若きウェルテルの悩み

若きウェルテルの悩み
若きウェルテルの悩み
ゲーテ
酒寄進一
光文社
2024年2月14日
34件の記録
  • 「ぼくらが平等ではなく、そもそも平等になることなど不可能なのはわかっている。 それでも、威厳を保つために庶民から距離を置くことが必要だと考える奴はろくでなしだ。負けるのが怖くて敵から逃げる臆病者と同じじゃないか。」 「それなりの身分の者は庶民に冷たい態度をとって距離を置く。近しくなるのは身のためにならないとでも言うように。その一方で、へりくだってみせることで、かえって貧しい人たちに尊大な奴だと思われてしまうこともある。」 「喜んで白状するけど、だれよりも幸せなのは、子どものようにその日その日を生きていける連中だ。人形を連れ歩いて着せ替えをしたり、母親がいつも菓子パンをしまっておく引出しのあたりを虎視眈々と歩きまわって、望みのものを手に入れたらすかさず頬張り、「もっとちょうだい」と声を上げたりする。こういうのが幸せな人種さ!くだらないことや夢中になっていることに、たいそうなタイトルをつけて、これぞ人類安寧のための大事業なりと嘘く連中もおめでたい奴らだ。そんなことが言える御仁は幸いなり!だけど、謙虚になって、こんなことがいったいなんになるんだと考えてしまう人もいるだろう。そういう人なら、自分のささやかな庭を夢の楽園にしようと勤しみ、運に見放されても不平を言わずに重荷を担いで自分の道を歩く幸いなる市民がいて、一様に少しでも長くお天道様を拝もうと汲々としていることに気づくはずだ。そうだろう!そういう人は黙って自分だけの世界を作りあげる。これまた幸せなことだ。それこそ人間なのだから。」 「ほかの人から見て、ぼくにどういう魅力があるのかわからないけど、たくさんの人が気に入ってくれて、親しくしてくれる。だけど道を同じくできるのはごく短いあいだだけだ。じつに残念でならないよ。そう言うと、そこに暮らすのはどんな人たちなんだい、ときみは気にするかもしれないね。どこも同じと言うほかないさ!人間なんて所詮同じ。 たいていの人は生きるために汲々としている。残された自由時間なんてほとんどない。 それでも時間を持て余して、あらゆる手を使って浪費しようとする。これは人間の性 だな!」 「この世でぼくの心に最も近しい存在は子どもだ。子どもを見ていると、小さな存在に美徳の芽や、いずれ必要になるさまざまな能力の芽があり、それが開花するのがわかる。わがままな性格には、将来身につけるだろう不屈の精神が見てとれるし、奔放さには、この世のあらゆる危険をかいくぐるユーモア感覚と身軽さの片鱗がある。なににも毒されていない、ありのままの姿じゃないか! 毎度、人類の師が宣った金言が脳裏を過ぎる。 『子どものようにならなければ』 ところで、ぼくらと同等であり、むしろぼくらが模範とすべき子どもたちを、大人は下に見る傾向がある。子どもに意志などあるはずがないだって?一大人にだってないじゃないか。大人が特権を得られるいわれはどこにあるんだ?一大人の方が歳をとっていて、賢いからかい?一 『天にまします主よ、この世にいるのは歳をとった子どもと年若い子どもだけ。それ以外はいません。どちらがあなたにとって喜ばしいか、あなたの子イエスが答えをだしています』 ところが、みんな、イエスの存在は倍じても、その言葉には耳を貸そうとしない。 昔からそうと相場が決まっている。そして子どもたちを自分と同じように育てる一」 「『自分を律することなんてできるものでしょうかね。自分の感情を意のままにするな んてむりでしょう』……牧師も話に加わろうとして熱心に聞き耳を立てていることに気づいた。 ぼくは彼にもわかるように声を張りあげた。 『人間のさまざまな悪癖をいましめるお説教はありますが、不機嫌を礼す説教はいまだかつて聞いたことがありませんね』」 「『人はよく、よい日はすくなく、いやな日が多すぎると嘆きますね』ぼくはそう言って、口火を切った。『しかし、たいていは正しくないと思うんです。神が毎日授けてくれるよいことを素直に享受するなら、災いが起きても、充分に耐えられるはずです』 『けれども、気持ちというのは思うようにならないものですよ』牧師夫人が応じた。 『体調にも左右されますしね!具合がよくないと、なにをやっても満足できないものです』 ぼくはその意見にうなずいて言った。 『それなら病気と見たらどうでしょう。そして治す薬はないかと考えてみるんです!』 『一理ありますね』ロッテが言った。『気の持ちようってあると思うんです。』」 「すごいことやありえないことをする非凡な人間は、えてして自分に酔っているとか、正気をなくしていると昔から言われているからね。 だけど、自由で気高く、予想を覆す行動に出た者を自分に酔っている愚か者だと陰口を叩くのは、普段の生活でも聞くに耐えないことだ。きみたち理性のある者は恥を知るべきだ。きみたち賢者は恥を知るべきなんだよ」 「しかしい。美しどんな事情があるか、どのくらい調べてみたんだい?それがなぜ起 ったか、その原因をきちんと説明できるのかい? そうするなら、そんな性急に判断を下したりしないはずだ」「きみも認めることだろうが、ある種の行為は、動機の如何にかかわらず、罪悪たり うるものだよ」 ぼくは肩をすくめて、同意しつつこうつづけた。 「けれども、そこにも例外はある。たしかに盗みは罪悪だ。しかし自分と家族を餓死から救うために盗みをはたらいた人間には同情すべきだと思うが、やはり罰するのかい?不実な妻と不届きな間男に当然の怒りをぶつけて死に追いやった夫に、だれ が石を投げるかな?歓喜に満ちたひと時に、愛の喜びを抑えきれずに我を忘れた娘がいるとして、それを責められるだろうか?法律という冷酷な代物だって、心を動かされて、罰することを控えるだろう』 『それは別の話だ。激情に駆ら』れた人間は自制心を失ってしまう。自分に酔っていたり、正気をなくしたりした者と同じだ」 『分別のある人間はこれだからな!』ぼくは微笑みながら叫んだ。」 「作家が自分の物語を改訂すると、文学としての出来映えはよくなるかもしれないが、どうしても作品を損ねてしまうってことをね。 第一印象は好意的に受けとめられるものだ。」 「『ネーデルラント連邦共和国がちゃんとおれに報酬を払ってくれりゃあ、こんなに落ちぶれちゃいない!すごい時代だったよ。俺は羽振りがよかった。だけど、いまはこの体たらくだ。俺はもう』 涙をこえて天を仰ぐまなざしがすべてを物語っていた。」 「見ろよ、おまえはこの家にとってどういう存在か。ここに住む友人たちに敬愛される存在だ!ふたりの喜びの源であり、おまえ自身もふたりなしにはいられない。だけどーもしおまえがいなくなったら、どうだ?この友だちの輪から出ていったら、どうなるだろう?おまえを失うことで、自分たちの運命にぽっかり開いたうつろな気分を、ふたりはいつまで感じるだろう?いったいいつまで?1ああ、人間は儚い存在だ。この世に存在したという生きた証を、愛する者たちの思い出や魂にはっきり刻みつけたとしても、消えてなくなるほかない。しかも時間をかけずに!」
  • たろう
    @haman32
    2026年2月24日
  • Inh
    Inh
    @______byeo
    2026年2月3日
  • さち
    さち
    @chiisaxlog
    2026年1月23日
    若さゆえの自信、情熱、苦悩、不満など、まっすぐ過ぎる感情を目の当たりにし、戸惑いながらもきっと自分もそうだったんだろう、とふと考える。 共感はできずとも、書きとめておきたい文章が多くあり、ハッとすることも。 「思うに、幸せになれるかどうかは心がけ次第なんだ!」
  • りんご
    りんご
    @Ringo_no_umi35
    2026年1月20日
  • さち
    さち
    @chiisaxlog
    2026年1月20日
    第一部読了
  • さち
    さち
    @chiisaxlog
    2026年1月19日
  • ルカ
    ルカ
    @hnhtbr-315
    2026年1月12日
    今年の目標が「古典文学を読んでみる」なので、図書館の返却ワゴンで見つけて借りてきた。 「不機嫌は怠惰の一種」という一節と、「自分のものさしで他人を測ることほど馬鹿げたことはない」という一文がお気に入り。
  • chein
    chein
    @chein9
    2026年1月11日
  • ultraokura
    @ultraokurs
    2025年12月30日
  • 密
    @idtptq
    2025年12月15日
  • tony_musik
    tony_musik
    @tony_musik
    2025年11月29日
    初ゲーテ。美しい小説だった。書簡体形式で報われない恋の行方を描いた本作は啓蒙主義の時代にロマン主義の火を付ける役割を果たしたという。重要と思われる終盤のオシアンの詩の意味がよく分からなかったので調べ直して再読したい。
  • 茶菓
    @mikumar1sanabur1
    2025年11月1日
    シュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)文学の金字塔
  • tico
    tico
    @mi03
    2025年10月11日
  • ひな
    ひな
    @mikan117
    2025年9月15日
  • 想像以上によかった。 「ゲーテはすべてを言った」を読んだので、今年ぜひゲーテを読みたかったので満足。ゲーテらしい名言もあちこちにあった。今の年齢で読んだのも良かったのかもしれない。 とにかく独白の勢いがすごくて、これはなんなんだ?と酩酊感を感じながら読み終えて、解説までいったら、実は、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」には、翻訳する上で底本となる作品が二つあり、初版と改訂版で、この「勢い」がまったく違うらしい。初版のほうが、贅肉のつく前の粗削りな直情がよく表現されているとのこと。 この光文社古典新訳文庫の訳は、すごく自分に合ってたのかもと思った。この勢いに乗せられるかのように、最後まで一気読みであった。
  • ウェルテル、手紙でこの文体はテンションが異様な気がする。どんなこと言ってくるのか、楽しみである。
  • なゆた
    なゆた
    @nayuta
    2025年7月31日
    ウェルテルの勢いに気圧された 今で言うメンヘラだー めちゃくちゃ思い詰めちゃってた 色々な作品に影響を与えた名作をこんなに現代を生きる私にも伝わるように訳してくれて感謝しかない。 光文社古典新訳いつもありがとう。
  • monami
    monami
    @kiroku_library
    2025年7月23日
    大麦こあら先生のカバー! まだ手に入った 『能美先輩の弁明』が本当に素晴らしかったので、感謝を込めて購入
  • CandidE
    CandidE
    @candide_jp
    2025年7月19日
    情緒のインフレで世界を焼き尽くす、18世紀メンヘラ男子アイドルの爆誕。感情ダダ漏れ系文学の始祖。オールタイムベスト。訳が読みやすかった! 原文の版の選択に工夫があったとのこと。
  • tycho_123
    @tycho_123
    2025年5月7日
  • おいち
    おいち
    @01ch1
    2025年3月23日
  • いずみ
    いずみ
    @moritaizumi
    2025年3月16日
  • おいち
    おいち
    @01ch1
    2025年3月14日
  • 水
    @en_sui_
    2025年3月14日
    とにかくウェルテルがぐずぐずモヤモヤ思い悩んでいる。情緒の乱れた青春をたっぷり浴びることができます。
  • 八槙
    八槙
    @yamaki_rd
    2025年3月13日
  • 正直難しく感じる箇所も多くて、もっと文学や宗教が分かるようになってから再度読み返したいとも思うが、ともあれ結末に衝撃を受けた。 訳者解説によると、発表された当時、若い読者から自死する人が出るほどの反響だったとか。 想い人・ロッテや、まわりの人々、社会に対する、ウェルテルの苦悩、葛藤、絶望が、彼の書く手紙を通してじわじわと伝わってくる。 絶対に結ばれることがないと分かっている相手を、それでも「この人しかいない」と深く愛し、苦しみ続けるウェルテルの恋心を思うと、胸がじくじくと痛む。 特に、ロッテの婚約者・アルベルトと口論する場面のウェルテルの言葉がすごく印象に残っている。曰く、 病気に侵されて気力を失い、体が言うことを聞かず、自力でも立てず、一縷の望みにかけても元気になれないとき、それを死に至る病と呼ぶ。それと同じく人間の精神だって、いろいろな印象や観念に取り憑かれ、熱情が湧き上がると、冷静に考える力を奪い去り、自身を破滅に追い込むことがあると。 手紙を読み進めるにつれ、ウェルテルの直情的で激しすぎる恋心も、彼自身をじわじわと精神的に追い詰めていったことが分かる。 自死を選んでしまう人の心情が、皆こんな感じだとは言い切れないかもしれないが、不安定で危うく、繊細な人間であるがゆえの選択なのだろうか。
  • 愛のなんと苦しいことか! 自然を愛する青年ウェルテルが出会ってしまったのは、婚約者を有する美女シャルロッテ。恋してはならない、しかし恋せずにはいられない。 ゲーテが自分の経験を思い浮かべながら書いたであろう不朽の名作。2人の行く末は悲劇か、あるいは。
  • Q
    Q
    @q40176
    2024年4月11日
  • Honegger
    Honegger
    @Yiddish
    1900年1月1日
    「初版」からの翻訳で、帯には「身悶え不可避の読書体験。 恋心爆発!」と。 新宿の紀伊國屋でレクラム文庫で初版版のドイツ語原文が購入できたので、まあその勉強用も兼ねて購入。 「ロッテ」(企業名)がこの作品のヒロインの名前から来ていることは意外に知られていませんね。
  • うつけ
    うつけ
    @uttetsuke
    1900年1月1日
  • Spring
    Spring
    @mmz
    1900年1月1日
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