ブエノスアイレス食堂

6件の記録
ピエ@pie_2022026年2月5日読み始めた原作が良いのか翻訳が良いのか(おそらく両方だろう)、文章のテンポがよく、ぐいぐいと読んでしまう感覚がある。 言葉で描かれる料理があまりにも美味しそうなのは言わずもがな、人の外見や風景の描写に使われる独特な言葉に妙な説得力があり、本からイメージが押し出されてくるような気がする。例えばブエノスアイレス食堂の創設者である若きカリオストロ兄弟の描写に、「…、白い肌は海風に鍛えられていた。暗い色をした目がそんな肌の上で黒光りするさまは、あたかも海面にばらまかれた石油のようだった。…」(p14)というのがあり、印象に残った。 ※私の読んだ範囲ではまだ一般的な(異国風であってもヨーロッパ趣味的な)「料理」の描写しか出てこないが、本作はカニバリズムを主体として扱う文学であるため苦手な方は注意してほしい



gato@wonderword2026年1月7日読み終わったカニバリズムを扱った作品ってたびたび話題になるけど、この小説のことは聞いたことがなかったなぁ。最近図書館で南米棚をうろうろしているので、偶然見つけた一冊。 生後7ヶ月にして母の乳房に齧りつき、そのまま死んだ母の肉を喰らって生き延びた赤子のお話から始まるのだが、そこからすぐに時が約百年遡り、イタリア人の船乗り兄弟がアルゼンチンに移住する場面へ移る。この兄弟が開いた「ブエノスアイレス食堂」はやがて死骸と赤子の発見現場になるのだが、前半部ではそこに至るまでのレストランの百年史をユーモラスに描く。語り手は代々のシェフ一家に暖かい目線を向け、シンパシーを寄せているが、戦争と軍事独裁に翻弄されて人びとはあっけなく死んでいく。その落差がよかった。 冒頭の赤子が生まれると歴史は彼の物語に収斂していくのだが、ここで小説のジャンルが変わる。ノワールっていうわりにみんないい人だなぁと思っていたら、終盤だけいきなりサイコパス犯罪小説になる。この切り替え自体は斬新で面白かったけど、犯罪モノとしては杜撰なハンニバル・レクターでしかないので若干飽きてしまった。でも心理描写をしない作風なので、作中では愛に飢えて云々とかエディプス・コンプレックスが云々とかの分析を聞かされないのはよかった。





