トムは真夜中の庭で

トムは真夜中の庭で
フィリパ・ピアス
スーザン・アインツィヒ
ピアス,A.P.(アン・フィリパ)
Philippa Pearce
高杉一郎
岩波書店
2000年6月16日
14件の記録
- サヤ@sayaemon2025年4月14日読み終わった尊敬する作家のひとりである小川洋子さんが、忘れがたい作品として挙げていた一冊。本当に素晴らしかった…! できるならば子供の頃に読みたかった…でも、トムとバーソロミュー夫人の間の年代である今読んだからこそ、どちらの気持ちも感じ取れた気もする イギリス児童文学らしく、庭園にまつわる描写や、それを愛で、共に成長する人々の暮らしの様相が手に取るように伝わってくる そもそもが個人的にイギリス文化贔屓なこともあり、この点だけでも100点満点の読み応えだったのだけど、更に素晴らしいのが、トムやピーター、幼いハティらの子供らしい感覚を、「未熟な大人」として見下したり、過剰に幼く無知に描いたりは決してしていないこと(優れた児童文学というものは皆そうだけども) 大人が考える「子供らしさ」という型(よかれと思ってトムを教え諭そうとする叔父夫婦のやり口も、ある意味これにあてはまる)から飛び出して、トムは自由に、大胆に、勇敢に、また驚くほど冷静に、真夜中の庭で素晴らしい時を過ごす。家に残してきたピーターや、幼いハティへの思いやりの心にも溢れている その様は、子供と大人という時のくびきから解き放たれたひとりの人間として、とても魅力的だったし、だからこそ、ラストシーンの2人の邂逅にも胸が熱くなった 人生における特別な一冊が、また増えました