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翠
@noctambulist
  • 2026年2月28日
    いずれすべては海の中に
    いずれすべては海の中に
    大胆な発想に目を奪われ、一心に頁を捲るうちに、ごく個人的でひそやかな物語であることに気がつく。奇想はあくまでも舞台装置。避けて通ることのできない“喪失”について語り、悲哀も含めて、人間とその営みを愛おしむ。これはきっと、そういう作品なのだ。
  • 2026年2月23日
    わたしに無害なひと
    わたしに無害なひと
    読書とは、他者の傷をたどってゆくこと。時には自身の痛みを呼び覚ますことでもある。この七篇ともまさにそうした時間を過ごしたが、苦しいばかりではなかった。誰かを懐かしく思うときに感じる、光とも風ともつかない、やわらかな波のような短篇集だと思う。
  • 2026年2月20日
    唾がたまる
    唾がたまる
    不安と焦燥と疲労がくろぐろと滲みでたエピソードにも、どこか可笑しみがある。そのせいで却って泣けてくることもあるけれど、後味は悪くない。その時々で泣いたり笑ったりしながら生きてきた、という淡々とした実感、ささやかな自負を感じるからだろうか。
  • 2026年2月17日
    逃げ道
    逃げ道
    主役となるのは何かから逃げている人物で、他者とのすれちがいに由来する孤独感というテーマもあるようだが、妙に捉えどころがない。「ネズミ捕り」三部作の他は、味わい方さえ分からずただ呑みくだしてしまった。時間をおいて再読すべきかどうか迷っている。
  • 2026年2月14日
    惑星語書店
    惑星語書店
    翻訳モジュールでは解読できない本だけを販売している書店でのひと幕と、カメラで撮影できないスタースモッグを記録しようと筆を執った人々の姿を、心に焼きつけた。学ぶことと描くことの意義を、何度も自分に問うてきた私にとって、贈りもののような作品だ。
  • 2026年2月11日
    派遣者たち
    派遣者たち
    個人の個人たる所以とはなにか。自我とはどこまで独立したものなのか。人間そのものへの探究心からうまれる物語は、いつまでも色褪せないと、つくづく思う。他者とともに生きることの難しさを痛感させられる今だからこそ、探りあてるべき言葉がある、とも。
  • 2026年2月6日
    シュレーディンガーの少女
    様々なディストピアを生き抜く、女たちの短篇集。いずれもライトでポップな調子で書かれているため、少々切実さに欠けるきらいがあるものの、数学や量子力学といった難解な分野を身近に感じさせ、自然と向学心を高めてくれるような、魅力に溢れた作品だった。
  • 2026年2月3日
    少女七竈と七人の可愛そうな大人
    台詞が醸しだすとぼけた雰囲気のせいで、どこまで真剣に捉えるべきか迷ったけれど、振り返ってみると生傷のような物語だと思う。異質であること、平凡であること、少女であること、少女でなくなることに、苦しまなくてもすむ世界をいつか見られるだろうか。
  • 2026年1月31日
    呪いを解く者
    呪いを解く者
    原野と呼ばれる沼の森にて、呪いを取りのぞくほどき屋と、鷺に姿を変えられていた少女の冒険が幕を開ける。これぞファンタジイという設定ながら、現実と響きあう物語でもあって胸を衝かれた。憎悪の“その後”に向けられた著者のまなざしは、どこまでも誠実だ。
  • 2026年1月27日
    ささやきの島
    ささやきの島
    死者の魂を送り届ける〈渡し守〉となったマイロの、波乱にみちた旅路にも、夜霧と海風を肌に感じる挿絵にも惹き込まれた。死の受容という主題がありつつ、どこか職業小説のようでもある。何事にもそのひとだけの方法があり、前例にこだわる必要はないのだ。
  • 2026年1月18日
    極北
    極北
    生きるうえでの指針。それを失わずにいることは、存外に難しいのではないか。コンパスが用を成さない極北の地、終末へ向かう世界の涯でも、信念をつらぬけるだろうか。なぜ生きるのか、どう生きるべきかと問うてくる強靭な物語にすこし怯んでしまった。
  • 2026年1月9日
    ゴーストダンス
    ゴーストダンス
    苛政のために滅びに瀕した北の地を救うべく、シンジビスは皇帝のもとへと急ぐ。移ろいゆく世界を、ただ見つめているわけにはいかない。とはいえ、正義を為すために安易な方法を取ってしまう未熟な魔法使いの旅路を追うのは苦しく、複雑な気分にさせられた。
  • 2026年1月6日
    ゴーストソング
    ゴーストソング
    猟師の親子や遊牧民たちを過酷な運命に追いやったクズマも、或る意味では不幸の渦のなかにいる。後日譚にあたる『ゴーストドラム』でも、奸智に長けた残忍な魔法使いとして登場した彼だが、今や力をふるうことしかできない、哀しい存在であるように思える。
  • 2026年1月3日
    ゴーストドラム
    ゴーストドラム
    金の鎖につながれた猫が語る、氷雪に閉ざされた皇国の物語。東欧の民話の要素がふんだんに採り入れられているが、遥かに血腥いうえに、冷然と読み手を裏切ることも屡々。心を癒やしも惑わせもする言葉の魔法は、この冷たいおとぎ話にも確かに宿っている。
  • 2025年12月29日
    ヒカリ文集
    ヒカリ文集
    奉仕に近しい恋をかさねてきた賀集ヒカリは、結局のところ、何者だったのか。答えが明かされないために、魅惑的な作品になっていると思う。“宿命の女”という単純なイメージに閉じ込められることのない、ひとりの人間の姿が、紗幕の向こうに見えた気がする。
  • 2025年12月25日
    献灯使
    献灯使
    多和田葉子の作品において、言葉はツールではないのだろう。物語に従属するどころか、物語を乗っ取ろうと隙を窺っているようですらある。生物でも観察しているようで面白くはあるのだが、個人的には、物語そのものに没入できる小説が読みたいと思ってしまう。
  • 2025年12月17日
    オートコレクト
    オートコレクト
    まさにフラッシュフィクションと呼ばれるにふさわしい、短い短い物語たち。奇抜な発想がいきいきと色づく、皮肉の効いた作品が目立つなかで、宇宙人が滅びかけた地球を見物しにくる「ガイドツアー」の、淋しさと温もりが手を取り合うような結末がこころよい。
  • 2025年12月13日
    この世界からは出ていくけれど
    この世界からは出ていくけれど
    他者はどこまでも他者である、という認識のもとに書かれた作品には、信頼がおける。悲観を含まないものであれば、尚更。ダンヒとジョアンでなくても、私たちはおなじ世界を生きられはしないけれど、理解ではなく親愛をもって、相手に応えることができるのだ。
  • 2025年12月9日
    光っていません
    光っていません
    社会や人生に疲弊した人々を主役に、強張った心がやわらかさを取り戻してゆく過程を真摯に綴った八篇。自分の分身を名乗る幽霊が現れる「幽霊の心で」と、人間を海月に変異させる海月が大量に発生した世界をえがいた表題作が、わすれがたく胸に沁み入った。
  • 2025年12月5日
    ほんのささやかなこと
    ほんのささやかなこと
    清廉であろうと思いさだめても、決意と実践のあいだには隔たりがある。保身に走る人々を責めたところで、高潔にはなれない。善きひとになる、その難しさをひしひしと感じる夜に、ささやかながら確かな変化を捉えたこの物語に出会えたことが、ただ嬉しい。
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