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翠
@noctambulist
  • 2025年12月13日
    この世界からは出ていくけれど
    この世界からは出ていくけれど
    他者はどこまでも他者である、という認識のもとに書かれた作品には、信頼がおける。悲観を含まないものであれば、尚更。ダンヒとジョアンでなくても、私たちはおなじ世界を生きられはしないけれど、理解ではなく親愛をもって、相手に応えることができるのだ。
  • 2025年12月9日
    光っていません
    光っていません
    社会や人生に疲弊した人々を主役に、強張った心がやわらかさを取り戻してゆく過程を、真摯に綴った八篇。自分の分身を名乗る幽霊が現れる「幽霊の心で」と、人間を海月に変異させる海月が大量発生した世界をえがいた表題作が、わすれがたく胸に沁み入った。
  • 2025年12月5日
    ほんのささやかなこと
    ほんのささやかなこと
    清廉であろうと思いさだめても、決意と実践のあいだには隔たりがある。保身に走る人々を責めたところで、高潔にはなれない。善きひとになる、その難しさをひしひしと感じる夜に、ささやかながら確かな変化を捉えたこの物語に出会えたことが、ただ嬉しい。
  • 2025年12月1日
    理由のない場所
    理由のない場所
    時制を超越した世界で為される、鋭利な対話。それは実際の会話ではなく、息子を喪った母親の、内的な体験だ。精神の苦闘に対して感想を述べるのは憚られるけれど、私にとっても書くことは抗うことで、癒すことでもある。その力を信じるほかないと、強く思う。
  • 2025年11月29日
    マーダー・ミステリ・ブッククラブ
    マーダー・ミステリ・ブッククラブ
    アリシアとリネットを始めとする読書会のメンバーには、強烈な個性が与えられており、良くも悪くも“キャラクター”といったふう。やたらと騒がしく俗っぽい人物ばかりなので、ほとほと疲れ果ててしまった。意図的な戯画化だとしても好きになれない作風だ。
  • 2025年11月25日
    スリー・カード・マーダー
    スリー・カード・マーダー
    刑事のテスと詐欺師のセアラ、とある事件のために袂を分かった姉妹が、ふたたびタッグを組んで密室殺人の謎に挑む。信頼と疑惑が入り混じった複雑な心境にいたく惹きつけられたぶん、続編ありきの中途半端なミステリ、といった仕上がりになっているのが残念。
  • 2025年11月21日
    ゴッホの犬と耳とひまわり
    事の始まりは、厖大な書き込みとゴッホの署名があるフランス製の家計簿。数多の蘊蓄がどこまでも枝葉を伸ばすので、幾度となく話の筋を見失いかけたが、ペダンティックな会話こそが本書の魅力。堪能するためにはもっと腰を据えて読むべきだったかもしれない。
  • 2025年11月17日
    リボルバー
    リボルバー
    ゴッホという画家を、物語として消費してきた自覚があるだけに、読み進めるには勇気を要した。しかし不遇の人生にも幸福はあったのだと信じる冴のまっすぐな思いにふれて、心がほぐれた気がする。勝手な感傷に過ぎないとしても、今はそれを祈りと呼びたい。
  • 2025年11月13日
    モンテ・フェルモの丘の家
    モンテ・フェルモの丘の家
    度々取り交わされる手紙は、ながい溜息のよう。かつてはそれぞれが奔放に自由を謳歌していたからこそ、もう戻らない日々への郷愁が滲んだ文面をいっそう哀切に感じる。ルクレツィアの深閑とした胸中に、喪失と断絶にまつわる普遍の悲しみを垣間見た気がした。
  • 2025年11月9日
    甘くない湖水
    甘くない湖水
    支配や独善といった言葉では、アントニアが母として引き受けてきた辛苦を掬い取ることはできないとはいえ、娘であるガイアの心情を思うと胸が詰まる。満たされない思いが募ってゆくなか、ただしずかに彼女の傍にあり続けた湖水も、もはやあまくはないのだ。
  • 2025年11月5日
    サンショウウオの四十九日
    他者の意識が流入してくる感覚を知らない私は、共有を常とする杏と瞬とは異なる状態にある。けれど、自分の身体を所有している実感はもてずにいる。他人のものではないが、みずから統御できるものでもない意識や肉体を思って、しばし奇妙な浮遊感に包まれた。
  • 2025年11月1日
    グレイスは死んだのか
    深山での遭難によって反転する、男と犬の関係性。おのれの世界から滑落してゆくさまを捉えた凄絶な物語で、嫌悪を催しつつも、魅入られたように読み耽ってしまった。アイデンティティの崩壊は、人にとっても獣にとっても、死にひとしいということなのか。
  • 2025年10月29日
    忘れられた花園<下>
    忘れられた花園<下>
    弱さや醜さを知っているつもりでも、いざそれを目の当たりにすると、打ち据えられたような気分になる。立場や状況が違えば、自分もこうして他者の尊厳を踏みにじるのだろうか。すべてを押し流してしまう時間というものに対しても、様々な思いが渦巻いている。
  • 2025年10月25日
    忘れられた花園<上>
    忘れられた花園<上>
    祖母が遺した秘密に誘われ、カサンドラはひとり英国へ渡る。時を隔てて繰り返される、出自をさぐるための旅は、暗いながらもロマンティックなときめきにみちている。縺れあった物語がしだいに解きほぐされてゆくさまに心を躍らせながら、次々に頁を捲った。
  • 2025年10月21日
    ある夢想者の肖像
    ある夢想者の肖像
    微に入り細を穿って“退屈”を述べたてる、熱っぽくうわずった文調がうっすらと不快で、執拗な反復表現にもめまいを誘われる。文章の構造にはっきりと意味をもたせた秀逸な作品ではあるが、読み通すだけで疲れきってしまい、とても楽しむどころではなかった。
  • 2025年10月17日
    割れたひづめ
    割れたひづめ
    翔鴉館の或る一室で眠る者は、みな謎の死を遂げる。逸話のために開かずの間となったその部屋で、さらなる犠牲者が……という導入部分がいちばんの読みどころか。丹念に醸成された怪奇的なムードが、中盤で霧散しなければ、もっと貪るように読んだに違いない。
  • 2025年10月13日
    人質の朗読会
    人質の朗読会
    小川洋子の作品は、清潔なにおいや硬質なしずけさから、病室や博物館を想起させる。本書もやはり厳かな気配をまとっているが、そこには温もりもあるように思う。物語るという行為に込められた、遍く命への祈りに、心臓の鼓動をふと意識したせいかもしれない。
  • 2025年10月9日
    カルトローレ
    カルトローレ
    きび色の沙漠にて繙かれる、航海日誌カルトローレ。空をゆく船の乗員であったタフィが目にする、縹渺とした世界のすべてに陶然とした。神秘や幻想の類はどこか閉ざされたものであるように感じていたけれど、内ではなく外へと向かってゆくこともできるのか。
  • 2025年10月5日
    人形たちの白昼夢
    あまく淑やかな香りと、かすかに艶めかしい温もりにみちびかれ、現実と幻想のあわいへ。薄くたなびく霧や、舞い落ちる淡雪を思わせる短篇集で、ほんのひとときしか心に留めていられそうにないと感じてしまったが、これは作品の瑕疵でなく、相性の問題だろう。
  • 2025年10月1日
    誘惑者
    誘惑者
    意識の深部にうち寄せる黒々とした波濤、“自分の知らない自分”に脅かされる哲代。何度もこの物語へと沈潜することで、私もいつか自分自身を夜の海へ差し向けてしまうような気がする。それはひどく空虚で、しかし抗いようもなく魅惑的な、昏い予感である。
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