
Santiago
@snows
- 2026年3月30日
成瀬は天下を取りにいく宮島未奈読み終わった前から気になっていたが社内の図書活動の一環で借りられる事になり拝読。 登場人物は滋賀県大津市膳所にすむ高校生「成瀬」、その幼馴染の「島崎」、同じく幼馴染だがそんなに成瀬のことが好きではない「大貫」、同じ街に住む社会人の「敬太」「マサル」、そして成瀬と同じ部活動の全国大会で出会う「西浦」。 成瀬を中心としたそれぞれの人物の群像劇が描かれる。 序盤は基本的には彼女を取り巻く人物に感情移入する事が多かった。作中では成瀬は過剰なくらいの「完璧超人」として描かれるからだ。 勉強は学年でトップクラス、あらゆる大会で賞を取り、奇抜な思想と確固たる意志を持つ彼女の前では彼女以外の登場人物は基本的に「モブ」として描かれる。 そんな彼女を取り巻くそれぞれの人物たちは、彼女、もしくは作中の年で閉店してしまう西武大津店をきっかけに瞬きのような青春を経験する。そして最後にはその曇りなきビクトリーロードを歩んでいる彼女さえも年相応の思春期を経験することになるのだが、誰もが経験する当たり前のような解れに戸惑う成瀬の姿を見て初めて、他の登場人物たちと同様にモブである読者は、その規格外に秘められた等身大の気持ちを知ることになる。 成瀬、そして大津を中心に描かれる舞台とストーリーはまるで日記を読んでいるような手触りで、共に青春を過ごしたような清々しい気持ちになる作品でした。 - 2026年2月10日
廃用身久坂部羊読み終わった実写映画のポスターの不穏な雰囲気と、字画が削られたタイトルロゴに惹かれて借りた。 舞台は回復の見込みのない麻痺を患った老人達をケアするクリニック。老いて死んでゆく者の介護という、将来性の無さと無理解から敬遠されがちな老人医療に取り巻く課題をなんとかできないか苦悩する医師は、思いがけず麻痺した四肢を切り落とすことで介護負担が減らせる処方、通称「Aケア」を発見し、その有用性を示す言論から本書はスタートする。 読み進める度に、考えてはいけない倫理的なタブーがひとつひとつタブーではないと丁寧に解かれていくようで恐ろしく感じた。 一方で、本書は決してホラー小説ではなく、これから(2005年著のため既に20年前だが)老人医療が直面する問題に強く向き合った医療小説であり、それは決して他人事ではなく自分たちにも起こり得る問題の様様を投げ掛けてくる。 まるで著者は未来が見えているかのように描かれるストーリーとその結末は、著作から20年が立っても映像化されることが頷けるような作品だった。 - 2026年1月30日
ハーモニー伊藤計劃読み終わった身体管理ナノマシンの導入により病疫と怪我を完全に克服した社会で、自らの身体が社会的リソースではなく自分たちのモノであることを証明しようとした3人の少女と、その世界の物語。 本書における「なぜ争いや支配が起こるのか?」への回答が、人間が自然の中で持つ”仕様通りのバグ”であるというメッセージは依然戦争と独裁が続く現実社会へのアンチテーゼであり、伊藤計劃自身が投げ掛ける問いのスタートでもある。 反戦と平和という誰しも持つポジティブな願いを、息の詰まるユートピアと哲学的ゾンビで表現したストーリーと文体がユニークで面白かった。
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