトラ教は実際のところ全然文献が残ってないらしくて、一般向けの書籍でもあんまり詳しく言及されないことが多いから、こうやって一冊にまとまってくれてるのは嬉しいねえ。 ゾロアスター教とミトラ教のベースになってる古代アーリア人の宗教のことを「マズダー教」と呼んでいて、今までなんて呼べばいいのか分かんなかったから助かった。 いやしかし、それにしても、この手の本を読むたびメソポタミア行きたさが募る。世情が許してくれない。つらい。 9%読了。





