ビニール傘

7件の記録
- amy@note_15812025年3月20日かつて読んだ感想ついに岸先生の小説にまで手を出しました。Podcast→「にがにが日記」→「ビニール傘」。 なんかずっと曇りで雨がしとしと降っていて、それを古いアパートから眺めている感じの小説だった。風景の湿度が高いというのか淀川が出てきたからそう思うのかもしれない。川の流れの音が聞こえているみたいだった 岸先生、大学のお仕事を始めるまで日雇いのお仕事をしていらっしゃったそうなのでそういう生活圏で生活史ている人たちの描き方がすごいリアリティがあって、その閉塞感に読んでて胸が苦しくなる 二作目の「背中の月」は生活の苦しさというよりも当たり前にいてくれた者(物)がいなくなってしまうことと、いつまで経ってもそれが自分に馴染まないことへの息苦しさや自分の内側に閉じこもってしまう感じがヒリヒリするぐらい痛切だった。でも1作目も2作目も閉塞感のなかに安全ピンの先端でちょっと穴を開けたような、かすかな風通しのよさもあって、読了後の余韻がよかった
- 村崎@mrskntk2025年3月8日読み終わった大阪で生活する男女の生活を切り取った小説二編。なにも得られないままずっと何かをうしない続けているようなわびしさ。大阪の町景色が黒白写真で何枚も本文中に差し込まれるので、短編映画を観ているような気分にもなる。 でも文章と人や景色との距離が近いから、写真がなくても情景が浮かびやすかった。散らかったままの部屋やコンビニ、排気ガスとかタバコの煙、さびしいものがついてまわってくるような自分自身の生活と、ときどき川や海の向こうが光るのをみつめる視線の交わりが読んでいて切なくなった。 人々がただ歩いたり立ち止まったりお店に入ったり笑ったり、笑ったことが過去になったり、そういうのが映像になったら私はたぶんすごく好きなんだけど、それって自分がいままさに送っている生活の一部で、どうしてそれを自分とは違う出来事のように錯覚するのか不思議だし、美化しそうになってそれはちょっと嫌。 まえに岸政彦さんの「はじめての沖縄」を読んだけど、やっぱりそれも風景や人々の暮らしを描いていて、でも美化はしていなくて、事実を見たまま描く/伝えるってかなり難しいと思うのに、正直に書かれていると感じた。美化せずそのままさみしい小説を読みたいと思った。