私が語りはじめた彼は

8件の記録
- サヤ@sayaemon2025年9月12日読み終わったとある大学教授の男性によって揺さぶられる部下、家族、不倫相手達が、各々の愛の空虚さに惑い、それでも何かを守ろうと争う連作集。 平たく言ってしまうと不倫ものであり、おまけに主人公達は基本「不貞によって傷付く側」なので、じわりじわりと辛い読書だった… ラストではほとんどの人々が自らの感情になんらかの折り合いをつけ、世間一般の『愛』とは違っても、せめて『繋がりあう』ことを望んでいく その答えになぜ辿り着けたのか、すぐに納得できた話もあれば、よく分からなかった話もあった この『よく分からない』というモヤモヤ感こそが、愛というものの複雑さそのもの…なのかもしれない 誰も彼もが、うっすらと不幸。そんな印象の小説だった
- 卯木@ustuginus_readx2025年7月16日読み終わった「あなたの心に打ち込まれた杭は、いずれ溶けますよ。でもぽっかりと空いた穴はいつまでも残るでしょう。」、「激しい感情は書物と同じだ。どれだけ厚くても、いつか終わりがやってくる。僕はもう、激しさをすべて使いきってしまったから、あとはただ、はじまりも終わりもなく続いていくだけなのだ。すごく長い時間をかけて、死んではまた星を生みだす銀河のように。」 どれほどの経験があればこの境地に辿り着いたのか唸った。薄暗い中で朝に向かうしっとりとした文体が沁みている。
- 真子@oohzooom2025年7月1日読み終わった「私の痛みは私だけのもの。私の空虚は私だけのもの。だれにも冒されないものを、ようやく私は手に入れたのです。」 どれだけの感情を知ったらこの境地に辿り着くんや 裏切られたものたちの、愛した記憶、愛された記憶