自由に捕らわれる。

自由に捕らわれる。
自由に捕らわれる。
カンザキ・イオリ
河出書房新社
2024年8月23日
4件の記録
  • 夏が終わろうとしている。 来年の夏も、彼は小説を発表するだろうか。 『自由に捕らわれる。』の中での、印象に残ったセリフをまとめます。 以下ネタバレです。 〇『でももしお母さんに勇気を出して、塾をやめたいと言えたら、僕がハンバーガーを奢ってあげる。塾をやめたらきっと毎日学校終わりに暇になるだろう?君が家に帰りたくないとき、ここに来れば、明日でも明後日でも、これから毎日でも、君が食べたい物を買ってあげるよ。持ち帰りたいぶんも買ってあげる。君の好きな物だけ買ってあげる。僕がずっと傍に居てあげるよ』 あなたは悪い人ですか? 『そうだよ。僕は悪い人だ』 〇『スーツを着ても、誰も何かに変身することはない。スーツを脱いだら、ただ丸裸になるだけだ』 〇「ウザいんだよ!お前ら!家族面すんなよな!干渉しようとしてくんなよ。ずっとウザいと思ってた。ずっと面倒臭いと思ってたよ。心配してるフリしてるだけだろ!ちゃんとやってれば、それでいい、だけだろ!学校行って、ちゃんと毎朝挨拶して、健康で、それで、それだったらいいんだろ!だから見せてやっただろ!ちゃんと学校行って!ちゃんと挨拶して!ちゃんと健康で!いただろ!もういいだろ、もう、もう許してくれよ!解放してくれよ!琥太郎さんへの気持ちまで、抑えつけようとしないでくれ!僕が僕でいられるのは、あの人を想っていられる瞬間だけだったのに、僕を、僕を、これ以上抑えつけないでくれ……」 〇「だから、姿夜くんが人殺しって思ってから、私はずっと待ってたの。きっと、君なら私を殺してくれるかと思って。君がいつか殺してくれるのを待ってた。でも違うなら、じゃあ、じゃあ、誰が私を殺してくれるの?」 「私は、これからどうすればいいの?」 だから僕は、美生心の手を摑んで、引っ張った。引っ張って、走った。 美生心が何かを言っている。その後ろで、警官二人組も何かを言った気がする。 それでも僕は走った。美生心を引っ張り、走った。走って、走って、走って、走って、走った。 「好きに生きればいいだろうが!」 〇「ー(中略)ーでもそれでいいよ。そのままでいいよ。そのままのすーちゃんで、何も悪いことなんてない。悪口を言いたくなったら吐き出せばいい。喧嘩をしたくなったらすればいい。そのたびに私が叱ってやるから。何度でも悪いことをして、何度でも私に怒られればいい。私に殴られればいい。綺麗な心じゃなくていい。私が全部受け止めてあげるから。なーんにも言わなくていい。家族は、無理に寄り添い合おうなんてしなくてもいいし、疲れたときに、気紛れで、あんたが帰りたくなる場所になればいい。だからね、私たちをいい加減、認めてちょうだい。私たちを許してちょうだい。私たちは完璧な家族じゃなかったかもしれない。それでも、家族として、私は皆のことを愛してるの。あんたのことも愛してる。あんたを今まで支えてくれた、その人のように。あんたに今まで寄り添ってくれた、その人のように。今度は私たちが、あんたを支えて、寄り添いたいだけなの。ねえ、すーちゃん。私たちはその人の代わりになることができないかしら。その人の代わりに、今度は私たちがあんたを支えて、寄り添って、愛してあげることはできないのかしら。」
  • カンザキイオリさんの小説第3作。 1週間くらいで読み終わった。 【過去】に主人公の大切な人が死んでいて、その人に心を囚われてる主人公がいて、物語が進むにつれて、【現在】で身近にいる死にたい人間を救うという構成が、第1作の『あの夏が飽和する。』とよく似ていると思った。 登場する少年少女たちの言動がなかなかに衝動的かつ暴力的で、でもそこに不快感を覚えないのは、そこにあるのは残忍さではなくて、もっと切実で、堪えきれない痛々しい感情だからだと思う。 以下ネタバレ 個人的に好きだったのは、主人公の姉のあーちゃんが、やりたくない仕事で心をボロボロにして家族に冷たく当たる女の子だったのだけど、主人公の姿夜に、 「死ね。死んじまえよ。仕事のストレスを家に持ち込んでくんじゃねえ。安月給で家に寄生する居候のくせに。母さんも父さんも僕も皆知ってんだよ。あーちゃんがそんな仕事好きじゃなくて、でも無理して働いてんの。皆心配してんのに、あーちゃんは全部無視してる。皆の心配全部振り解いて、イライラをぶつけてる。あーちゃんはそんな人じゃなかった。誰だよ。誰なんだよてめえ」と言われて大喧嘩になるのだけど、翌朝、「会社、辞めていい?」と言って、結っていた髪を解いてスーツを脱いで下着姿になってソファにダイブして、お酒を一気飲みして、弟たちに「オラやるぞ。ゲーム。なんだ。マリオか?スマブラか?」と言って、会社からの電話に出るやいなや「辞めっから!」と叫んでベランダからスマホを投げ捨てたりするところ。 本の感想書くの下手だなぁ。 好きなところはまだまだあるけど、今はこの辺で。
  • 『その人は、いつも本を読んでいた。ハンバーガー屋の二階、入口近くのゴミ箱の向かいの席で、注文したチーズバーガーのセットを食べずに、静かに文庫本を読む。読み終わったあと、冷めきったハンバーガーと、湿気たポテトと、温くなったMのコーラを不味そうな顔をして口に運ぶ。』
    自由に捕らわれる。
  • カンザキイオリさんの『自由に捕らわれる。』のライブビューイングを観に行ってきたので、本格的に読み始めた。 登場する少年少女たちの、感情を爆発させるような言動は、カンザキイオリさん節だなぁと思った。 琥太郎さんの真似をして、チーズバーガーセットを頼んで食べずに本を読んで、冷めきったバーガーと湿気たポテトと温くなったコーラを口に運びたくなった。
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