Love Letters: Vita and Virginia
Love Letters: Vita and Virginia
Virginia Woolf
Vita Sackville-West
National Geographic Books
2022年7月19日
9件の記録
- gato@wonderword2025年8月4日まだ読んでる233pまで。1930年にヴィタがノールからシシングハーストへ越すと二人は徐々に疎遠に。ヴィタが敷地に籠りがちになり、逆にヴァージニアは海外を飛び回るようにもなって二人の関係値が逆転する。 ヴィタが造園した有名なシシングハーストの庭は、きっとノールを相続できなかった彼女の思いが詰まっているのもあって、ヴァージニアも初めはいたく感激したようなのだが、その後庭作りに情熱を見いだしたヴィタとヴァージニアはどうしても話が合わなくなってしまったようだ。 久しぶりに会ったヴィタはindolent country ladyになっていた、ヴィタと私の友情は終わった、と書かれた35年の日記は言葉はシンプルだが強烈だった。"And there is no bitterness, and no disillusion, only a certain emptiness."。でもここで終わりじゃなかったのだ。
- gato@wonderword2025年8月1日まだ読んでる187pまで。『オーランドー』が出版された1928年分を一気読み。いやー凄かった。ヴィタの浮気をきっかけに『オーランドー』のプロットが出来あがったと知って、「へ〜それでもあの結末にしたんだ〜」などと考えていたら、二人が仲直りしてすぐにヴィタの父親が亡くなる。しかもヴィタの愛したKnoleの邸宅は弟に相続されることになってしまい、二重に苦しむヴィタをヴァージニアは慰める。 オーランドーが性別をスイッチしていくというアイデアはもっとずっと前に生まれていたわけだが、それが「もしヴィタが男だったらKnoleを相続できた」という形で現実に伏線回収されていたとはね。小説はヴィタとKnoleの思い出に捧げられる。 初めは「『灯台へ』の1/3しか本屋からの注文が入ってない」と嘆いていたが、あれよという間にヴァージニアのベストセラーに。そしてヴィタはどこに行っても〈リアル・オーランドー〉として人気者になる。ヴィタは元々セレブなので、つまり同時代人にとっての『オーランドー』は一種のゴシップ本でもあったんだなぁ。
- gato@wonderword2025年7月30日読んでる140pまで。ヴィタの浮気が発覚。その憂鬱のうちにヴァージニアは『オーランドー』の構想をすばやく練りあげる。そして「アンタなんかそのご立派な血統ごと私の小説のダシにしてやるよ」というような手紙を書く。 ヴィタは白々しくあなたの小説のモデルになれるなんて光栄だとか言いながら、「あなたがみっともない姿で私を飼い犬のように振り回しても、私はずっと忠実だったでしょう?」とやり返してくる。テンション上がってきた。 ヴィタをモデルにした小説の構想は出会いからずっとヴァージニアのなかにあって、そのために交友関係とか領地での暮らしを本人に取材してもいるんだけど、ある種ヴァージニアの心からヴィタが一瞬のうちに、そして決定的に引き剥がされた瞬間に『オーランドー』が形作られるというのは作家の業なのか、それとも自己防衛本能なのか。自分を子犬に例えるヴィタの手紙も『フラッシュ』を連想させる。
- gato@wonderword2025年7月29日読んでる118pまで。言葉の使い方が素直で、夫への手紙にも悪口や皮肉を書かないヴィタ。貴族というものは簡単に人を批評しないように躾けられているものなんだろうか。情熱的で人がいいけれど、手紙はちょっとつまらない(笑)。 ヴァージニアは真逆。どんなに短い手紙でもピリッとした冗談や皮肉がひとつふたつ混ぜ込まれていて、いったい今彼女はどんな気分なのか絞りきれない。ヴィタに情熱的な手紙を送ってるときでも、日記には「彼女の詩には別に興味ないけどそろそろ読んであげなきゃな〜」みたいなことを書いていて怖い(笑)。 この人ほんとうに今ヴィタのこと好きなのかな、ホガース・プレスのために売れ線作家の気を引きたいだけなのかな、でもブルームズベリー・グループの輩はみんな似たもの同士の口八丁だから、ヴィタみたいな人と話すのが安らぐこともあったんだろうな、などとヴァージニアの心中を探りながら読んでいると、ヴィタがThe Landで賞を受賞したところから急にヴァージニアのナマな感情がゴロリとまろびでてきた。「ワシには詩はわからぬ」とコンプレックスを吐露しながら、嫉妬と羨望を認めるヴァージニア。 ヴィタは10歳年下だったが、当時はヴィタのほうが売れてる有名人で文壇的にも評価されていた。Wikiによると、ヴィタはホガース・プレスで一番売れた作家だそうだ。この事実、どちらの気持ちを思ってもじんわりと泣けるなぁ。
- gato@wonderword2025年7月26日抜粋"Style is a very simple matter, it is all rhythm. Once you get that, you can't use the wrong words. But on the other hand here am I sitting after half the morning, crammed with ideas, and visions, and so on, and can't dislodge them, for lack of the right rhythm. Now this is very profound, what rhythm is, and goes far deeper than words." p56 確かル=グインが『文体の舵をとれ』でここの文章を引用していた気がする。
- gato@wonderword2025年7月26日読んでる70pまで。クライヴ・ベルが本当にロクなことを言わないので名前がでてくるたびに笑う。でも泥酔したクライヴが「もうヴァージニアと寝たの?」なんて余計なことを言って、しかもそれがヴィタが長旅にでる直前だったもんだから、結局二人の気持ちが盛り上がるいいきっかけになっちゃう。現実でもいるんだね、こういう役回りの必要悪。 ヴァージニアは服の趣味が悪かったらしい。ハロウィンでもないのにオレンジと黒のドレスを着てきたり、変な帽子を被ってきたりしてヴィタを困惑させている。でもヴィタは何も言わずにいたのを、これまたクライヴがひっくり返す。レナードなんかフォローしてやれよw
- gato@wonderword2025年7月25日読み始めた37pまで。ヴィタもヴァージニアもろくに著作を読んでないのに先にプライベートを覗き見することに若干の罪悪感を抱きつつ、めちゃんこ面白い。 超皮肉屋のヴァージニアと、含みのない言葉遣いのヴィタ。ヴァージニアは最初からいきなりサックヴィル家の年代記をヴィタにねだっていて、その後もいろいろあり、ヴィタに「あなたの人付き合いはぜんぶ原稿のためなんでしょう」みたいな軽口を言われている。 ヴィタが誘った国際ペンクラブ(H・G・ウェルズとかいたらしい)にヴァージニアは行かないくせに、ウルフ宅に呼ばれたヴィタをブルームズベリー・グループの輩が辱めたりしている。当時はヴィタのほうが有名人だけど、時代の風は確実にモダニストたちのほうに吹いてきており、古き良き貴族であるヴィタに金銭的な劣等感は抱いても文化的・教養的には何も負い目を感じていないんだなーと思った。半分虚勢なんだろうけども。
- gato@wonderword2025年7月4日買った好きな読書YouTuberがこぞってオススメしていたヴァージニア・ウルフとヴィタ・サックヴィル・ウェストの書簡集。ヴィタは『オーランドー』のモデルになった人なので、『オーランドー』ファンとしては見逃せなかった。