「ヒルマ・アフ・クリント展」図録

4件の記録
- gato@wonderword2025年4月28日読み終わった巻頭の評伝とカタログ部分の解説が保守的かつ説明不足で不親切なので(展示でも思ったけど、ノートに限らずはっきりと文字が書いてある作品の文字起こしと翻訳がないのはなぜ?)、まさかこの作家の作品集で存在の大いなる連鎖もゲーテの色彩論もでてこないことある?と思っていたが、岡﨑乾二郎の評論「認識の階梯」がその辺りを全部回収しつつ、スウェーデンボリやフェミニズムと児童教育の意識改革などを絡めながら論じていてこれはとても読み応えがあった。 三輪の小論の「モダン・アートの既存のパラダイムは変更することなく安定させたまま、アフ・クリントの作品をそこに位置づけることはできるのだろうか」という一文が何を言ってんじゃって感じで引っかかって仕方なかったのだが、岡﨑が「制度的な既存美術はアフ・クリントの作品を包摂して、正当に位置付けることはできない。反対にアフ・クリントの作品は既存美術を体系として包摂できる。/そのとき、既存の美術史がアフ・クリントの作品にも適用しようとしていた『抽象』という概念は変容を迫られることになるだろう」と総括してくれたので胸のつかえが取れた。総じて「既存のパラダイム」では説明しきれない部分についての歯切れが悪いカタログではあるが、岡﨑の論が読めたのは非常によかった。あと印刷がとても綺麗です。
- gato@wonderword2025年4月27日読んでる収録されている三輪健仁の評論「彼方よりの絵画」を読む。画家の主体性をめぐる議論に違和感。シュルレアリストの自動筆記とかデカルコマニーとかああいうもののことはどう考えるのか。絵の具の塗りに性急さを見てそこから忘我=主体性の欠如を導きだすのも、画家本人の「忘我の道具」という名乗りに引っ張られすぎているように思える。ヒルマをスピリチュアル思想に導いたのが女性写真家だというのは面白い事実だった。
- gato@wonderword2025年4月20日読んでる美術展見たアーティゾン美術館の「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ展」と国立近代美術館の「ヒルマ・アフ・クリント展」をハシゴ。 テキスタイルデザインから出発したゾフィーと、霊的な天啓を得て視たヴィジョンを描いたヒルマ。世代はズレていてもほぼ同時代を生きて抽象画の世界を開拓した芸術家でありながら、受ける印象は全く違う。この二つの展覧会を続けて見たのはなかなかよかったと思う。 ヒルマに関してはあまりよく調べずに見に行ったら、絵を見て「この人めちゃくちゃ錬金術の研究してた人か?!」となり、シュタイナーに師事していたと最後にわかって超納得。特に今回は参考資料としてデジタル展示されている「花、コケ類、地衣類」というノートブックが本当に面白く、ノートの図版がたくさん見れるらしい "Notes and Methods" という洋書も気になっている。