真夜中の子供たち(上)
13件の記録
Ryu@dododokado2026年2月9日読み終わった《(そして今、私は幽霊の役を与えられている。私は九歳で、父、母、ブラス・モンキー、そして私からなる家族全員がアーグラの祖父の家に滞在しており、孫たち私もその一人──は恒例の正月芝居をやろうとしている。そして私は幽霊の役を割り振られたわけだ。そんなわけで──それに、これから始まる芝居の秘密を保つためにこっそりと──幽霊の衣装はないものかと家中捜しまわっている。祖父は往診に出かけている。私は祖父の部屋にいる。戸棚のてっぺんに一つの古いトランクを見つける。埃と蜘蛛の巣をかぶってはいるが、鍵はかかっていない。このなかに私の求めるものが見つかる。それはただのシーツではなく、ひとつ穴のあいたシーツだ! あったぞ、このトランクのなかのこの革のかばんのなかに、古い聴診器と白かびの付着したヴィックスの吸入器の管の下にかくれて……芝居にこのシーツが登場したとたんに、ちょっとした騒ぎがもちあがる。祖父はそれをひとめ見るなり立ち上がってわめきだした。そしてずかずか舞台の上に上がってきて、観客の居並ぶ前で私の幽霊の衣装を制ぎ取ってしまったのだ。祖母は口をきつくすぼめ、ほとんど唇が見えなくなった。祖父が忘れられた船頭の声をかりて私をどなりつけ、祖母がすぼめた口から怒声を吐きだしたので、怖い幽霊も泣きべそかいた哀れな姿に変えられてしまった。何事が起こったのかも分からずに、私は逃げだし、夢中で走って、小さな麦畑へ逃げ込んだ。私はそこに──もしかしたらナディル・カーンがかつて坐ったまさにその場所に──何時間も坐り込んで、もう二度と禁断のトランクは開けませんとくりかえし誓い、しかし第一あれに鍵がかかっていないなんてひどいじゃないかという気持もいくぶん感じていた。しかし二人の怒りようからみて、あのシーツが何やら途方もなく大切なものであることを知った。)》63-64 《突然あらゆるものがサフラン色と緑色に色づく。アミナ・シナイはサフラン色の壁と緑の木造部からなる部屋にいる。隣室にはウィー・ウィリー・ウィンキーのヴァニタがいる。緑色の肌をし、白目はサフラン色に血走っている。ついに赤ん坊が、これまた疑いもなく同様に色鮮やかな内なる通路を通って降りはじめているのだ。壁の時計がサフラン色の分と緑色の秒を刻んでいる。ナルリカル医師の産院の外には、花火と群集があって、これまたこの夜の他に合わせて──サフラン色の火矢が飛び、緑色の火花が雨と降る。男たちはザファラーン(ウルドゥー語でサフラン)色のシャツ、女たちはライム色のサリーを着ている。サフラン色と緑色の絨毯の上でナルリカル医師がアフマド・シナイと話している。》256 《「……今はつまらぬ破壊的批評をすべき時ではありません」とジャワハルラル・ネルーは国会で述べていた。「悪意を抱くべき時ではありません。すべての子供たちが住めるような、自由インドという立派な家を建てなければならない時です」一つの旗がひるがえる。その色はサフラン色と白と緑。》263
pamo@pamo2025年3月17日読み終わった感想図書館本『百年の孤独』以来のマジックリアリズムの名著、「ブッカー賞中のブッカー賞」。その名に違わぬ名作! インド旅行後に読んだので、インド中を旅しながら、世界大戦後のインドの歴史を辿るのにも最適だった。 「インド独立の日の夜に生まれた子供たちは超能力が使える」という設定から「ストレンジャーシングス」的なファンタジーかと思ったが、全然違った。ファンタジー色はごく僅かで、中身はもっと生々しくて泥臭い、1人の人間が歴史の変化に翻弄されながら、多くを失い傷つきながら生きてゆく話。 富裕層の暮らしとスラム街、パキスタンでの戦争、宗教、政治…主人公の人生を通して、カラフルなインドの明暗が鮮やかに生き生きと描かれる。 ラストのカタルシスは『百年の孤独』と双璧をなす。 インドに関心のある方はぜひ手に取っていただきたい。













