自発的隷従論 (ちくま学芸文庫)

9件の記録
ひかりとかげ@hikakage2026年5月23日読み終わった「権力の目的は権力でしかない」 とは1984 のオブライエンの言葉だ。 では、人はなぜ権力に隷従するのか。 それを500年前、僅か18歳の法学者が説き、今なお語り継がれているのが、自発的隷従論 である。 彼の解く権力と隷属の構造は、方丈記 にも垣間見える。故にこれは一国家の話ではなく、人間共同体そのものの本質を捉えた書のように感じた。 特に印象的だったのは、隷属とは第二の天性である「習慣」に鎖を繋がれている、という視点だ。 言い換えればそれは、我々が「常識」や「普通」と呼んでいるものでもある。 さらに、「稼げば自由になれる」「人に尽くすことは善である」といった価値観ですら、この本を読み終えた後では、無邪気に鵜呑みできなくなる。 ただ、この本の唯一の救いは「友愛」という言葉の中にある。 それは権力者には決して得られない、互いが平等であるからこそ交わせる言葉と繋がりによる共同体である。 権力者も我々も、同じ形をした人間だ。 ただ在るのは、持つ者と持たざる者のバランスだけ。 それが社会を動かしているという点では、クロード・レヴィ=ストロース のいう「熱い社会」とも接続する。 だが本来、社会は必ずしも権力と隷属だけで成立する必要はない。 そう信じたいと思った。






