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どんなプロの書評より皆様の感想が沁みます。 ただ眺めているだけで読みたい本が溜まっていくの、誰が責任とってくれるんやー
  • 2026年7月10日
    世界99 下
    世界99 下
    「なんて理想的で、クリーンで、美しく優しい世界なのだろう」(p36) 性欲を捨てたら私たちの関係性はどう変化するのかという、ポーの一族的な思考実験。 「人間の体の中には、孤独が浮かんでいる。それはコントローラーに似ていて、それを掴むのに成功すると、目の前の人間をある程度操作できる」(p164) 見張られる子宮でも人類を維持するべきなのか、答えられない。 正しく怒り続けるのは本当に疲れるので、もう誰も差別や戦争に関心がなくなってくる。 正しさをつらぬくことが人の負担になるとき。 「未来がないと世界が明るい」(p332) ずいぶんと遠くまで連れてきてもらえました。
  • 2026年7月10日
    世界99 上
    世界99 上
    「私が捨てようと努力している未来は、母が生きてきた地獄でもあった」(p231) 誰かを使わないと、誰かに使われる道具になる、差別が日常的な世界。 これが普通に今の状況として描けている。 「世界は分裂したまま、同時進行していて、どの世界でどんな情報や言葉、感覚が注がれるかで違う私になる」(p300) 安全な場所から不幸を楽しむ感動ポルノ。 もう世界はディストピアなんだと教えてもらった。 分裂した世界は統合されるのか。 「孤独ほど抗えないエネルギーはない」(p426) 静かな狂気のまま下巻へ。
  • 2026年7月5日
    夏帆
    夏帆
    「病んでいる人間の目から見れば、より病んでいるのはむしろ世界の方だ」(p20) 中流幻想の中でまさかの闇バイト。 説明するのはとてもむずかしい、いつだってとても長い話になる。 慈悲も偏見も予断も許されない勝負どきが誰にでもある。 「よくよく考えればわかるはずだよ。あるいはもう既にわかっているはずだよ。そうと気がつかないだけで」(p197) 絵本の中の空想と、空想的な現実が不可分になった状態がこの世界の見え方だ。 過去と未来も、原因と結果も混ざり合って眼前にあった。 あと何冊読めるのか。 あと何冊でも読める。
  • 2026年7月2日
    いい音がする文章
    「意味だけを追い求めて論理化すればするほどに、言葉の本来持つ輝きが失われてしまうということだ」(p83) ずっと音楽の話だった。 著者の音楽的経験が鳴り止まない、うらやましい。 「誰とも共感せず、書きためた詩をそっと机の中にしまう勇気をもて」(p154) ずっと人生の話だった。 人生経験はみんな平等にあるから、よくよく伝わってくる。 「でも、忙しいときほど、言葉が湧き上がってきて暇なときほど何も出てこない、あれ何だろう」(p209) 文章ってとても変なものだと思えた。
  • 2026年6月29日
    多類婚姻譚
    多類婚姻譚
    同じ部署でも、みんなそれぞれしている恋愛は見えない。 「ただ好きな人と穏やかに平和に暮らしていければ充分で、そのことに対して仲間を裏切っているような罪悪感や自己嫌悪も感じている」(p63) 不満はないけど問題はあるという空気感。 形式の大切さと意味について考えた。 「わたしたちは、一体あといくつハードルを飛び越えなければならないのか」(p110) 時代は変わったのに婚姻制度は元のまま。 結婚は地獄なのか。 「将来、経済的に依存してきそうなパートナーって今の時代だと時限爆弾に等しいでしょ」(p206) 心だけじゃつながれないものを見せつけられた。
  • 2026年6月26日
    正欲
    正欲
    前期朝井リョウの到達点。 「繋がりそうなのに、直接的には繋がってくれない断片たち。それらはまるで、思わぬ形で星座として結ばれる前の星のように、ばらばらな位置に顔を出している」(p102) 分断された社会なんだから無理解が進むのは必然。 みんな不安なんだ。 「既に言葉にされている、誰かに名付けられている苦しみがこの世界の全てだと思っているそのおめでたい考え方が羨ましいと」(p183) 名指されてすらいないマイノリティの苦しみ。 是枝裕和の「怪物」と同じように、モンスターなんていなかった。 自殺の方法を一度も調べたことのない人生だけど、嘘をつくことはまったく悪いことじゃないと確信できた。
  • 2026年6月23日
    ひとごと
    ひとごと
    「100パーセントの無知な男の子に出会う可能性は、そのまま平和の可能性かもしれない」 (p35) 批評のようなエッセイのような。 とにかく誰も考えてないことを教えてくれる、あまりにも文学的な何か。 「いま恋愛について語るということがどういうことなのかよくわからないという、無力感のようなものだと思う」(p134) わからないことはわからないと言おう。 現代美術もバラエティ番組も、どんどん語りを蓄積して、今を考えるヒントをくれる有難さよ。 「けれども創造をすべてその個人の立場表明に還元してしまうことは、われわれの世界をひどく貧しいものにしてしまうのではないか、と思うんです」(p264) 「眼がスク」のインタビューは前提知識も読解力もなさ過ぎて、全然わかりませんでした、修行します。
  • 2026年6月18日
    告白
    告白
    「というか俺はもう決まった人間だ。蛇なんて言うものはなんでもないんだ。かつて独楽を回せなくて泣いた日の青空が懐かしい」(p127) 分岐を過ぎてもう戻れない、あほんだら。 いや、引き返し不能地点なんてものは無く、いつだって戻れるのかもとか思いながら屁をこいたりしてた。 「ずぶずぶに落ち込んでいたのにもかかわらず。或いは、ずぶずぶに落ち込んでいたからこそ」(p350) 殺したかもしれない、いや殺してないのかも、どあほ。 こんなに怖いことはない。 どうしても死なんならんのんか。 「雨降る暗い夜よりもっと暗い闇が俺と世間の間にはさまったのだ」(p748) 言葉にならない告白だからこそ、小説でしか表現できないという、作家の確信がある。
  • 2026年6月14日
    責任の生成
    責任の生成
    「とても不思議なことですが、一度免責することによって、最終的にきちんと引責できるようになるのです」(p43) 責任とは何なのか、どうやって生じるのか。 責任を取るという行為に人間性のヒントがありそうだ。 「本当は「意志」があったから責任が問われているのではないのです。責任を問うべきだと思われるケースにおいて、意志の概念によって主体に行為が帰属させられているのです」(p116) 過去を切断する意志よりも、過去と丁寧に向き合う覚悟から考える必要がある。 「鮮明な過去を生き続けている、つまり記憶が強力な存在感を放ち続けるような日々を送っていたり、過去の習慣を捨てて新しいものに適応していくのが苦手な傾向を持つ自閉スペクトラム症という一群の人々は、かつてのフォーディズム体制下では理想の労働者だったけれど、ポストフォーディズム社会においては次々に障害者のラベルを貼られているのではないか」(p306-307) 変化する社会環境で人間性を保てるのか自信がない。 読んでますます分からなくなってくるという、素晴らしい体験でした。 「いったい、世の中で「責任」とよばれている「あれ」は、なんでしょうか」(p402)
  • 2026年6月11日
    ヘンゼルとグレーテル
    ヘンゼルとグレーテル
    「だったら、あんた、かんおけ用の木を集めないとね!」(序盤) スティーブン・キングによる再解釈に心をきざまれる。 「魔女は焼けるよ」(中盤) 穂村弘の訳、モーリス・センダックの絵も見てのとおりで、心をえぐられる。 「男の子はたからもののことであたまがいっぱいだけど、女の子は人生においてほんとうに大切なことを考えるのよ」(終盤) 魔女より怖いものがありつつも、人間の強さがあった。
  • 2026年6月8日
    こうやって作家は言葉を紡ぐ
    「この書き手は信用できると思いました」(p71) 作家と読者が互いの立場を入れ替えながら作品を読む対談集。 課題図書が設定されたりもして、具体的なのがいい。 対談相手も最高の布陣で、500ページにわたって創作の秘技が語られます。 「でも、そもそも書くからには何かを刺したい、という気持ちは当然ある」(p150) 遠くまで飛ぶとか、自分の実力を超えるとか、文学が何を達成できるのか。 「たくさんのプロット的なものをレイヤーのように重ね、それを設計図に乗せるというのが僕の小説の書き方なんです」(p298) 生成AIの時代にも書き手は残ることがわかった。 「すべての人に受け入れられる必要はないけれど、商品として並ぶ以上は他の作家とは違う設定がいる」(p361-362) 作家はみんな苦労してました。
  • 2026年6月6日
    キックス
    キックス
    「贋作を真作に変える。愛をとりもどすのだ」(p54) 真作とは、贋作とは何か。 戦時の戦闘機が滋賀の大空を舞う奇術。 まさかこんな所まで連れていかれるとは。 「これ以上滋賀にはいられない」(p256) キックスがここまでのものを証明できるとは。 本当に芸術になってきた。 成瀬の後に読めば高低差ありすぎて耳キーンとなります。 ドンキでテキーラを買わねばなるまい。
    キックス
  • 2026年6月3日
    GOAT Summer 2026
    GOAT Summer 2026
    もはや説明不要の510円、しおり付き! 背表紙のデザインにも変化が・・・ にんじんで作った紙質とデザインが美しい尾崎世界観から行きます。
    GOAT Summer 2026
  • 2026年5月30日
    3934km 国境を越えて
    3934km 国境を越えて
    「マラの事件のあと、あたしを待っていたのは孤児院、酸っぱい匂いのする神父たち、サン・サルバドルの繁った木、国境、川、メキシコという巨大な墓地、野獣列車ラ・ベスティア、そしてその先にある壁だった」(p24) 不法に国境を越えて歩き続ける、途方もない道のりがつらい。 仲間がいて本当に良かった。 突如はさまれる挿絵もいい。 「果たされることのないその誓いから、あたしの青春ははじまったんだと思う」(p141) 抑圧された人たちばかりで、そうじゃない人は非人間的。 これじゃあ洗濯機以下なのは自明だが、この状況でも希望的に描けるのすごい。 日が暮れるまであと少し。
    3934km 国境を越えて
  • 2026年5月28日
    天皇への敗北
    天皇への敗北
    「戦後日本の憲法学者たちには、単に憲法の専門家である以上の任務が課されていたことになる」(p17) 憲法論ではなく憲法学論、それは文学と反応する。 敗北としているけど、これこそが象徴としての機能なんじゃないかと思えた。 天皇制、結構いいじゃないか。 「ただ、あの時の罪悪感のようなもの、自分の頭で考えずに時代の雰囲気に乗っかっていたということへの後悔が、三〇年経った今でも僕の中にあります」(p108) 個人としてしっかり主権を形成するなんて、西洋でやればいい。 責任と責任感の関係はもうしばらく考える。 「戦争加害の最高責任者に対する追及が然るべき仕方でなされてこそ、温存されてきた日本国民の被害者意識もまた白日の下に晒されることになろう」(p216) 加藤典洋から信田さよ子へ。 30年来のけじめをしっかりつけ、まだ考え続ける著者は偉い。
  • 2026年5月27日
    階級と「私たち」のゆくえ
    「「上昇」の単純な物語こそが、現在苛烈になりつつある階級の分化と貧困の問題の遠因になっている」(p72) 多数の映画から階級について考える。 日本では階級は上げられなくとも格差は軽減できるのか。 メリトクラシーを考えなければならない。 「そしてなんといっても私たちにとっての困難は、現在の新自由主義的成長物語が、労働者階級であれなんであれ、階級コミュニティを背景にするものではなく、徹底的に個人化されてしまっていることだろう」(p105) 家族が贅沢品となってしまっているし、女同士を分断する家父長制も残っている。 インターセクショナルな連帯ができるのか。 事例は積み上がっている。
  • 2026年5月24日
    椎名林檎論 乱調の音楽
    「彼女の20年以上に及ぶ長い活動と影響を考えれば、私たちは椎名林檎の音楽を捉え損なってきたというほかない」(p11) 捉え損なってました。 ちょっと考えられないくらい真摯で偉大な表現者でした。 「刹那に囚われた痛みの体現者としての初期の椎名林檎は、もはやここには存在していない」(p205) もはや事変と名指すしかない大きな変動もあり、それがOSCAのような楽曲にも表象されていた。 そして今も走り続けていてくれることは端的に嬉しい。 「調和が乱れる瞬間にこそ、彼女の実存が宿っているのだ」(p379) 困難な音楽批評をする上で「君の再生装置で蘇らせてくれ」は、著者からのメッセージとも感じられました。 ピザ屋の彼女になってみたい。
    椎名林檎論 乱調の音楽
  • 2026年5月22日
    スピッツ論  「分裂」するポップ・ミュージック
    「ポップ・ミュージックは、取るに足らないおもちゃのように感じることもあれば、人間の生死を左右する重大なものに感じることもある」(p6) 何かが音楽で表現されている、それを読み解くという難題。 「彼らの楽曲から感受される絶望は、社会全体が抱えていた絶望でもあった」(p42) こんなにも気持ちのいい絶望があったとは。 これが分裂か。 「ここでスピッツが示しているのは、安易に記号にしてしまえば陳腐になる、抽象的かつ曖昧に描かれがちな罪や絶望を、具体的かつ繊細に響かせる音楽の作用だ」(p180) もうこれ以上進めなくても、愛のことばは聴かざるを得ない。 君が思い出になる前に。 「それ以上に、ポップ・ミュージックにできることなど、果たしてあるのだろうか」(p268) 批評のセオリーを超えた表現。 スピッツは最高だし、私は最高だと言ってしまえる著者も最高だ。
  • 2026年5月20日
    彼女のカロート
    彼女のカロート
    「にしてもお墓って、なんなんでしょうね」(p37) 聴こえないことを証明する無意味さ。 「持ち帰って来たクッキーの詰め合わせこそがその証拠だと彼は途中で気がついた」(p39) わたしの声は本当に相手に届いているのか。 そもそも届くってどういう状態だ。 「どこから来ているのかさえわかれば怖いものなんてないのです」(p84) (彼女のカロート) 「指から勝手に言葉が生えてくる、意味が生えてくる、その感覚について彼はあまりにも無防備であった」(p123) 見えないことを証明する無意味さ。 仮想的に見えていることにすれば、それは見えていることと同じだ。 「撤退こそが攻めの姿勢であると祖先からの遺伝子に定義づけられているからで、だから明後日の方へ向きながら、こちらを注視しているというのは、強者のせせら笑いに満ちた侮蔑でしかないというわけだ」(p198) 難読症が体験できるような、自分が理解した意味がどこかへ持っていかれるような、得がたい読書体験ができました。 (宦官への授業)
  • 2026年5月17日
    1R1分34秒
    1R1分34秒
    「いつもアドレナリンがフルスロットルだからぼくたちには真実がよくわからないんだ」(p78-79) 対戦相手と仮想的な友人になって、関係をつくり、殴る。 「一秒長くボクサーでいられるなら一生を捧げても構わない、そんな毎秒がつみ重なって命が矛盾するんだ」(p102) 勝っても負けても増幅する何かがあるということ。 ボクサーじゃなくても増幅する何かがあるということ。 この何かは文学でしか表現できない。
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