紙の梟 ハーシュソサエティ

紙の梟 ハーシュソサエティ
紙の梟 ハーシュソサエティ
貫井徳郎
文藝春秋
2022年7月13日
8件の記録
  • いちのべ
    いちのべ
    @ichinobe3
    2026年8月11日
    「人ひとりを殺したら死刑になる」という思考実験めいた状況の日本における殺人事件を描いた中短編集。 どの作品も、この状況下だからこそ発生する動機や葛藤が描かれていて興味深かった。特に『レミングの群れ』が厭だし起こり得そうだしで終始、心がざわついた。 いじめを苦に自殺した生徒、そのいじめっ子をインターネットで追跡・晒すだけでなく、「敵を撃つ」=殺す男が現れる。彼は自殺した生徒ともいじめっ子とも利害関係のない、自殺志願者で、死ぬ前にせめて社会の役に立ちたいと、いじめっ子を殺して死刑になることで自殺を成立させようとしたのだ……そして類似犯が次々と現れる。しかも犯人はインターネット上で称賛される。 > これで世間の論調は変わるかと思いきや、驚いたことにあまり変化はなかった。当然のこと、と考える人は予想外に多かったのである。いじめっ子は三人とも死刑になるべきだが、現刑法下でそれが無理なら、誰かが命を賭して社会正義を実現するしかない。己の命を犠牲にしてまで正義の鉄槌を下した犯人は、神風特攻隊員にも匹敵する愛国者だ。そんな極論まで飛び出した。(p140) > 建前は、説得力を失っていた。義父の言う“素朴な感情”を、人々が剥き出しにし始めたかのようだった。もともとネットには、思いつきをそのまま書き込む人が多かった。かつては匿名だからこそ極論や暴論を吐けるのかと思われていたが、今では実名でも抑制の利かないことを書く人が増えた。おそらくそれは、素朴な感情でものを言う人が多数派になったからだろう。暴論が少数のうちは、良識派から非難を浴びる。だが数のバランスが崩れれば、多数派が正義だ。自分の身内がいじめのせいで自殺したら、という仮定の前には、どんな正論も無力だった。(p140) これらの社会の流れの有り得そうなところがグロテスクで読んでてゾワゾワしたし、また別の仕掛けもあって最後まで楽しかった。 「人ひとりを殺したら死刑」なので、全ての指を削ぎ、目を潰し、舌を切り落とし重傷を負わせる『見ざる、書かざる、言わざる』、動機に驚きが込められた『籠の中の鳥たち』、復讐がもたらす悲劇を描いた『猫は忘れない』、恋人を殺された男が彼女の足跡を辿る『紙の梟』、ひとつひとつ趣向が違って読みごたえがあった。
  • Luce
    Luce
    @pichi-peach
    2026年6月17日
    実は貫井徳郎さんの作品には最近出会いました。私が今まで読んだ本が、たまたまそういう傾向の本だったのかもしれませんが、どれも完読後、胸のざわつきが残る作家さんなんだという認識でした。 ですがこの紙の梟は、しんどいけど救いのある本で、完読後の余韻が良い本でした。 人を一人でも殺したら死刑という かなり偏った思想が主体でスタートした短編集に、当初は違和感が拭えず、なかなか読み進められなかったのですが、最後まで読みきったところで全てが繋がり、この救いの無い課題のなかで、可能な限り美しい結末に導かれていたよう思います。 まだ私が読んでいない貫井さんの本をこれからこれから読みすするのが、俄然楽しみになりました。
  • ハルカ
    @uka
    2026年4月10日
  • 昨年買った「慟哭」と同じ作者さんで、人一人殺したら死刑だという世界観が気になり借りてきた まさかのオムニバス形式?でびっくりしたけどそれぞれ違った面白さがあって良かった 特に「レミングの群れ」は最後の数行ででっかい声出てしまった 流石に予想外すぎる 題名のレミングって知らなくて調べたら集団自殺するって言われてた動物らしくてあぁ…ってなりました 最近のSNSでのいじめ問題と余りに重なりすぎてて、もし今の日本がこの本と同じ世界観なら、まさしくこの本の現象が起きただろうと思った 人が作ったルールは、人の素朴な感情には勝てないよ でも、人の感情の暴走の果てに起こる罪が次の話の「猫は忘れない」でうまくできてるなと思った この本、オムニバス形式だけど流れが綺麗すぎる 本のタイトルでもある「紙の梟」で終わるのも良かった 笠間さんの何が良いって、インスタントに見切りをつけたり、判断したりしなかったこと レミングの群れに出てきた第3者達も猫は忘れないの主人公も、犯人の事情や被害者との間にあるやり取りの真実さえ考えようとしないで、他の人間の情報を鵜呑みにしてそこで思考停止のまま殺人を犯してた 笠間さんは紗弥の真実を知るために自分の足で歩き、自分で見聞きして、そして犯人に対しての心証を決めた それこそが他者が犯した罪にきちんと向き合うことだと私は感じた SNSやメディアだけで知った情報で断罪を叫ぶのは無理あるし、擁護もまたしかり ただひとつ言えるのは、警察検察司法、しっかりしてくれそれだけでもこの世界観は回避できる筈 そんなことを思った本でした
  • Filo
    Filo
    @filo_book
    2026年2月4日
    人ひとり殺したら死刑。疑わしきは罰する。そんな世界での話。 罪と罰、人の生命の重さとは、生きるとは何か。色んなことを考えながら読んだ。 びっくりするほど残忍な描写からスタートするのでやや面食らったが、短編なので思ったほどしんどくなかった。 どの話も面白かったが、「レミングの群れ」が断トツで好き。最後の一文を読んで思わず唸った。 表題作「紙の梟」は謎や疑問が少しずつ紐解かれていく感じに引き込まれ、ページを捲る手が止まらなかった。読後感もよかった。 個人的に満足度の高い一冊でした。
  • 人ひとりを殺したら死刑になる世界線の短編集。三章でリタイア。正直法制度でここまで世界観、価値観が変わる気がしない…。しかし過失致死でも死刑になるのは恐ろしすぎる。運転する人減りそう。
  • jyori2
    @sun104068
    2025年9月1日
  • きくぞ
    @kikunojo
    1900年1月1日
    今見ているドラマの感想をいろいろ見ていたところ、誰かがこの本の事を話題にしており購入。 今年出版された本っていう感じがある。 罪を犯した人に対して、対等な罰を与えるという世界観がある前提の物語が5編。 物語上の登場人物の考え、物語上の世間一般やメディアやSNSの反応と、 現実の世間一般的な感覚や私個人の考えに、大きな差はなく、小説の世界観と現実世界は地続きだと思わせられる。 その時々で考えは変わるし、個々人が思うことは違う。歩む人生が違えば、考え方は違って当然な話ではある。 先が読める話もあったけど、全体的にとても面白い本だった。
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