悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える (NHK出版新書)

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- ところてん@tokoroten2025年3月16日読み終わった感想紹介この本を読んで学べたことは、全体主義を引き起こす原因として、個人を考えさせない状態にして、分かりやすくて刺激的な"世界観"を提供し、虚構の敵をつくりだすことによって、ホロコーストなどが成立するということ。これを避けるためには、公共的な議論ができる場が必要で、そこでは多様な人が意見を言い合い議論し、自分の頭で考えることが必要だという。この中にある意見の多様性みたいなものを複数性といって、ナチスの罪はユダヤ人の絶滅によってその複数性を抹消しようとしたこと。 このことは今の日本にも当てはまりそうで怖い。今の日本でも徐々にクルド人問題や移民問題で偏った意見がネットで散見されるようになってきて、アーレントが言っていた"虚構"の敵をつくりだしている状態になってきている。この状態が長く続けば、日本でも全体主義というのが出てきてしまうのかもしれない。そう言う意味でもこの本は今の時代こそ読む価値があるのだと思う。
- amy@note_15812025年3月15日かつて読んだ感想いまの本邦がかなり全体主義的な雰囲気に満ちているので、そこに引きずられないようにするための手がかりとして、また全体主義とは具体的にどういうことでどういう経緯で起こって、現在に至るまでにどう影響してきたのかが知りたくて読んだ 読んでみて思ったのは全体主義は同質性に基づいているということで、やっぱり共感を重要しすぎてしまうと、自分と異なった意見を持つ人、それがエスカレートして自分と生きてきた環境や文化が異なる人を異質なものだと排斥してしまう可能性も充分にあって、自分と同じ意見を集めやすい環境ではかなり自覚的に気をつけなければなと思った。ハンナ・アーレント自身はナチスのユダヤ人迫害からアメリカに亡命してきた立場であり、本書でも彼女の著書や理論からナチスがユダヤ人にどういったことをしてきたのか、なぜそんなことになったのかを世界史の流れやドイツという場所の地政学的観点から論じていた。この地政学的な観点というのはなかなか出会わなかった視点でおもしろくて、もっとこういった歴史の出来事や流れを地政学的に分析した本とか読みたくなった また彼女の著書「エルサレムのアイヒマン」についても書かれている章があるのだけれど、迫害や虐殺というのはいかにも凶悪な人間がやるわけではなく、凡庸で誰でもしうるということが書かれており、昨今のガザの状況を考えると非常に示唆的でもあった 敵か味方かなどの二項対立的な考えやわかりやすさを希求することが全体主義を引き起こし、それに染まる可能性があるとのことで、ネガティヴケイパビリティというか曖昧さや複雑さに耐え、自分と異なる意見を持つ人の背景を想像し、考えていく。地道にしっかりとそういう営みをしていくしかないのだと思う