ハーモニー

29件の記録
- akamatie@matie2025年6月6日読み終わった10年ぶり、2度目の読了。 争いの時代を越えた人類は、生府に守られ、調和と健康を至上の価値とする社会を築いた。誰もが社会のために生き、争いも病もない世界。 けれどその調和は、個人の意思や感情を抑え込むことで成り立っている。その圧に苦しみ、自ら命を絶つ人も少なくない。それは本当の調和と言えるのか。 自分自身、日々の生活の中で他人との軋轢に悩んでいるからこそ、この理想的な世界の美しさと怖さの両方を強く感じた。 人間の意思が社会に完全に溶け合う世界は、エーリッヒ・フロムが説いた理想の愛の形とも言えるのかもしれない。 伊藤計劃が描いたこの理想郷を超える未来を、これからのSFは描いてくれるのかしら。
- 背等体@yomotuhegui2025年3月17日かつて読んだ昔読んだ本。 夭折の作家、伊藤計劃。SFで伝説化されているようですが当時は全く知らないまま、あらすじの設定に惹かれて手に取った気がする。 それまで読んできたSFは古めの海外作品で、著者が故人であることが前提だった。作者に直接お礼を言うなんて出来ないのが当たり前だった。 ついこの前まで同じ世界で生きていた人が書いたんだと知って、それなら会えて面白かったと伝えたかった、と思っていた。 その先がないことが、ほんの少し残念で、悲しかった。 何年前ならこの人の書く生の話がもっと読めたのか。 社会で生きる全ての人間を余さずリソースとして、優しさと健康で管理されるユートピアあるいはディストピアもの。 多種多様な分野の知識とそれを巧く使いこなすことが小説の世界観を強固にするんだな……どんな小説でも言えることですが。素敵だった。こんな話を書けたらな。 それと、本当にプログラムを齧ると見えてくるコードがあって、いまさらの発見に笑っています。 トマトとモッツァレラチーズバジルのカプレーゼが食べたくなりますね。 読後は寂しく穏やか。
- 数奇@suuqi2025年2月22日読み終わったかつて読んだ2025年2月に読んだ本。作中にも『1984年』『すばらしき新世界』のオマージュが含まれるように、これもいわゆる「ディストピア小説」であるが、ディストピア作品の多くが「こんな社会になりたくないな」という視点で読むことになるのに対して、この作品の設定は「そこまで悪くない社会なのでは」と思わせてくるリアリティがある。WatchMeとかちょっと便利そうだし、オーグも犯罪防止に有効そうだ。しかしその上で社会の破綻がもちろん展開されていくわけだが、『虐殺器官』同様にアイデアがぶっ飛んでいて面白い。キャラクターも魅力的で読みやすかった。