人質の朗読会

4件の記録
- たご@clan_19672025年5月30日読み終わった拉致というセンセーショナルな出来事が前提にある中で、人質たちの語る物語は穏やかで静かである。その物語の中には、けれどひっそりと死の香りが漂っている。それは決して悪臭ではないが、ふとした瞬間にはっと気づく。この人はもうここにはいないのだと。そのことに愕然とする。そしてまた、彼らが語る物語の中にも、もうここにはいない人がいる。 たとえ今がどんな状況にあったとしても、過去は変わらない。出会った人とは出会わなかったことにはならない。時として残酷ではあるけれど、そのことを物語ることができるのは自分だけだ。何かを物語るということは、この声がどうか誰かに届きますようにという祈りでもある。 小川洋子さんの作品ははじめて読んだけれど、いいなあ。