

yt
@yt
どんなプロの書評より皆様の感想が沁みます。
ただ眺めているだけで読みたい本が溜まっていくの、誰が責任とってくれるんやー
- 2026年5月24日
椎名林檎論 乱調の音楽北村匡平読み終わった「彼女の20年以上に及ぶ長い活動と影響を考えれば、私たちは椎名林檎の音楽を捉え損なってきたというほかない」(p11) 捉え損なってました。 ちょっと考えられないくらい真摯で偉大な表現者でした。 「刹那に囚われた痛みの体現者としての初期の椎名林檎は、もはやここには存在していない」(p205) もはや事変と名指すしかない大きな変動もあり、それがOSCAのような楽曲にも表象されていた。 そして今も走り続けていてくれることは端的に嬉しい。 「調和が乱れる瞬間にこそ、彼女の実存が宿っているのだ」(p379) 困難な音楽批評をする上で「君の再生装置で蘇らせてくれ」は、著者からのメッセージとも感じられました。 ピザ屋の彼女になってみたい。
- 2026年5月22日
読み終わった「ポップ・ミュージックは、取るに足らないおもちゃのように感じることもあれば、人間の生死を左右する重大なものに感じることもある」(p6) 何かが音楽で表現されている、それを読み解くという難題。 「彼らの楽曲から感受される絶望は、社会全体が抱えていた絶望でもあった」(p42) こんなにも気持ちのいい絶望があったとは。 これが分裂か。 「ここでスピッツが示しているのは、安易に記号にしてしまえば陳腐になる、抽象的かつ曖昧に描かれがちな罪や絶望を、具体的かつ繊細に響かせる音楽の作用だ」(p180) もうこれ以上進めなくても、愛のことばは聴かざるを得ない。 君が思い出になる前に。 「それ以上に、ポップ・ミュージックにできることなど、果たしてあるのだろうか」(p268) 批評のセオリーを超えた表現。 スピッツは最高だし、私は最高だと言ってしまえる著者も最高だ。 - 2026年5月20日
彼女のカロート荻世いをら読み終わった「にしてもお墓って、なんなんでしょうね」(p37) 聴こえないことを証明する無意味さ。 「持ち帰って来たクッキーの詰め合わせこそがその証拠だと彼は途中で気がついた」(p39) わたしの声は本当に相手に届いているのか。 そもそも届くってどういう状態だ。 「どこから来ているのかさえわかれば怖いものなんてないのです」(p84) (彼女のカロート) 「指から勝手に言葉が生えてくる、意味が生えてくる、その感覚について彼はあまりにも無防備であった」(p123) 見えないことを証明する無意味さ。 仮想的に見えていることにすれば、それは見えていることと同じだ。 「撤退こそが攻めの姿勢であると祖先からの遺伝子に定義づけられているからで、だから明後日の方へ向きながら、こちらを注視しているというのは、強者のせせら笑いに満ちた侮蔑でしかないというわけだ」(p198) 難読症が体験できるような、自分が理解した意味がどこかへ持っていかれるような、得がたい読書体験ができました。 (宦官への授業) - 2026年5月17日
1R1分34秒町屋良平読み終わった「いつもアドレナリンがフルスロットルだからぼくたちには真実がよくわからないんだ」(p78-79) 対戦相手と仮想的な友人になって、関係をつくり、殴る。 「一秒長くボクサーでいられるなら一生を捧げても構わない、そんな毎秒がつみ重なって命が矛盾するんだ」(p102) 勝っても負けても増幅する何かがあるということ。 ボクサーじゃなくても増幅する何かがあるということ。 この何かは文学でしか表現できない。 - 2026年5月14日
華氏451度〔新訳版〕レイ・ブラッドベリ,伊藤典夫,小野田和子読み終わった「うわさで聞いたぞ、世界じゅうが飢えているのに、ぼくらはたらふく食ってるって。世界じゅうが必死に働いてるのに、ぼくらは遊んでるって、ほんとうなのか? だからぼくらはこんなに憎まれてるのか?」(p123) 事実よりも、事実の意味を。 平和は詩でつくられる、詩は愚かだ、だから燃やしてしまおうという論理。 「ぼくらは、しあわせになるために必要なものはぜんぶ持っているのに、しあわせではない。なにかが足りないんです」(p138) 反転される焼却行為に、人文学の未来を感じた。 「火が、奪うだけではなく与えることもできるとは、これまで考えたこともなかった」(p242) 本を表紙で判断しないことにしよう。 - 2026年5月13日
泡の子樋口六華読み終わった「久しぶり、私、あと世界。と、その裏にわずかな失望」(p11) 慈悲なんてないから、優しくできることもあるはず。 「なんだか初めて本当に笑えた気がするのに、長くは続かないのが名残惜しかった」(p82) 先がないからオーバードーズするんだ。 先をつくるしかない。 - 2026年5月10日
斜め45度の処世術小川哲読み終わった「つまり、説明のうまさやユーモアのセンスは「相手のことをどれだけ知っているか」という能力に強く依存していると思う」(p32) 顔の見えない読者によくぞここまでの説明とユーモアを。 「相手の実力を疑う前に、まずは自分の実力を疑うこと」(p41) 豊富なエピソードで自分のことも見つめ直せました。 些細な事柄にも人間の尊厳を考えれば、みんな普通の小川少年だ。 「最後にはあんまり売れない本が出来上がる」(p137) 聖人君子でない者として、矜持を持っていきたい。 感謝人狼は発明でした。 - 2026年5月9日
ノスタルジア島本理生読み終わった「好きになってはいけない、と頭の隅で誰がが叫んでいた」(p67) 不穏な静寂に目が離せない。 「静かな絶望の中では、期待も恐怖も曖昧に拡散して、傷つくことさえも長続きしない」(p98) 距離感が読めない、後味が悪い、不器用な人たちの関係性。 分岐はどこにでもあるけど、知覚するのは難しい。 「帰る場所があるからこそ、心揺さぶられるような挑戦も経験もできる。家とは、本来、世界に対する安心感を思い出させる場所なのだ」(p187) 生きづらい人それぞれが、なんとか居場所を模索する。 何があっても生きていける、どんな分岐にも耐えられるように覚えておく。 - 2026年5月8日
山脇百合子の仕事部屋 ごちゃごちゃから見えるものスタジオジブリ,三鷹の森ジブリ美術館,山脇百合子読み終わった山脇百合子80年の創作集。 17才で描いた初期いやいやえんの挿絵もみれます。 世代問わず、みんなこれで育ったよね。 しかし家族や友人のために作った膨大な作品群があるとは。 ぐりとぐらはほんの一部でしかない。 ↓写真はオリジナル着せ替え人形
- 2026年5月7日
海を吸う/庭に接ぐ才谷景読み終わった「真っ暗闇は、皮膚に触られた途端、弱い吸盤になって絡みつき、離さない、と必死に引き込む」(p9) 目を閉じて身体に向き合い続けるとこういう文章が生まれるのだろうか。 「望まれたようには生きられない」(p12) 母と娘の関係性はどういうものか考えたい。 筒の残酷性は確かにある。 (海を吸う) 「父の体が庭の奥へと入って、入っていく」(p44) 庭の話だが、あの庭の話ではない。 あちらは都市生活の中に庭をつくり、こちらは森へ庭で対抗する。 「都合が悪いとすぐ黙るのね、どいつもこいつも」(p93) 「柔らかな葉に包まれて、どんなことでも、できそうだった」(p102) 父と娘の関係性はどういうものか考えたい。 精神的な囲い込みのようなもの。 「途方なく広がりつづける枝木に絶望しても、何もかもが離れていく恐怖に苛まれても、手のつけられない現実に押し潰されたとしても、あの枝のように、あなたに寄り添い続ける枝があることを、そうしてそれがあなたにとっては私であるということを、もっとはっきりとした言葉で、過去で、今で、未来で、あなたに見せたいと、そう願った」(p117) 読後はいつまでも悪夢が覚めない。 (庭に接ぐ) - 2026年5月6日
子どもを描く 林明子の世界福音館書店編集部読み終わった林明子50年の仕事集。 「子どもたちと過ごす楽しい準備期間が終わると、毎回地獄のような下描きがはじまります」(p157) 取材して、観察して、試行錯誤しながら描いて、あの素晴らしい世界ができていた。 ファン必読、思い出がよみがえりました。 ぎゅうにゅう くださあい!
- 2026年5月4日
謎ときサリンジャー朴舜起,竹内康浩読み終わった「主な手がかりは、反復される死の予告、正体があいまいな死体、そして俳句ーーーーである」(p6) サリンジャーが難しいのには理由があった。 「サリンジャーは、私たちが当たり前のものとして受け入れている論理さえも疑ってみなければならない世界へと、読者を誘っているようなのである」(p49) 義足、拍手、落下、入れ替わり。 あとは小説に明示された手がかりをつなげていくだけだ。 サリンジャーも、読み解く著者も凄すぎる。 「もはや生き残った者と死んだ者の区別は意味をなさない」(p246) 割れたレコードのかけらが引き出しに大事にしまってある、そう想像するだけでいい。 - 2026年4月29日
悪が勝つのか?井上達夫読み終わった「独裁者がそれで面子を保ってこの戦争を止めてくれるならそれでいいと、お互いに目配せしあいながら」(p74) ウクライナ戦争をどうすれば終わらせられるか。 冷蔵庫では戦えない、すなわちロシア国民が戦争を止められるとは思えなかった。 「ガザ住民を人間の盾にした上で、この人間の盾を破壊する報復へとイスラエルをけしかけた点で、ハマースはイスラエルと同等の非難に値する」(p135) ガザ問題については複雑すぎて、もうどうすれば良いのかわからない。 勇気を持って忘却の限りを尽くす、ことができる日に期待したいし、できるはず。 いくら非難されようとも楽観的でありたい。 - 2026年4月25日
イン・ザ・メガチャーチ朝井リョウ読み終わった「今どきアイドルグループなんて全員地獄の積み文化だよ再生する機器もないのに何十枚とCD買わされてんだよ胸糞悪い」(p66) 信徒獲得、教義の布教。 研ぎ澄まされた運営が搾取しているのだが、運営も人間だ。 「実際に手を動かして何かを生み出せるわけではないのに、実際に手を動かす人たちに指示だけ出して、高い給料や数段手厚い福利厚生の恩恵を受けている人」(p209-210) なんで労働の値付けはこんなにも間違ってるんだ、もっとうまくできるはず。 「何を信じるかによって、街の景色は変わる」(p344) 視野を拡げるべきか、狭めるべきか。 これが令和です。 - 2026年4月21日
- 2026年4月18日
私たちはどこにいるのか?ジョルジョ・アガンベン,高桑和巳読み終わった「一つの疾病を前にして、国がまるごと、それと気付かぬまま倫理的・政治的に崩壊するなどということがどのようにして起こりえたのか?」(p79-80) コロナ真っ只中の論考集。 イタリアは被害が大きかったこともあり、アガンベンはかなり批判されたようだ。 「イタリアの大新聞各紙は私の意見を掲載することを端的に拒否しています」(p95) 例外状態がいかに危機的だったかは伝わってくるものの、当事者に届く言葉はいまだ見つからない。 健康が権利から義務へ。 伊藤計劃「ハーモニー」の世界じゃないか。 Readsのダークモード対応、ありがとうございます。 - 2026年4月15日
明日、あたらしい歌をうたう角田光代読み終わった「父親のことを母に直接訊けなかったのは、自分でもうすうす、何か事実があるに違いないと気づいていたからなんじゃないかという納得の気持ちだった」(p23) 過去の偉大な楽曲がネットで全部聴ける時代に、何を新しくうたう必要があるのか。 「教えてもらったのにね、やっちゃったよ私」(p108) これでいいんだと思った。 やっちゃっても前には進んでる。 「ラブソングはたくさんうたえるようになったけど、本当には何も知らない」(p122) 音楽は無くならないんだなと思った。 Yeah!って言えー! - 2026年4月14日
奇譚ルームはやみねかおる読み終わった「いったい、だれがマーダラーなんだ」(p32 下の写真) 仮想空間「ルーム」で起こる連続殺人。 そして誰もいなくなるか!? 「死んだ石井の大群」よりも、こっちが先です。
- 2026年4月12日
原子力時代における哲学國分功一郎読み終わった「ハイデッガーを検証するとは我々自身を検証することなのです」(p166) 「放下」を読みながら原子力について著者と一緒に考える講義録。 「原子力の持つ悪魔的魅力というものは、人間が母親のお腹のなかにいたころに抱く万能感と結びついているのではないかと思うのです」(p203-204) 精神分析をヒントに、全能感への欲望を分析する。 「あるプロセスを経て、ゆっくり時間をかけなければ我々は真理に到達できない。だから待つことが重要なのだが、「待つことが重要です」と書いたところで、人は待つことがどういうことか分かりはしない。待つとは何かを知るためには実際に待たなければならない」(p228) 実践を伴ったものだけが哲学だ。 - 2026年4月8日
平和と愚かさ東浩紀読み終わった「ぼくたちはいま、あまりにも政治について語りすぎている。そしてそのせいでどんどん平和から遠ざかっている」(p10) 考えないことを考えた。 「平和が成立するためには、それを支える裏方が必要なのだ」(p104-105) こんなにも力強く私たちの日常が肯定される言葉はない。 「平和は詩でつくられる。詩は愚かだ。暴力的でもある。しかしその愚かさを失ってしまえば、ぼくたちは結局のところ永遠の戦いに閉じ込められるだけだろう。心の傷は、賢さではけっして癒されないからである」(p159) 考えないこと、忘れることが人間の武器になりそうだ。 「悪の愚かさについて、それはすなわち、悪における超自我の欠如の意味についてということなのだ」(p278) 「二〇世紀の哲学は、このような虐殺についてほとんど考えていない」(p395) 旧ユーゴもウクライナも、中国もルワンダもベトナムも。 観光客の視点だから私にも哲学できるということを教えてくれました。 「そして皇居でも爆心地でも政治的な判断が停止する」(p491) 最後は広島で終わる。 すごいものを読んでしまった。 これをたまに読み返すという生涯になりそうだ。
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