課税と脱税の経済史

10件の記録
- 本屋lighthouse@books-lighthouse2025年2月23日だれか代わりに読んでください〈書かれるべくして書かれる極私的連載、更新のお知らせ〉 来週から本気出す、そのための更新。 だれか代わりに読んでください④マイケル・キーン&ジョエル・スレムロッド『課税と脱税の経済史』(中島由華 訳/みすず書房) https://sizu.me/b_lighthouse/posts/irz30rt0n93s
- たなぱんだ@tanapanda2025年2月14日読み終わった感想「税金の話ってこんなに面白かったっけ?」と思わされる一冊だった。 税制の専門家が、税の歴史を豊富な具体例とともに読み解いていく本。「為政者はどうやって効果的な課税を試みてきたのか?」「人々はどうやってその課税から逃れようとしてきたのか?」という問いを軸に、税金にまつわる奇想天外なエピソードが次々と登場する。 面白いエピソードはあげればキリがないけど、たとえば、こんな話が出てくる。 ・17世紀のイギリスで、窓の数に応じて税金を取る「窓税」が導入された。結果、節税のために人々は窓を埋めてしまい、換気が悪くなって伝染病が流行。おまけに日光不足で子どもの発育にも悪影響 ・ドイツのある男性は「犬税」を払いたくないため、飼い犬を「これは羊だ」と言い張って税金を払わずに済まそうとした ・オランダでは、モルモットの餌は21%の税率、うさぎの餌は9% ・19世紀のアメリカでは、関税法の文書に余分なカンマがたった1つが入ったせいで、果物すべてが免税になってしまった こういうエピソードが山盛りで、読んでて「いや、税金の話ってこんなにぶっ飛んでるんだ?」ってなること間違いなし。日本人に馴染み深いエピソードだと、酒税を安くするため「ビール → 発泡酒 → 第三のビール」のイタチごっこが起きた話も紹介されている。 この本がすごいのは、単に「税金のトンデモ話」だけじゃなくて、ちゃんと税制の理論や未来についても深掘りしているところ。ラッファーカーブとかラムゼールールとか経済学の教科書で頻出の概念もきちんと説明されているし、「どんな税制なら人々が納得するのか?」とか「未来の税制ってどうあるべき?」といった大きなテーマもしっかり議論されている。こうした「真面目な税の議論」と「珍妙な税の歴史」が絶妙なバランスで絡み合っていて、税制の本質を楽しみながら理解できる仕掛けになっている。 「税金って、こんなにカオスで、人間臭い話だったのか」と思えること間違いなし。600頁超の鈍器本(注釈と参考文献だけで100頁以上ある骨太本)だし翻訳も硬めなので、それなりに読書筋力は必要だと思うけど、税金やお金の話に興味がある人には刺さる一冊。