普通の底

19件の記録
- n7se@RN_872025年9月10日読み終わった装丁がいけてたのと、タイトルと帯に惹かれて買ったやつ。買わなきゃ良かったと思うくらい、グロテスク。直接的なグロ表現ではないが、現代社会にはびこる潜在的な社会問題と悪意と、様々な要因で余裕を失い視野が狭くなると共に堕落していく精神に対する解像度があまりにも高く、ただ「普通」に生きたかった主人公に、どうすれば普通に生きれたのか教えてくれよ、普通に生活してたのに普通じゃいられなかったけど…と手紙を通じてずっと問いかけられている気がして苦しかった。三通の手紙だけで進む物語形式が面白かった。耐性がある人にはオススメ。
- yayano@yaya72025年8月30日読み終わった図書館本どこにでもいそうなのに、この違和感をおぼえる浮世離れした感じの人は身近にはいないなと思えた。子どもの時からこんなに処世術を考えてこれたなら、きっといくつかの決定的な分岐点でも「普通でい続ける」選択をできたはずなのに。相手になめられてはいけない、弱みを見せてはいけない、そのような無意識の優越感が、曇りをもたらすのだろうか。小説がめちゃめちゃリアルだからこそ、自分との違いを見つけたくて仕方なかった。
- yomitaos@chsy71882025年6月9日読み終わった@ 自宅凶悪犯罪が起こると、犯人がいかに人外的な思想を持つ悪人であるかが強調され、我々「普通の人」とは別の世界に住む異界の生物であることが語られる。 それは「普通の人」である我々は、けっしてそうはならないから安心だよね、というメッセージングでもある。分断してしまうことで、逆に安心してしまう、そんなエンタメをメディアは提供してくれる。 凶悪犯だからそこには明確な悪意や思想・怨恨があるだろう。そんな物語を、我々「普通の人」は求めてしまう。なぜなら、我々にはそんな物語がないのだから、凶悪犯にはなり得ないと思えるから。 この本で語られる川辺優人という人物の物語は、有り体に言って普通である。2025年という時代から見ると、どちらかと言えば恵まれた人生を送っている。たしかに主体性がなく、選ぶべきでない選択をなし崩しに選んでしまっている面はあるが、それほど珍しいというわけでもない、この希望のない時代に合った人間だと思う。 彼自身が独白しているとおり、その言葉はとても薄っぺらい。恨みも厭世観も、怒りも哀しみも、すべてが薄っぺらい。しかし、意図せず罪を犯してしまう人間は、大抵こんな薄っぺらい理由で道を踏み外してしまうのではないか。きっと自分が罪を犯してしまうときも、こんな薄っぺらい理由なんだろう。読後しばらく、暗澹たる気持ちになった。
- 高橋|往来堂書店@frog_goes_home2025年5月10日読み終わったそれが生き残るための第一条件だと信じ込んで「普通であること」を追い続けたある青年の手記。そうなっているから、周りもそうだから、というだけでいとも容易く剥がされてしまう倫理、その暴走の果てに──。うまくやっていると思っているときすでに、底への転落は始まっているのかもしれない。
- yt@yt2025年4月26日読み終わった人間に失格なんてない。 ただ普通になりたかっただけなのに。 普通なんてなかった。 薄っぺらいとしか表現できない今を、小説に証言させている。 親ガチャも、中受も、トー横も、闇バイトも。 ラストの覚書も上手いとしか言いようがない。