村田エフェンディ滞土録

12件の記録
- 佐倉侑@skryuh_2025年4月5日お気に入り読んだ表紙の柔らかい雰囲気と掛け離れた本文の文体に、読み始めてから少し戸惑ってしまいました。 (あれ? 梨木香歩さんの御本じゃなかったっけ? 梨木さんって明治の方だっけ? あれ?) と困惑。現代を生きる作家さんが「明治や昭和初期頃の文豪のような文体」で書かれたものを初めて読みました。時代小説といわれる作品は江戸時代以前のものが多い印象ですが、確かに昔の言葉で書かれていますから、明治頃の文体を現代作家が書くのもありですよね。 文体は古風で戸惑いましたが、内容は梨木香歩さんの魅力が満載でした。 物語の始まりは "ムハンマドが通りで鸚鵡を拾った"。 そこから"村田"のトルコ留学記の様子が少しずつ見えてきます。 ラストにある "ああ、私はこういうことだけ延々と書いていたい。鸚鵡が何と言ったか、とか、オットーが何に笑ったか、ムハンマドがどうして腹を立てたか、そういう日常の、ごくごく些細なことだけを。" この文章のような異国での戸惑いながらも幸福な日々の話が続くのかと思っていたけれど、梨木さんらしい甘いだけではない、「生」についての話で、「友」についての話で、「国境」についての話で、「人権」についての話でした。 舞台は異国の地の話でしたけれど、これは現代の日本にも通ずるものだと思います。
- O@46_962025年1月11日読み終わった感想@ 図書館梨木香歩といえばの『西の魔女が死んだ』は積読中で、これと『家守奇譚』だけ読んだ形になる。そんな私の中でたった2作の梨木香歩が、終盤に不意に重なって驚いた。 19世紀も終わりのトルコに生きる、彼らの顔がよく見える。温かい日常。その表情までよく見えた分、襲いかかる世界大戦の影が暗く、恐ろしい。 すっかり彼らのことを好きになった後だったけれど、戦争というものはお構いなしだった。自分にとって名前のある人も、そうでない人も、簡単に奪われる。 鸚鵡の、なんて光であることよ。