⭐︎⭐︎⭐︎ “夜行は早めにホームに入ってきた。その頃のあなたは、もちろん寝台車になど乗らない。大きな袋をいくつも提げたどっしりした女たちといっしょに、固い椅子にすわって、夜を揺られていくつもりだった。まだ誰も入っていないコンパートメントがあったので、入って文庫本を読んでいると、次第に廊下が騒がしくなり、それからプラットホームが騒がしくなり、列車の下半身の鉄が熱い作動を開始した。苦しげにきしむばかりで、快い音ではない。あなたには、列車が走ることを喜びにしているとは、どうしても思えない。しかし、もし走らないでもよいと言われたら、列車は何をして過ごすのだろう。”

「あなたは」で展開していく物語。 読んでいる「わたし」も気がつくといつの間にか「あなた」としてその旅をしているような感覚に陥る不思議なお話し。面白かった。

大学の講義で。

二人称で語られる小説 自分が記憶喪失になったかのような不思議な気持ちで読んだ