灰
@graytescape
- 2026年2月21日
大地の子 二山崎豊子読み終わった陸一心だけでなく色んな登場人物の視点で物語を追う構成が秀逸だなと改めて思ったりしたし、実の父親と仕事の現場で再会するなんてあまりにも劇的。松本耕次は実の息子と再会しても、幼少期の面影もなければ名乗る名前も違うしでこんなにも気づかないものなのか、これも戦争が残した瑕なのだなと。再会した陸一心と趙丹青が互いに「思い知らせてやる」という敵対感情を抱くのが妙に人間らしくて、骨太の小説に恋の愛憎が絡む描写として面白かった。 - 2026年1月25日
大地の子 一山崎豊子読み終わった舞台化されることをきっかけに原作を読み始めた、ドラマ未見勢です。(内容のネタバレあります⚠️) 陸一心を巡る辛い運命を追い始め、文化大革命、終戦期から幼少期までの回想、労働改造所、と時系列や舞台を行き来しながらも凄惨な描写が続くので、冒頭で覚えた痛覚が徐々に麻痺していく感覚もあり、ソ連兵による虐殺や、長春から脱出するための真空地帯で餓死した人間が転がる描写を経て、死体を見ても驚かなくなる一心を追体験しているような恐ろしさすらあった。 「これが戦争だ」と受け止めざるを得ないからこそ麻痺していた感覚が、真空地帯や労働改造所での描写を目の当たりにすると「これが極限状態に置かれた人間だ」というやるせない気持ちが新たに湧いてくるし、己の想像力が嫌になるほど掻き立てられる文章力によって描写が浮き上がるような冒頭の文化大革命での痛ましい尋問がどれだけ理不尽なものであるか、その虚しさが他のシーンを経てより一層強まる構成は凄まじく巧い。 陸一心に手を差し伸べる陸徳志も袁力本も江月梅も、親が殺され孤児となった日本人の子供達を自国の仇として人権を奪うような周囲と一線を隠して接する、その人間としての魂の崇高さこそ、この物語に救いを与える灯台のような位置付けで、命がいくつあっても足りないような修羅場を何度も潜り抜けながら生き続ける一心の精神力を照らしている。一心が労働改造所でとらわれている中、一心も徳志も、それぞれの立場ゆえにお互いに更なる危害が及ぶのではないかと危惧する状況も、互いが人格者であるからこそ苦しい。忌むべき存在である日本人である自分を育ててくれたから。長春を脱出する前に日本に帰りたがっていた一心を、たとえ留まっていたら命はなかったとはいえ無理矢理連れてきてここまで育ててしまったから。でもその関係性は、血は繋がらずとも確かに親子であることの証なのだなと思う。 個人的に最もショックだった描写は、真空地帯で徳志が他人から強奪した大豆を一心に「どうだ、美味いだろう」と食べさせるシーン。そこまでしないと生きられない、餓死が隣り合わせであるという現実、皆から尊敬されている徳志でさえもそういう手段を選ばざるを得ない状況の極限さ、そしてそうまでしても家族を助けたいという愛。こんなにも虚しいことってない。あと狙った構成ではないかもしれないけど、労働改造所での羊飼いの業務の中で羊を解体する一心の描写が、日本人の死体から衣服や金目のものを剥ぎ取るソ連兵と重なってしまい、言いようのない苦しさを覚えた。
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