The Sentence

The Sentence
The Sentence
Louise Erdrich
Corsair
2023年1月5日
5件の記録
  • gato
    gato
    @wonderword
    2025年7月4日
    「憎むべき属性を持った愛すべき人たち」との付き合い方を、苦しみもがきながら模索した日々の物語だった。私は自分自身に大きな隠し事をして表面上はヘラヘラ生きてきた人が、そのわだかまりと向き合う瞬間の物語にグッときてしまうので、トーキーのことも最後に大好きになってしまった。 ネイティヴの人たちは自身のルーツに繋がる習慣や物語をとても大事にしている。それはアイデンティティを保証するものがあまりにも儚いことの裏返しでもある。「お前は"本物のインディアン"か?」と聞いてくる側が、土地を奪い彼らの痕跡を消してきたからだ。 そしてフローラも、形は違えどずっとアイデンティティの揺らぎのなかにいて、祖先や土地と繋がる方法を今も保持しているネイティヴの文化に憧れたのだろう。その属性と系譜にこだわり続けたせいで、フローラはたった一文の真実に殺されてしまった。でも、先祖とは関係なくフローラ自身が成し遂げたものがある。それはカテリとトーキーの人生に痕跡を残したのだ。その痕に気づくこと、その痕を直視することへのおそれが「幽霊」だった。
  • gato
    gato
    @wonderword
    2025年6月29日
    255pまで。 物語はついに2020年5月。白人警官によるジョージ・フロイドさん殺害事件直後のミネアポリスの様子が生々しく活写される。 獄中で10年過ごしたトーキーは警察署が襲われる映像を見て、思わずキッチンで転がりまわってしまうほどの喜びを感じる。警官のポルックスは手で顔を覆って項垂れる。抗議デモに参加しているヘッタは警察側の対応を巡ってポルックスと対立する。全員がネイティヴ・アメリカンの出身だが意見はバラバラ。緊張状態が続く。 チャラついたギャルからシングルマザーになって意識が変わり、新しい友人に感化されて抗議デモに参加するようになったヘッタみたいな冷笑的な揶揄の対象にもなりそうなキャラが、トーキーの目を通して共感的に描かれているところがいいなぁと思う。新生児を置いて抗議デモに参加しているのはヒヤヒヤするけど。
  • gato
    gato
    @wonderword
    2025年6月18日
    190pまで。ついに2020年2月がやってきて3月には本屋も休業を迫られるが、今のところトーキーにとっては幽霊のほうが大きい悩み。 コロナ禍中の本屋の日誌みたいな感じで、例えば橋本倫史の『東京の古本屋』と並べられるようなフィクションなのかなと最初は思っていたのだが、トーキーには幽霊とかシングルマザーになるかもしれない義理の姪とか自分の出生の謎とか、他にも考えることがてんこ盛り。フローラがトーキーの実の母、という展開だったらどうしよう。 トーキーがDissatisfactionとあだ名をつけたおじいちゃん客がお気に入り。この人が来るとトーキーが立板に水でおすすめ本をだしてくるので、読みたい本のリストが増えてしかたない。
  • gato
    gato
    @wonderword
    2025年6月13日
    なんかフィクションも読みたいな〜と思って併読しはじめちゃった。コロナ禍中の独立系書店に迷惑客の幽霊が居座る話、という情報だけで読み始めたら書きだしは獄中記だったので、ああこの人が迷惑客になるのか、と決めつけていたらそれはのちに書店員になる主人公だった。偏見。 前読んだエッセイの『Books and Islands in Ojibwe Country』と全然印象の違うポップでパンクな文体で楽しい。ルイーズ本人も本屋のオーナーとして登場したので、バーチバーク・ブックスなんだなここは。
  • gato
    gato
    @wonderword
    2025年6月13日
    これめっちゃ面白いかも〜! 今まだ80pくらいのさわりのところだけど、ジャネット・ウィンターソンの『Night Side of the River』(幽霊譚)とか、レベッカ・ソルニットの『A Field Guide to Getting Lost』(捕虜の物語・先住民)とか、そしてもちろん同著者の『Books and Islands』とか、今年読んだ他の本とつながる要素が散りばめられていてシナプスがうお〜っ!と動きだす。この、"正しい時に正しい本を読んでいる"という感覚(妄想)、本を読んでて一番気持ちいい瞬間のひとつかも。 本屋を舞台にしたポップでちょっと奇妙な日常もの、は正直食傷気味なほどあふれてるけど、そこにアメリカ先住民の視点が入ることで緊張感が生まれる。客とのやりとりとか、"理解ってる"顔で親しげに話しかけてくるマジョリティへの思いとかを読んでいると、自分の行いを省みて顔を覆いたくなったりもする。ネイティヴ・アメリカンの本を読んでいるとアイヌのこともっと勉強しなきゃなと思う。全然できてないけど。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved