深夜特急3

10件の記録
- カキログ Ⓚ@kakilog_2025年3月9日読み終わった◆印象に残った本文 「来る時と違って、ブッダガヤからガヤへ戻るリキシャの道中は快適だった。値段の交渉も円滑にいき、ガヤまでのおよその時間もわかっている。私は座席に腰を落ち着け、周囲の景色を眺める余裕を持つことができた。 その日も夕焼けが綺麗だった。左手に陽がゆっくりと沈んでいき、右手に流れるネーランジャラー河の水面を赤く染めている。河原には干し草を背負った象が二頭、首の辺りに農夫と少年を乗せ、のんびり歩いている。 雨季に入る直前のこの河には一滴の水も流れていない。干上がってしまい、河床が露出してしまうのだ。月の夜などは、河床の砂がキラキラと輝き、一本の長い砂漠のように見えるという。しかし、やがて雨季に入ると、ある日、不意に河上から一筋の水が流れてきて、再び河になるのだ。それはまさに、輪廻転生を眼のあたりにする光景であることだろう。 いま、ネーランジャラー河は豊かな水を得て、夕陽に美しく輝いている。しだいに暮れてゆく薄紫の空気の中をなおも走っていくと、左手の林の奥で無数のホタルが乱舞しはじめる……。」