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翠
@noctambulist
  • 2026年5月30日
    溺れる少女
    溺れる少女
    “狂えし女たち”につらなるインディアが著した回想録は、虚偽と矛盾と夥しい引用から成る厄介な代物だが、気づけば混迷をきわめる語りに夢中になっていた。物語を取り込んだのか、はたまた取り込まれたのか。何が事実で、何を真実とするのか。亡霊はすぐ傍に。
  • 2026年5月25日
    最後の楽園: 服部まゆみ全短編集
    美術品にまつわる怪異譚である「骨」と「雛」、夫の愛人を異様なほど思い遣っていた女の死をきっかけに事件が起こる「桜」に心を射抜かれた。少年または青年の初心で多感な内面を綴った、どこかいたぶるような筆致から、著者の嗜好と美学が垣間見える。
  • 2026年5月18日
    spring
    なんて凄まじいのだろう。身も心もささげる──それを叶えられるだけの魂を、決して滅ぼされないものを宿して、生きてゆくということは。懊悩せず、孤独でもなく、しかし至って人間らしい萬春に、感覚を拡張されるような、解放感に満ちた読書体験になった。
  • 2026年5月15日
    初夏ものがたり
    初夏ものがたり
    故人を一夜だけこの世に呼び戻し、縁ある者との再会を仲立ちする謎のビジネスマンを中心に、静穏ながら異界めいた初夏のひとときが紡がれる。近頃はもう真夏の剣呑な気配がしていて、風情を感じる余裕もないので、尚のこと物語の美しさに救われる心地がした。
  • 2026年5月12日
    秘密 下
    秘密 下
    物語は、あるべき形におさまったのかもしれない。けれど、実現し得ない“物語”をいっぱいに抱えていたドロシーが不憫でならず、どうしてもそちらへ心を寄せてしまう。幸せになりたい、そう希ったことのない恵まれた身では、彼女を理解できるはずはないのに。
  • 2026年5月9日
    秘密 上
    秘密 上
    第二次世界大戦のさなかに青春時代を過ごし、のちに或る男を殺めたドロシーは、いまや年老いて病に伏している。一葉の写真をきっかけに繙かれる過去は、恋と夢にあふれているが、そのきらめきはどこか不穏なものだ。心がはりつめるのを感じながら読んだ。
  • 2026年5月6日
    処刑人 (創元推理文庫)
    処刑人 (創元推理文庫)
    ジャクスンがえがく少女たちは、皆がそれぞれに内なる世界をもつ。時に外なる世界を脅かし、また脅かされもする。そんな愛すべき魔女たちの一員でありつつも、痛めつけられるのみだったナタリーが、こんなにも清々しい結末を手にするとは。嬉しい驚きだった。
  • 2026年5月1日
    ねじの回転
    ねじの回転
    幽霊の解釈はさておき、かつては家庭教師の決めつけがましい態度や兄妹への執着ぶり、昂奮した語り口を、恐れながらも愉しんでいたような気がする。あらためて読んでみると、周囲と認識を共有できずに孤立してゆく姿がなんとも痛ましく、厭な後味が残った。
  • 2026年4月24日
    蛇行する川のほとり
    死者を心に住まわせて生きることの、果てしなく、あまやかな痛み。神殿を築くように少女時代をえがく作品は、徐々に嗜好に合わなくなってきているのだけれど、やはり大人になってから読んで良かったと思う。羨みも苛立ちもせずに、物語だけを追えるから。
  • 2026年4月20日
    ののはな通信
    ののはな通信
    野々原茜と牧田はな、横浜のミッションスクールで出会ったふたりの二十七年にもわたる交流が、往復書簡の形式で綴られる。熱情を抱くにも曝けだすにも強さが必要で、それを得難いものだと思うが、恋愛を友情より高く位置づける考えには首を傾げてしまう。
  • 2026年4月16日
    昏き目の暗殺者 下
    昏き目の暗殺者 下
    駆り立てられるように頁を繰った。アイリスが書いた、或いは書かなかったことは、刃となって彼女自身をも苛んだ。それでも、書き残すという行為にはかすかな希望が込められている。言葉のあらゆる性質、その恐ろしさと美しさに、あらためて心を揺さぶられた。
  • 2026年4月12日
    昏き目の暗殺者 上
    昏き目の暗殺者 上
    老女アイリスが回想する、釦工業で財を成した名家の繁栄と衰退の歴史。墜死した妹ローラが遺した小説のなかで語られる、惑星ザイクロンの物語。あまたの謎に取り巻かれてはいるものの、どちらも“舌を抜かれた女”の話として読める。胸騒ぎを覚えながら下巻へ。
  • 2026年4月8日
    湖畔荘 下
    湖畔荘 下
    出来過ぎた結末だとしても、この充足感はなにものにも代えがたい。コインシデンスもそう悪くはないと思う。『リヴァトン館』や『忘れられた花園』で感じた、滔々と流れる時間に対する畏怖と寂寥に、今はあたたかな感慨が加わって、心の奥底を満たしている。
  • 2026年4月4日
    湖畔荘 上
    湖畔荘 上
    嬰児の消失と母親の失踪。過去と現在のふたつの事件がたがいに呼びあい、行きつ戻りつしながら、ゆっくりと核心に近づいてゆく。早熟で気取っていて思い込みが激しいアリスを好ましく感じるのはなぜだろう。物語への陶酔じみた傾倒に、覚えがあるからか。
  • 2026年3月22日
    わたしを離さないで
    わたしを離さないで
    残酷な運命を前にしてもなお、希望を抱かずにはいられない。人間はそうした美しく哀しい性質をもつからこそ、数々のかけがえのない瞬間を生きられる。記憶が人生の意味に成り得るのか、答えはでないが、少なくともそれはキャシーたちの生を証明するだろう。
  • 2026年3月17日
    鳥の巣 (DALKEY ARCHIVE)
    鳥の巣 (DALKEY ARCHIVE)
    愛嬌のあるベス、邪悪なベッツィ、がめついベティ。エリザベスの別人格たちが相争うさまが、毒気たっぷりにえがかれる。解離性同一性障害について多少の知識を得ていながら楽しく読めてしまい、ばつの悪い思いをした。ジャクスンの物語にはとても敵わない。
  • 2026年3月14日
    白夜/おかしな人間の夢
    白夜/おかしな人間の夢
    孤独な夢想家のはかない恋物語のほか、宗教観がつよく表れた思索的な作品なども興味深く読んだ。私は信仰をもたないけれど、理想はことのほか重んじているので、“他者を己のごとく愛す”という不可能事を、それでも目標として掲げる思想には感じるところがある。
  • 2026年3月11日
    ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)
    若さと美しさへの執着が、時間への拒絶、生からの逃避だとすれば、ドリアンが成長できないのは必然だろう。しかしその呪いが今なお私たちを蝕んでいることを思うと、口を閉ざすほかない。悪徳に染まった後の方が却って生を謳歌しているように映るのも哀しい。
  • 2026年3月6日
    天使の蝶
    天使の蝶
    化学者でもあったというレーヴィの知識と想像力が混淆し、奇怪でアイロニカルな物語がかたちを成してゆく。架空の発明品にまつわる騒動をえがいた一連の作品など、なんともユーモラスなのだけれど、気味が悪いほど予言的なので、心からは笑えなかった。
  • 2026年3月3日
    リデルハウスの子どもたち
    金色の草原の果てに佇む、白亜の寄宿舎。ラヴと呼ばれる特別な生徒たちと、彼らに与えられるギフト。幼い時分に読み耽ったピアスやバーネットの著作が、時を経てこの愛らしい物語の扉をひらく鍵になってくれた気がして、あまやかなノスタルジーに満たされた。
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