タコ目線の物語を予想していたが、ほとんど人間たちの人情譚。タコのマーセラスを人間にとって都合よく動かしすぎている。作中の家族観もいまいち合わない。

著者初読み。エログロ、特に女性が執拗に痛ぶられたり惨殺されたりするものはあまり食指が動かないだが、これは著作の中でも読みやすいとのことなので手に取ってみた。主人公が幼馴染の死を対する比較的あっさりと受け止めたあたりで作品内の世界観や倫理観を理解。謎解きはかなり力技を感じたもののなかなか面白く読めたし、「二者択一」の振りが効いてくる展開は唸らされた。

設定は良かったし「幽霊」に対する考え方も面白かったけど、主人公に対して「傲慢」という印象が最後まで拭えず。あと女性の描き方が好きじゃない。

どれも面白かったが「所有者直売物件」「穏やかな死者たち」「遅かれ早かれあなたの奥さんは……」「柵の出入り口」「抜き足差し足」あたりが特に好み。「遅かれ〜」の作者ジュヌヴィエーヴ・ヴァレンタインは同じ創元社から出ているパワードスーツSFアンソロ『この地獄の片隅に』でも一度読んでいて、こちらも面白かった記憶。 そもそもケリー・リンク目当てに借りたのだが、まさかの『白猫、黒犬』に収録されている「スキンダーのヴェール」だった（笑）でも金子ゆき子版とはまた味わいの違う中村融版翻訳で読めたのは贅沢な読書体験かもしれない。