ジーノの家 (文春文庫 う 30-1)

5件の記録
- ryo i@immoue2025年3月12日読み終わったエッセイウンブリア旅行のお供に。現代のイタリアに生きる素朴な人びとをめぐる短編小説のようなエッセイが10篇。早朝のバールで出会った警察官から教えられたミラノの暗やみ。北斎の生まれ変わりだという天啓を得たリグリアの老いた画家と奇妙なイタリア語を喋る日本人の老女。ミラノ郊外の田舎で繰り広げられるダンスホール。アパートの火事さわぎをきっかけに絆を深める住人たちの集い。インペリアの丘の上にしがみつくようにしてある家での暮らし。誘拐された犬の身代金をめぐって仲間たちで交わされる談義。シチリア島のサボテン農家たちの暮らし。ぼったくりタクシー運転手とめぐるナポリ、心づけのコーヒー。ジェノヴァに逢着したペルーからの大家族との暮らし。セストリの海岸に打ち棄てられた古舟に取り憑かれた老人を弔う儀式。異国に暮らしている身としては嫉妬を憶えてしまうほど強度のあるエピソードの数々に魅惑されっぱなし。どうしたら彼女のように身軽で、世界にたいしてひらかれていられるのだろうと、自分の変わり映えのしない逗留生活をおもわず恥じてしまう。あるいはイタリアという土地がもつ魔力なのだろうか。