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どんなプロの書評より皆様の感想が沁みます。 ただ眺めているだけで読みたい本が溜まっていくの、誰が責任とってくれるんやー
  • 2026年6月14日
    責任の生成
    責任の生成
    「とても不思議なことですが、一度免責することによって、最終的にきちんと引責できるようになるのです」(p43) 責任とは何なのか、どうやって生じるのか。 責任を取るという行為に人間性のヒントがありそうだ。 「本当は「意志」があったから責任が問われているのではないのです。責任を問うべきだと思われるケースにおいて、意志の概念によって主体に行為が帰属させられているのです」(p116) 過去を切断する意志よりも、過去と丁寧に向き合う覚悟から考える必要がある。 「鮮明な過去を生き続けている、つまり記憶が強力な存在感を放ち続けるような日々を送っていたり、過去の習慣を捨てて新しいものに適応していくのが苦手な傾向を持つ自閉スペクトラム症という一群の人々は、かつてのフォーディズム体制下では理想の労働者だったけれど、ポストフォーディズム社会においては次々に障害者のラベルを貼られているのではないか」(p306-307) 変化する社会環境で人間性を保てるのか自信がない。 読んでますます分からなくなってくるという、素晴らしい体験でした。 「いったい、世の中で「責任」とよばれている「あれ」は、なんでしょうか」(p402)
  • 2026年6月11日
    ヘンゼルとグレーテル
    ヘンゼルとグレーテル
    「だったら、あんた、かんおけ用の木を集めないとね!」(序盤) スティーブン・キングによる再解釈に心をきざまれる。 「魔女は焼けるよ」(中盤) 穂村弘の訳、モーリス・センダックの絵も見てのとおりで、心をえぐられる。 「男の子はたからもののことであたまがいっぱいだけど、女の子は人生においてほんとうに大切なことを考えるのよ」(終盤) 魔女より怖いものがありつつも、人間の強さがあった。
  • 2026年6月8日
    こうやって作家は言葉を紡ぐ
    「この書き手は信用できると思いました」(p71) 作家と読者が互いの立場を入れ替えながら作品を読む対談集。 課題図書が設定されたりもして、具体的なのがいい。 対談相手も最高の布陣で、500ページにわたって創作の秘技が語られます。 「でも、そもそも書くからには何かを刺したい、という気持ちは当然ある」(p150) 遠くまで飛ぶとか、自分の実力を超えるとか、文学が何を達成できるのか。 「たくさんのプロット的なものをレイヤーのように重ね、それを設計図に乗せるというのが僕の小説の書き方なんです」(p298) 生成AIの時代にも書き手は残ることがわかった。 「すべての人に受け入れられる必要はないけれど、商品として並ぶ以上は他の作家とは違う設定がいる」(p361-362) 作家はみんな苦労してました。
  • 2026年6月6日
    キックス
    キックス
    「贋作を真作に変える。愛をとりもどすのだ」(p54) 真作とは、贋作とは何か。 戦時の戦闘機が滋賀の大空を舞う奇術。 まさかこんな所まで連れていかれるとは。 「これ以上滋賀にはいられない」(p256) キックスがここまでのものを証明できるとは。 本当に芸術になってきた。 成瀬の後に読めば高低差ありすぎて耳キーンとなります。 ドンキでテキーラを買わねばなるまい。
    キックス
  • 2026年6月3日
    GOAT Summer 2026
    GOAT Summer 2026
    もはや説明不要の510円、しおり付き! 背表紙のデザインにも変化が・・・ にんじんで作った紙質とデザインが美しい尾崎世界観から行きます。
    GOAT Summer 2026
  • 2026年5月30日
    3934km 国境を越えて
    3934km 国境を越えて
    「マラの事件のあと、あたしを待っていたのは孤児院、酸っぱい匂いのする神父たち、サン・サルバドルの繁った木、国境、川、メキシコという巨大な墓地、野獣列車ラ・ベスティア、そしてその先にある壁だった」(p24) 不法に国境を越えて歩き続ける、途方もない道のりがつらい。 仲間がいて本当に良かった。 突如はさまれる挿絵もいい。 「果たされることのないその誓いから、あたしの青春ははじまったんだと思う」(p141) 抑圧された人たちばかりで、そうじゃない人は非人間的。 これじゃあ洗濯機以下なのは自明だが、この状況でも希望的に描けるのすごい。 日が暮れるまであと少し。
    3934km 国境を越えて
  • 2026年5月28日
    天皇への敗北
    天皇への敗北
    「戦後日本の憲法学者たちには、単に憲法の専門家である以上の任務が課されていたことになる」(p17) 憲法論ではなく憲法学論、それは文学と反応する。 敗北としているけど、これこそが象徴としての機能なんじゃないかと思えた。 天皇制、結構いいじゃないか。 「ただ、あの時の罪悪感のようなもの、自分の頭で考えずに時代の雰囲気に乗っかっていたということへの後悔が、三〇年経った今でも僕の中にあります」(p108) 個人としてしっかり主権を形成するなんて、西洋でやればいい。 責任と責任感の関係はもうしばらく考える。 「戦争加害の最高責任者に対する追及が然るべき仕方でなされてこそ、温存されてきた日本国民の被害者意識もまた白日の下に晒されることになろう」(p216) 加藤典洋から信田さよ子へ。 30年来のけじめをしっかりつけ、まだ考え続ける著者は偉い。
  • 2026年5月27日
    階級と「私たち」のゆくえ
    「「上昇」の単純な物語こそが、現在苛烈になりつつある階級の分化と貧困の問題の遠因になっている」(p72) 多数の映画から階級について考える。 日本では階級は上げられなくとも格差は軽減できるのか。 メリトクラシーを考えなければならない。 「そしてなんといっても私たちにとっての困難は、現在の新自由主義的成長物語が、労働者階級であれなんであれ、階級コミュニティを背景にするものではなく、徹底的に個人化されてしまっていることだろう」(p105) 家族が贅沢品となってしまっているし、女同士を分断する家父長制も残っている。 インターセクショナルな連帯ができるのか。 事例は積み上がっている。
  • 2026年5月24日
    椎名林檎論 乱調の音楽
    「彼女の20年以上に及ぶ長い活動と影響を考えれば、私たちは椎名林檎の音楽を捉え損なってきたというほかない」(p11) 捉え損なってました。 ちょっと考えられないくらい真摯で偉大な表現者でした。 「刹那に囚われた痛みの体現者としての初期の椎名林檎は、もはやここには存在していない」(p205) もはや事変と名指すしかない大きな変動もあり、それがOSCAのような楽曲にも表象されていた。 そして今も走り続けていてくれることは端的に嬉しい。 「調和が乱れる瞬間にこそ、彼女の実存が宿っているのだ」(p379) 困難な音楽批評をする上で「君の再生装置で蘇らせてくれ」は、著者からのメッセージとも感じられました。 ピザ屋の彼女になってみたい。
    椎名林檎論 乱調の音楽
  • 2026年5月22日
    スピッツ論  「分裂」するポップ・ミュージック
    「ポップ・ミュージックは、取るに足らないおもちゃのように感じることもあれば、人間の生死を左右する重大なものに感じることもある」(p6) 何かが音楽で表現されている、それを読み解くという難題。 「彼らの楽曲から感受される絶望は、社会全体が抱えていた絶望でもあった」(p42) こんなにも気持ちのいい絶望があったとは。 これが分裂か。 「ここでスピッツが示しているのは、安易に記号にしてしまえば陳腐になる、抽象的かつ曖昧に描かれがちな罪や絶望を、具体的かつ繊細に響かせる音楽の作用だ」(p180) もうこれ以上進めなくても、愛のことばは聴かざるを得ない。 君が思い出になる前に。 「それ以上に、ポップ・ミュージックにできることなど、果たしてあるのだろうか」(p268) 批評のセオリーを超えた表現。 スピッツは最高だし、私は最高だと言ってしまえる著者も最高だ。
  • 2026年5月20日
    彼女のカロート
    彼女のカロート
    「にしてもお墓って、なんなんでしょうね」(p37) 聴こえないことを証明する無意味さ。 「持ち帰って来たクッキーの詰め合わせこそがその証拠だと彼は途中で気がついた」(p39) わたしの声は本当に相手に届いているのか。 そもそも届くってどういう状態だ。 「どこから来ているのかさえわかれば怖いものなんてないのです」(p84) (彼女のカロート) 「指から勝手に言葉が生えてくる、意味が生えてくる、その感覚について彼はあまりにも無防備であった」(p123) 見えないことを証明する無意味さ。 仮想的に見えていることにすれば、それは見えていることと同じだ。 「撤退こそが攻めの姿勢であると祖先からの遺伝子に定義づけられているからで、だから明後日の方へ向きながら、こちらを注視しているというのは、強者のせせら笑いに満ちた侮蔑でしかないというわけだ」(p198) 難読症が体験できるような、自分が理解した意味がどこかへ持っていかれるような、得がたい読書体験ができました。 (宦官への授業)
  • 2026年5月17日
    1R1分34秒
    1R1分34秒
    「いつもアドレナリンがフルスロットルだからぼくたちには真実がよくわからないんだ」(p78-79) 対戦相手と仮想的な友人になって、関係をつくり、殴る。 「一秒長くボクサーでいられるなら一生を捧げても構わない、そんな毎秒がつみ重なって命が矛盾するんだ」(p102) 勝っても負けても増幅する何かがあるということ。 ボクサーじゃなくても増幅する何かがあるということ。 この何かは文学でしか表現できない。
  • 2026年5月14日
    華氏451度〔新訳版〕
    華氏451度〔新訳版〕
    「うわさで聞いたぞ、世界じゅうが飢えているのに、ぼくらはたらふく食ってるって。世界じゅうが必死に働いてるのに、ぼくらは遊んでるって、ほんとうなのか? だからぼくらはこんなに憎まれてるのか?」(p123) 事実よりも、事実の意味を。 平和は詩でつくられる、詩は愚かだ、だから燃やしてしまおうという論理。 「ぼくらは、しあわせになるために必要なものはぜんぶ持っているのに、しあわせではない。なにかが足りないんです」(p138) 反転される焼却行為に、人文学の未来を感じた。 「火が、奪うだけではなく与えることもできるとは、これまで考えたこともなかった」(p242) 本を表紙で判断しないことにしよう。
  • 2026年5月13日
    泡の子
    泡の子
    「久しぶり、私、あと世界。と、その裏にわずかな失望」(p11) 慈悲なんてないから、優しくできることもあるはず。 「なんだか初めて本当に笑えた気がするのに、長くは続かないのが名残惜しかった」(p82) 先がないからオーバードーズするんだ。 先をつくるしかない。
  • 2026年5月10日
    斜め45度の処世術
    「つまり、説明のうまさやユーモアのセンスは「相手のことをどれだけ知っているか」という能力に強く依存していると思う」(p32) 顔の見えない読者によくぞここまでの説明とユーモアを。 「相手の実力を疑う前に、まずは自分の実力を疑うこと」(p41) 豊富なエピソードで自分のことも見つめ直せました。 些細な事柄にも人間の尊厳を考えれば、みんな普通の小川少年だ。 「最後にはあんまり売れない本が出来上がる」(p137) 聖人君子でない者として、矜持を持っていきたい。 感謝人狼は発明でした。
  • 2026年5月9日
    ノスタルジア
    ノスタルジア
    「好きになってはいけない、と頭の隅で誰がが叫んでいた」(p67) 不穏な静寂に目が離せない。 「静かな絶望の中では、期待も恐怖も曖昧に拡散して、傷つくことさえも長続きしない」(p98) 距離感が読めない、後味が悪い、不器用な人たちの関係性。 分岐はどこにでもあるけど、知覚するのは難しい。 「帰る場所があるからこそ、心揺さぶられるような挑戦も経験もできる。家とは、本来、世界に対する安心感を思い出させる場所なのだ」(p187) 生きづらい人それぞれが、なんとか居場所を模索する。 何があっても生きていける、どんな分岐にも耐えられるように覚えておく。
  • 2026年5月8日
    山脇百合子の仕事部屋 ごちゃごちゃから見えるもの
    山脇百合子の仕事部屋 ごちゃごちゃから見えるもの
    山脇百合子80年の創作集。 17才で描いた初期いやいやえんの挿絵もみれます。 世代問わず、みんなこれで育ったよね。 しかし家族や友人のために作った膨大な作品群があるとは。 ぐりとぐらはほんの一部でしかない。 ↓写真はオリジナル着せ替え人形
    山脇百合子の仕事部屋 ごちゃごちゃから見えるもの
  • 2026年5月7日
    海を吸う/庭に接ぐ
    「真っ暗闇は、皮膚に触られた途端、弱い吸盤になって絡みつき、離さない、と必死に引き込む」(p9) 目を閉じて身体に向き合い続けるとこういう文章が生まれるのだろうか。 「望まれたようには生きられない」(p12) 母と娘の関係性はどういうものか考えたい。 筒の残酷性は確かにある。 (海を吸う) 「父の体が庭の奥へと入って、入っていく」(p44) 庭の話だが、あの庭の話ではない。 あちらは都市生活の中に庭をつくり、こちらは森へ庭で対抗する。 「都合が悪いとすぐ黙るのね、どいつもこいつも」(p93) 「柔らかな葉に包まれて、どんなことでも、できそうだった」(p102) 父と娘の関係性はどういうものか考えたい。 精神的な囲い込みのようなもの。 「途方なく広がりつづける枝木に絶望しても、何もかもが離れていく恐怖に苛まれても、手のつけられない現実に押し潰されたとしても、あの枝のように、あなたに寄り添い続ける枝があることを、そうしてそれがあなたにとっては私であるということを、もっとはっきりとした言葉で、過去で、今で、未来で、あなたに見せたいと、そう願った」(p117) 読後はいつまでも悪夢が覚めない。 (庭に接ぐ)
  • 2026年5月6日
    子どもを描く 林明子の世界
    林明子50年の仕事集。 「子どもたちと過ごす楽しい準備期間が終わると、毎回地獄のような下描きがはじまります」(p157) 取材して、観察して、試行錯誤しながら描いて、あの素晴らしい世界ができていた。 ファン必読、思い出がよみがえりました。 ぎゅうにゅう くださあい!
    子どもを描く 林明子の世界
  • 2026年5月4日
    謎ときサリンジャー
    謎ときサリンジャー
    「主な手がかりは、反復される死の予告、正体があいまいな死体、そして俳句ーーーーである」(p6) サリンジャーが難しいのには理由があった。 「サリンジャーは、私たちが当たり前のものとして受け入れている論理さえも疑ってみなければならない世界へと、読者を誘っているようなのである」(p49) 義足、拍手、落下、入れ替わり。 あとは小説に明示された手がかりをつなげていくだけだ。 サリンジャーも、読み解く著者も凄すぎる。 「もはや生き残った者と死んだ者の区別は意味をなさない」(p246) 割れたレコードのかけらが引き出しに大事にしまってある、そう想像するだけでいい。
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