ソングライン

11件の記録
- 本屋lighthouse@books-lighthouse2025年5月17日読み終わった画商をしている白人が「絵のもととなっている物語」を執拗に訊ね、制作者であるアボリジニによって断片的に(つまりおそらく積極的には明かしたくはない心持ちで)語られるそれを都合のよい解釈で繋ぎ合わせ満足する、というような場面。なにかよさげな「物語」がなければ作品を売ることはできない、というのはたしかに正しいことなのかもしれないが、他者に「物語」を要請することの暴力性はそれ以上に認識される必要があり、本を作り売ることで生計を立てていることについて、考えさせられる。コンテンツにすること、というありかたにどうしても内在する危険性。なにもかもがコンテンツにさせられ、コンテンツにしなければお金を得ることもできない現代社会、もしくは資本主義社会。などなど。
- 本屋lighthouse@books-lighthouse2025年5月10日読んでるまだ読んでるアボリジニの言うソングライン、つまり先祖の夢という概念を最近どこかで摂取したような気がすると思いながら読んでいたのだけど、思い出した。映画『けものがいる』だ。正確には先祖の夢ではなく前世の記憶だけども、それを継承する=追体験することがテーマと考えると、なんとなく繋がってくるものがある。あと『ソングライン』でもプルーストが出てきた。曲者の本屋店主が『失われた時を求めて』を読んでいるらしく、ゲルマント公爵夫人のパーティからシャルリュス男爵が去って云々みたいなくだりが綴られていた。その場面を私は知っている気もするが、読んでいない気もする。なるほどこれが先祖の夢≒前世の記憶≒代わりに読んでもらった読書か。
- 本屋lighthouse@books-lighthouse2025年5月9日読んでる「我々の言語では」フリンは言った。「“領土”と“道”を同じ言葉で表します」 これに関しては単純明快な説明があった。オーストラリアのアウトバックの大部分は乾燥した低木林か砂漠で、降雨量にもばらつきが多く、ある年たっぷり降ったかと思うと、そのあと七年も雨不足がつづいたりする。そうした環境で生きていくためには移動が不可欠であり、同じところにとどまるのは自殺行為だった。“自分の領土”とはすなわち“断りなくいられる場所”を意味した。また、その場所で“安心して”過ごすためには、いつでもそこを離れられることが肝要だった。(p.94) ソングラインについての本筋とはズレるけども、この考え方はとてもいい。セーファースペースはひとつに固定される必要もないし、されるべきでもない。利用する人にとってもそうだし、場の運営をする人にとってもそう。
- 本屋lighthouse@books-lighthouse2025年5月8日読み始めた編集中の本において根幹を成す1冊なので遅ればせながら読み始めた。紀行文学というジャンルの危うさ、土足で他者の生存に踏み込んでいくこと(の自覚がないままなされる描写)について、否応にも考えさせられる。 あと、『奴隷・骨・ブロンズ』や『12ヶ月で学ぶ現代アート入門』などで言及されていた、欧米諸国の博物館所蔵品を元の持ち主=植民地支配を受けた文化に返還する動き、あるいは『薬物戦争の終焉』で言及されていたドラッグ使用者が置かれている各種劣悪な環境についてなど、ほかの本で知ったことが本書には散りばめられている。『ナラティヴの被害学』の観点から読んだらどのような評価になるだろうか、というのも気になる。